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【WEB版】不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜【アニメ放送中!】  作者: 茨木野
後日談

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203/245

203.鑑定士、力を抑えても古竜を素手で倒す



 数週間後。

 俺たちは準備を整え、馬車に乗り、辺境へとむけ出発した。


 馬車の中にて。


「アインさんっ。良い天気、ですっ」


 ほろ付の馬車の窓から、金髪美少女ユーリが顔を出して言う。


「そうだな、いい陽気だ」


 季節は春を終え、新緑の季節になった。

 

 風が吹くと初夏の爽やかな風が入ってくる。


「アリスねえさまも、ほら、ご本じゃなくて、外見てっ」

「…………」


 俺の隣に座る、紫髪の美少女。

 名前をアリスという。


 世界樹の精霊ユーリの姉だ。


 彼女は俺の左隣に座っている。

 本を手に、ページに目を落としている。


「ユーリの言うとおりだぞ。せっかく良い景色なんだからさ、楽しんだ方がいいって」


「……お、お構いなく」


 アリスは身を縮めるようにして、消え入るような調子で言う。


「なあアリス」

「……な、なに?」


「本、逆さまだぞ?」


 アリスは耳の先まで真っ赤にすると、いそいそと本を正しい位置に戻す。


「なんか前もあったな、こんなこと」


 地下の禁書庫で、初めて彼女に会ったとき、こんなやりとりをした覚えがある。


「ねえさまっ。もうっ。だめですっ」


 ユーリがアリスを引っ張って、馬車の端っこへと移動する。


「……アインさん、なかよく、するのでしょうっ? がんがんっ、ぐいぐい、ごーごー、です!」


「……無理だわ。だって……はずかしいもの」


「……そんなちょーしじゃ、何億年たっても、アインさんとらぶらぶになれませんっ」


 姉妹が何事かを、ぼしょぼしょと話している。


「何やってるんだろうか……?」


【乙女の会話だ。盗み聞きするのは野暮というものだぞ、アインよ】


 賢者ウルスラの声が、脳内に響く。

 俺の右目は、【賢者の石】という特別な石でできている。


 これは各地にいる、世界樹の守り手である彼女たちとつながれる装置のようなものだ。


 俺の左目の【神眼】は、賢者の眼帯によって封印されている。

 しかし右目は、こうして以前と変わらない。


「ところでウルスラ、左目封印されてるのに、どうして精霊達が左目の中にいるんだ?」


 ユーリとアリス以外の姉妹は、現在、俺の左目のなかにいる。


【わしの作った眼帯は、あくまでも神眼が持つ能力を封じるだけのものじゃからな。完全に目そのものを封じてるわけではない】


「なるほど。目の出入り口を封じてるわけじゃないんだな」


【そういうことだ。まぁ、他の姉妹たちは、空気を読んでおとなしくしてるみたいだがの】


「空気って……どういうことだ?」


 はぁ……とウルスラが重くため息をつく。


【……自分の頭で考えろ。わしはしばし寝るぞ】


 それきり、ウルスラからの返答はなくなった。


「アインさんっ。アリスねえさまが、気分が悪いそうですっ」


「なに? どうした?」


 ユーリがアリスの背中を押しながら、俺の元へやってくる。


「治癒魔法でも使うか? あ、いやユーリ、世界樹の雫をすこしわけてくれないか?」


「そんなことよりもっ、おひざまくら!」


「はぁ?」


「おひざまくら、所望です! 横になれば、すぐよくなりますっ」


 どういう理屈かわからないが、どうやらアリスは横になりたいそうだ。


 そして枕にするから、膝を貸せってことか……?


「……ユーリ。や、やめて……いいから、そういうの……」


「たいへんだっ。ねえさまが馬車に酔っていますっ。これは膝枕……そーきゅーに、膝枕をっ」


 ユーリがぐいっ、とアリスの背中を押す。

 彼女はバランスを崩す。

 俺は彼女の腰に手を回し、膝の上にのせる。


「だいじょうぶか?」

「~~~~~~~っ」


 アリスは顔中真っ赤にそめて、ぱくぱく……と口を開いたり閉じたりする。


 そのままクラッ……とゆっくり倒れる。


 その体を、俺はしっかり受け止める。


「ユーリ、アリスはどうしちゃったんだ?」


「おとめの、秘密です!」


 どういうことなんだ……。


「ねえさま、酔ったようです。おひざまくらを、ささっと」


 ユーリがアリスの体を抱いて、俺の膝の上に頭をのせる。


 ふぅー……とやりきった顔をして、ユーリが額の汗を拭く。


「ねえさま、手が焼けます。これは……わたしが、しっかりサポートしないとっ」


 むんっ、とユーリが気合いを入れた表情で言う。


「サポートってなんの?」


「ねえさまの青春を……ですっ!」


 なるほど、わからん。

 まあ見たところ、アリスは病気でもなんでもないみたいだ。馬車に酔っただけみたいだし、このまま寝かしておくか。


「ところで、アインさん……【金髪】……おそろいですね!」


 ユーリが嬉しそうに、俺の髪の毛を指さしていう。


「ありがと。ピナに頼んで、ユーリと同じ色にしてもらったんだ」


 現在、俺は幻術を使って、外見を変えている。


「旅行先で、アイン・レーシックだってばれたら大騒ぎだからな」


「アインさん……世界救った、超ゆーめーじんですからねっ」


 そんなわけで、元は黒髪だったところを、金髪へ変更。


 後は顔の形やら身長やらを少しいじって、別人のように変えている。


「これなら絶対、ばれませんっ。100%、確実に……ですっ」


「ユーリはピナの力を、信頼してるんだな。まあ俺も同意見だよ」


【んふっふ~♪ んもぉー、はずかしーじゃん、やめてよぉお姉ちゃん~♪】


 ピナが左目の中で、嬉しそうに笑った……そのときだ。


「…………敵だ」


 俺はアリスを、慎重に座席にどける。

 そして立ち上がって言う。


「敵? ど、どこ?」


 俺は窓から体を乗り出す。

 目をこらすと、遠くの空に敵影があった。

【うっわ、ほんとだ! いるじゃん! お兄さん、鑑定スキル使えないのに、どうしてわかるの?】

 

