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159/244

159.鑑定士、キングを倒し世界を救う



 俺が特級魔族クィーンを討伐してから、数日後。


 ドワーフ国内に、異変が起きた。


 住民たちがいっせいに、崩れ落ちたのだ。


「全員、死んでいる……?」


 よく見ると、ドワーフたちの体からは、湯気のようなものが立ち上っている。

 

 それは町中……いや、国中から立ち上り、やがて1つの場所へと集束していた。


 俺は現場へ急行し、何が起きているのかを理解する。


【会いたかったぜぇ、アイン!】


 特級魔族キングが、ドワーフ国郊外の雪原に立っている。


 彼の体へと、ドワーフたちから抜け出た湯気が、吸い込まれていく。


『どうやらキングは、【生命力吸収エナジー・ドレイン】という能力を習得したそうだ。周囲の生き物から生命力を奪い、力へと変換する能力じゃ』


「ドワーフたちを殺したのは、おまえか」


【そのとおりだぁ! だが勘違いするな、奪ったのはドワーフ国の連中だけじゃない、この世界に存在する命すべてだぁ!】


 キングは数日前とは、全く異なる容姿をしていた。


 浅黒い肌。真っ白な髪。


 そして最大の特徴は、キングの四肢、および額に埋め込まれた【宝玉】だ。


 それも5つも、その身に宿している。


【この世界の人間たちの命すべてを手に入れた! 今の俺様は無敵だぁ!】


 キングは拳を、地面にたたきつける。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 その衝撃波でニサラキの街が、ドワーフ国を囲む山々が、吹き飛んで消滅する。


 俺は禁術オーラの鎧を纏っていたので傷を負うことはなかった。


【見たかこの強さ! 魔王に匹敵すると言っても良いだろう!】


 俺は鬼神化し、聖剣をキングに向ける。


「この程度の力しか無いんだったら、魔王も大したことないんだな」


 俺には一切の恐れはなかった。


 なぜなら、俺は1人で戦っているわけではないからだ。


【どこまでも……人をコケにしやがって! 殺す! てめえは絶対に殺してやる!】


『キングの【生命力吸収】は、近づくほど強くなる。かすり傷だけでも即死するほどじゃ。気をつけよ』


 ダッ……! とキングが俺めがけて、光の速さで突っ込んでくる。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 走るだけで地面がえぐれる。大気が震える。


 キングの拳は黒い炎で燃えていた。


 常人なら目で追うことも不可能なほどの速さの拳。


 しかし俺の……いや、俺たちの神眼は、攻撃の機動をハッキリ目で捕らえていた。


 禁術オーラの鎧を突き破り、キングが俺に肉薄する。


 俺は鬼神化となりて、己の持つ聖剣で、キングの拳を払いのけた。


 パリィイイイイイイイイイイイイイン!


【ぐぉおおおおおおおおおお!】


 特攻してきたキングの体は、背後へと凄まじい勢いで弾き飛ぶ。


「クルシュ。やるぞ」

『あいよ~。全力の、【虚無】ね~』


 体全身のあざ、そして俺の両目が、鮮やかな血の色へと変わる。


 ボシュゥウウッ……!


 キングを中心として、半径数キロ以内にあったものすべてが、消滅する。


 地面も、森も、山も、えぐり取られたようになる。


【ガハッ……!】


『どうやらキングは、虚無が当たる瞬間、己の首を斬って遠くに放り投げることで、攻撃を回避したみたいじゃ』


【く、くそがぁ!】


 キングの体が再生する。


 体をのけぞると、俺めがけて、拳を振る。

 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 禁術オーラをエネルギー弾にして、俺めがけて打ち出したようだ。


 俺は冷静に、手に持った聖剣を前に突き出す。


 シュォオッ…………!


 凄まじい量のエネルギー弾は、しかし俺の持つ聖剣に、すべて吸い込まれた。


【う、嘘だろ!? なんで今ので傷ついてねえんだよ!?】


「これが全力か?」


【く、そ、がぁあああああああ!】


 キングは天を仰ぎ見て、野獣のように吠える。


 この世界の住民たちから吸収した生命力を、自分自身の身体強化に使う。


【死ね! アイン! てめえは生きててはいけない存在なんだ!】


 ダッ……! とキングが俺めがけて、光速で突撃してくる。


弱者にんげん魔族きょうしゃの食い物なんだ! けどてめえがいるとこの世のことわりが狂うんだよ! だから死ね! 死ね死ね死ねぇ!】


 キングが恐るべき威力の一撃を、光の速さで連続して俺に打ち込んでくる。


 だが俺の目には、キングの攻撃がスローモーションで見える。


 なおかつ、千里眼で攻撃が来る場所、タイミング全て把握している。


 それを避ける

 ただひたすらに避ける。


 体を前後左右にそらすことで、紙一重で回避する。


 ……結果、俺はその場から一歩も動かず、キングの攻撃を全て回避した。


「ふざけたことを抜かすな。人間はおまえらの食いものじゃない」


 俺は聖剣を構えて、禁術オーラを剣に流し込む。


 キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン…………!


 聖剣が極光オーロラの輝きを放つ。


 地面が、空が、……そして、この星全体が、震える。


【なんだよおまえは! 強化された魔神を凌駕し、圧倒する……おまえはいったい、なんなんだよ!?】


「ただの、人間だ」


 俺は全力を込めた一撃を、キングめがけて振るった。


 ズッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


 極光の輝きは、破壊の光となって、キングを包み込んだ。


 やつの体は攻撃をもろに受けて、ボロボロ……と塵になる。


【貴様みたいな人間……いてたまるか……この、バケモノ、め……】


 光に包まれ、キングは完璧に消滅。


 強烈な一撃は地面を、空を、そして遙か彼方の星々をも、切り裂いた。


『さすがじゃ、アインよ。魔神を超越した魔神すら、容易く倒すとはな。見事じゃ』


「ありがとう。……さて、じゃあもう一仕事だ」


 俺はウーノからコピーした転移で、遥か上空へとテレポートする。


「ユーリ。力貸してくれ」

『はいっ! もちろん、です……!』


 俺は禁術オーラで強化した【完全再生】能力を、発動させる。


 聖剣が、美しい翡翠の輝きを放つ。


 光る剣を、俺はかるく横に振る。


 パァアアアアアアアアアアアア……!


 それは輝くエメラルドの粒子となりて、地上にいるすべての生命たちに降り注いだ。

『……アイン君。無事、地上の生き物たちは、今ので生き返ったわ。さすがね』


 アリスが千里眼を使って、地上の様子を伝えてくれる。


 後は白猫の【復元】を使って、キングとの戦闘跡地を整えた。


 俺は地上へと転移する。


「アイン様ぁあああああああ!」


 ドワーフたちが、笑顔で俺を見上げている。


「ありがとー!」「やはりあなたは救世主じゃー!」


 ワァアアアアアアアアアアアアア!


 彼らの歓声に包まれながら、俺は帰還したのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 特に無し [気になる点] 毎話感想欄に現れる「飽きる」って感想にはちと疑問。何で飽きてんのに最新話までしっかり読んでんの?っていう。「飽きる」ってのは、批判のつもりでも最新話の感想欄でする…
[気になる点] 弱者(にんげん)は魔族 (きょうしゃ)の食い物なんだ!  ん? 普通は弱者(にんげん)は強者(まぞく)の食い物なんだ!じゃね?
2020/02/16 22:44 退会済み
管理
[気になる点] 人間、亜人絶滅させて生き返らせて、最終話どうまとめるんだろ、、、
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