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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
後日談

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210/245

210.鑑定士、魔族の残党も余裕で倒す



 辺境の街ミョーコゥで生活するようになってから、数日後。


 夜。

 俺は殺気を感じて、屋敷に外に出た。


 見事に手入れされた庭園。


 月光に照らされ、花々が美しく咲き乱れるなか……【そいつ】はいた。


「だれだ、おまえ?」


「ヌハハハッ! わしのこの威容を見てわからぬかっ! 小童が!」


「魔族なのはわかるな」


 体長は3メートルほど。

 筋骨隆々の、人間の肉体。

 しかし頭にはイノシシの頭部。


猪八戒ちょはっかいという魔神の類いじゃな』


 魔神。

 かつて特級魔族のキングがそうだった。


 つまり、こいつは特級魔族に匹敵する強さを持っている訳か。


「ほぉ! 魔族を見て逃げぬか。否! さてはわしに臆して逃げる機会を失ったか! かーっかっか!」


 どうやら猪八戒は、俺が【アイン・レーシック】であるとわからないらしい。


 それも当然。

 俺には、精霊ピナの強力な幻術がかかっており、アインとは別人に見えるからな。


「魔族が何でここにいる? コキュートスから人間界へ来るなって言われてないのか?」


 魔族と人間は、世界を完全に分け、お互い不干渉で行こうと条約を結んだはずだ。


 コキュートスの管理の下、魔族で人間界への進出者はいなくなったと聞いていたのだがな。


「ぬはは! あんな小娘の言うことなど聞くものか!」


「ああ、そう」


 この魔神、コキュートスを無視して人間界へ来たみたいだな。


「何しに来た?」


「知れたこと! この地に眠る【アレ】を手に入れにきたのだっ!」


「アレ? なんだよ、アレって」


「ぬはは! 貴様に教えるギリはぬわぁい!」


 猪八戒はフスー! と鼻息を荒くして言う。


 まあそりゃそうか。

 けど、いい。

 あとで【彼女】に聞こう。


「警告する。おとなしく帰るなら俺は手を出さない」


「ぷっ……! ぬぅはははははははは! ひぃー……ひぃー……たかがサルごときが、絶対的強者たるわしに、ずいぶんな口をきくではないか……!」


「どうする? 来るのか?」


 俺がビビらなかったからだろう。

 猪八戒は笑うのをやめて、殺意を俺に向けてくる。


「死ねぇい!」


『アインよ。やつは【猪突猛進】という能力アビリティを使う。凄まじい早さの突撃じゃ』


 グッ……! と猪八戒は身をかがめる。


「ぬはは! 我が必殺の突進をとくと受けて……」


「させねえよ」


 俺は闘気で体を強化。

 一瞬で猪八戒の目前までやってくる。


「なっ!? は、はや……いつの間に!?」


「おまえが遅いだけだ」


 俺は猪八戒の腕を掴む。

 そのまま、屋敷の外へと放り投げる。


「ぬわぁああああああああああ!」


 木の葉のごとく軽々と吹っ飛んでく。

 ヤツのあとを、俺はジャンプして追う。


 ミョーコゥの街の外までやってきた。


「ぷぎゃっ……!」


 敵は地面に顔面からツッコむ。

 俺は普通に着地した。


「な、なんだ今の膂力は……? たかが人間のそれではなかったぞ……?」


『アインは能力を制御されているとはいえ、基礎的な魔力・闘気操作は可能。こやつがいかに巨体であろうと、闘気オーラで強化したアインの前では紙も同然よ。さすがじゃアインよ』


 地面に突っ伏す猪八戒を、俺は見下ろす。

「帰るなら追わないぞ」


「ほざけ! そんな大口は、わしの【猪突猛進】を打ち破ってから言え!」


 ヤツはまた突撃の構えを取る。

 ぐぐっ……! と体が膨れ上がる。


 ドンッ……!


 強く地面を蹴ると、猪八戒は俺めがけてツッコんでくる。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオッ!


『地を削りながらの直線攻撃。さらに体の周りには鎌鼬が発生しておる。ぶつかった瞬間、相手を粉々にする算段じゃな』


「ぬはははは! どうだぁ! わしの攻撃の前に震えて動けもせぬだろぉ!」


「いや……問題ない」


 俺は腰を落とす。

 すっ……と片手を前に突き出す。


 ずどぉおおおおおおおおおん!


「ぬははは! 聞いたかこの雷鳴のごとき激突音! 死んだな!」


「生きてるよ」


「なぁっ!? ぬぁわにぃいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 片腕一本で、俺は猪八戒の突撃を受け止めていた。


「そ、そんな馬鹿なことがある者か!? わしの猪突猛進は魔神すら粉々にする威力を誇る! それを、ただの人間が受け止められるわけがない!」


「まあ、普通の状態だったら無理だろうけど。今は違うからな」


 俺の髪の毛は白く変わっている。


『あの一瞬で【鬼神化】しよったか。全力の魔力と闘気の合成を、たった一瞬でこなすとは。さすがじゃアインよ』


 身体強化術のひとつ、鬼神化。

 こうすることで闘気よりも体を強くすることができる。


「う、動かん! まるで、巨木を押してるようだっ!」


 ジタバタと猪八戒がもがく。

 だが俺の左手は、完全に敵の動きを止めていた。


「利き腕一本で、この威力とは!」


「いや、利き腕じゃない。俺は右利きだ」


「なっ!? なんだってぇええ!?」


 驚愕の表情を浮かべる猪八戒。

 そのがら空きの胴体めがけて、俺は蹴りを放つ。


 ボッ……!


 ズバンッ……!


 ただの回し蹴りだ。

 しかし鬼神となりて放つ高速の一撃は、敵の胴体を消し飛ばし、さらには真空の刃となって雲を引き裂いた。


「な、なんてことだ……人間の世界に、アイン・レーシックと同等の脅威がいるなんて、聞いてないぞ……」


 頭部だけになった猪八戒が、震える声で言う。


 魔神は生命力が強いので、首から下がなくなろうとある程度は生きてられる。


「同等もなにも、本人だよ」

「ほ………………?」


 猪八戒は目を点にする。

 俺は眼帯に触れると、力を込めて、少しだけそれを持ち上げる。


 眼帯に付与されていた封印術式が少しだけゆるむ。


 その瞬間、制御していた力の、ほんの一部が開放される。


「………………あ、アイン……れー……し……」


 がくんっ! と猪八戒は意識を失う。


『どうやらアインという最強無比の存在と敵対してしまったことで、ショックで死んでしまったようじゃな。うむ、さすがアインじゃ』


 猪八戒の頭部を【虚無】で消し飛ばす。


 鬼神化を解いて、眼帯を元に戻す。


「アリス、さっき聞いたこと教えてくれ」


 俺の隣に、精霊アリスが顕現する。


『なに? どういうことじゃ?』


「あいつに何しに来たって問いかけしたときに、アリスの【千里眼】で心を読むように頼んでおいたんだ」


 こくり、とアリスがうなずく。


「相手の狙いが不明瞭だった。それを聞き出したかったんだ。どんなアホでも、重要なことは口にはしない。けど心の中は違うだろ?」


『なんと、あの一瞬で判断したのか。すごいぞアイン』


 俺はアリスを見やる。


「あいつなんて言ってた?」


「……忘れ形見、って」


「忘れ形見?」


 こくり、とアリスがうなずく。


「……【勇者ミクトランの忘れ形見】を、奪いに来たって、そう言ってた」

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