「カン、だな」


 たくさんの敵と戦ってきたからだろう。


 敵の発する……なんというか、殺気を無意識に感じ取れるようになっているのだ。


【ほぇ~すごい! さっすがお兄さんっ! ……って、これウルスラちゃんのセリフだっけ?】


【……な、なんじゃわしのセリフって。ま、まあいい……うん、まあいい。アインよ、わしの助力は必要ないだろ?】


「ああ、そうだな」


 俺は闘気オーラを使って、身体能力を強化する。


「ユーリ、アリスを頼むな。俺はあの雑魚片付けてくる」


 ダンッ……! と俺は窓枠を蹴って跳ぶ。

 飛翔を含めたスキルや、魔法は使えない。


 だが闘気をはじめをした、基礎的な身体強化能力は使える。


 純粋な跳躍力で、空にいるそいつの、真下に到着した。


【この天空の王の影を踏むとは……良い度胸だな、小僧?】


 バサッ……! と俺の元に降りてきたのは、緑色の竜だ。


 見上げるほどの巨体。

 エメラルドの体を持つドラゴンである。


【脆弱なる人間よ、愚かにもこの翡翠竜エメラルド・ドラゴンの前に姿を現すとは。自殺願望か、あるいは自ら我の糧となりにきたものか?】


 どれくらいの強さだろうか。

 鑑定が使えないのでわからん。


 けれど……まあ恐れるほどじゃない。


「馬車がここを通る。おとなしく通してくれるなら俺も何もしない」


【ハッ! ハーハッハッハ! これは傑作だ! 貴様のような弱く、軽くひねっただけで死ぬような存在が! 空の王者たる竜に! 命令をするとはなぁ!】


 ゲラゲラと翡翠竜が笑う。

 ふぅ……と俺はため息をつく。

 こういうリアクションは、慣れっこだからな。


「で、返答は?」


【……つけあがるなよ人間むしけら。貴様なんぞ、我の爪でミンチにしてくれる!】


 ぐぉっ、と翡翠竜が、その巨大な爪で俺を攻撃してくる。


 パキィイイイイイイイイイイイン!


【なぁっ!? なにぃ!? お、折れただとぉ!】


 俺の体にぶつかった瞬間、翡翠竜の爪が全部折れたのだ。


【ばかなっ! 我の爪の硬度は、エメラルド級なのにっ!】


【愚かな竜じゃ。能力を封じられているとはいえ、アインの基礎能力はオリュンポスの神レベルじゃ。トカゲなんぞの爪で傷つけられると思うか。たわけめっ!】


 なんだかウルスラは、ノリノリで解説していた。


「どうする? まだやるか?」

【し、死ねぇえええええええ!】


 逆側の爪で、俺を攻撃しようとする翡翠竜。


 俺は容易くその攻撃を見切り、懐に潜り込む。


【はっ! バカめ! 我のこの翡翠の鱗には絶対防御という、ダメージをゼロにする能力アビリティを秘めているんだ!】


「そうかよ」


 俺は闘気オーラを集中させ、翡翠竜の腹めがけて、拳を振るった。


 ドガァアアアアアアアアアアン!


【ふげぇえええええええええええ!】


 俺の拳は、翡翠の鱗を容易く打ち砕いた。

 そしてヤツはそのまま超高速で吹っ飛んでいき、やがて星になった。


【数々の強敵を屠り続けてきたその拳は、相手の能力アビリティをも砕くか。ふふっ、さすがアインじゃっ】


【ウルスラママ、めっちゃたのしそ~。やっぱりそのセリフ、お気に入りなんじゃーん】


 ややあって、馬車が俺の元へとやってくる。


 運転席に座っていた御者が、恐る恐る、俺に尋ねてくる。


「お、お客さん……いま、ぶっ飛ばしたのって……もしかして翡翠竜では? 古竜種の」


「え、古竜だったのか、今の」


 どうにも鑑定能力が無いと、敵の情報がわからんな。


「古竜を素手で倒すなんて、す、すごいですね……! あなたはいったい何者……?」


「ただの、旅人だよ」


「いやただの旅人が、素手で古竜たおせるわけないですよぉおおおおおおお!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 連載再開か? [一言] 世界中のモンスターってアインを恐れて地上から姿を消したんじゃなかったっけ ラスボス倒してからまだそんなに日が経っていないはずだけれどもう地上に戻って来たのかな
[気になる点] 【はっ! バカめ! 我のこの翡翠の鱗には絶対防御という、絶対防御をゼロにする能力アビリティを秘めているんだ!】  絶対防御が、『0』だったら防御力が全くないのではないでしょうか?また…
[一言] この恥ずかしい黒歴史ノート、まだ更新してたのか
2020/05/05 04:58 退会済み
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