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153.鑑定士、精霊たちと温泉に入る



 俺が特級魔族キングを討伐してから、数日後。


 ドワーフ国の郊外にて。

 俺は露天風呂に浸かっていた。


 もともとこの国は活火山が多く、各地で温泉が湧いていた。


 温泉宿も各地で見られたのだが、冷害とトロールたちの影響もあって、温泉は放置されていたらしい。


 しかし俺が巨神を討伐して天候が戻り、そしてトロールがいなくなったことで、温泉宿が各地で営業を再開したそうだ。


 ドワーフのトトから温泉の件を聞いた俺は、ちらっと入りたいなとぼやいた。

 

 するとトトたちは温泉宿に招待してくれた。


 無料で、しかもめちゃくちゃ豪華だった。


「ふぅ……気持ちいいな……」


 宿の露天風呂はかなり広かった。

 岩で囲まれた湯舟、白濁としたお湯は珍しかった。


「ユーリたちは女湯だし、静かに風呂に入れそうだ……」


 と、そのときだった。


「アイン、さん。湯加減、どう、ですか?」


 まさかと思って振り返ると、そこには素晴らしいプロポーションの、金髪美少女がいた。


「ゆ、ユーリお前! ここで何してるんだよ!」


「お風呂、ですが?」


「ここ男湯だぞ!」


「え、え~? ここ、女湯、ですよ」


「お姉ちゃんの言う通りだよ、お兄さん☆」


 ぞろぞろと、残りの姉妹たちも、俺の元へとやってきた。


 ロリ巨乳のピナが、俺の前で前かがみになり、谷間を強調するポーズを取る。


「残念なことに、お兄さんが女湯に来ちゃったんだなぁこれが」


「いや、ありえないだろ。入るとき、ちゃんと男湯だと確認した」


 俺は精霊たちを見ないようしながらいう。


「ふっふっふ、アイちゃんは甘いね~。うちのピナピナの幻術に、はまっていたのさ~」


 仮面の美女クルシュが、ピナ同様しなを作ったポーズで言う。


 驚くほど大きく白い乳房が、タオルにまかれてぐにゃっとひしゃげていた。


「幻術……そうかおまえ入口を幻術で偽装しやがったな!」


 男湯だと見せていたわけだ。


「俺は出るぞ!」

「「まあまあまあ」」


 クルシュとピナが、すさまじく速い動きで湯船に入って来ると、俺の腕をつかんで、無理やり湯船に沈める。


「いいじゃん☆ どうせ貸し切りなんだし」

「しっぽり美少女たちと温泉に入ろうよ~」


 ふたりが俺の腕をつかんで、自分の胸に押し当てる。

 ピナは張りがあり、クルシュは大きさの割に柔らかかった。


「いくら貸し切りでもダメなものはダメだ! 俺は上がるぞ」


 不満そうなふたりを振り切り、俺は湯船から出ようとする。


「アイン、さん……わたしたちと一緒じゃ、いや、ですか?」


 ユーリがうるんだ目で、見上げるようにして、俺に言う。


 そんな悲しそうな目をされたら、断れないじゃないか。


「……嫌じゃないぞ」

「わぁい♡」


 ユーリが太陽のようなまぶしい笑みを浮かべる。


「お姉ちゃんナイス! あたしの演技指導のたまものだね☆」


「ゆりゆり名演技だったよ~。アイちゃんメロメロだったね」


 よしよし、と姉妹がユーリの頭をなでる。


「おまえワザとだったのか、ユーリ……」


 ユーリは明後日の方向を向いて、吹けやしないのにひゅーひゅーと口笛を吹いていた。


「ささっ。お風呂と言えばお背中流し☆ とゆーことでお兄さん、こちらへどうぞ!」


 木の椅子をピナが持ち出して、俺を手招きする。


「あたしがお兄さんの体をまんべんなくごしごししてあげる☆」


「異議あり、です、ピナちゃん!」


 ビシッとユーリが妹に指さす。


「わたし、やりたい!」


 ふんす、とユーリが鼻息荒く言う。


「めーもやりたいもん! おにーちゃんせなかながいしたいもん!」


「アイン様は……わたくしのものですわ」


「わ、わが眷属がど、どうしてもというのなら、背中を流してやるのもやぶさかではもにょもにょ」


 精霊たちが自分も自分も、と俺の周りに集まって来る。


「い、いいよ。体くらい自分で洗うし」

「……アインくん」


 アリスが顔を真っ赤にして、俺に近づいていう。


「……普段、お世話になっているから。これくらい、させてほしいの。……駄目?」


 ユーリ同様、アリスもうるんだ目で俺を見上げてくる。


「……わかったよ、わかった。お願いしますよ」


 俺は風呂からあがって、椅子に座る。


「それじゃみんな、お兄さんの背中をながしたいかー!」


「「「おー!」」」


 ピナの呼びかけに、精霊たち全員が、手を挙げて応じる。


「なんでそんな流したいんだ? ふつう、異性と風呂入るのだって嫌じゃないの?」


「ほかの男の人、怖い、です。けど、アインさんは、特別、です」


「そそ。お兄ちゃんだけだよ、あたしたちが肌を見せるのは~」


「全人類のなかで……アイン様は最高の男性ですので」


「ふ、ふん。われがこんなあられもない姿をお主以外に見せられるわけないわ」


「みんなアイちゃん大好きだからね~」


 気恥ずかしくて、俺はポリポリと頭をかく。


「それじゃあお兄さんのお背中流す権利をかけて大じゃんけん大会だ!」


「「「おー!」」」


 精霊たちが頭を突き合わせ、真剣な表情で何を出そうか悩んでいる。


「ふふ……わたくしの圧勝ですわ」


「ちなみにテレジアお姉ちゃんは能力使った瞬間に失格だから悪しからず☆」


「なん……ですと」


 しばしのじゃんけんタイム。

 ややあって。


「わたしの、しょーり、です!」


「いいなぁ、めーがおにーちゃん背中ごしごししたかったのに~」


「次こそは……アイン様をわたくしのものに……」


「…………」


「アリスおねえちゃん気を落とさないで。次があるってば」


 ユーリはにこにこしながら、俺の後ろに座る。


 石鹸を手に取ると、泡立てて、体にこすり付け始めた。


 ……なぜか、自分の体にである。


「な、なにしてるんだ?」

「準備、です。しばし、お待ちを!」


 全身泡だらけになったユーリが、俺の背中にぴったりとくっつく。


 そして、上下に体を動かしだす。


「お、おまえ何してるんだよ!」


 バッ、と俺が飛びのく。

 泡だけが、ユーリの局部を隠していた。


「どう、しました?」


 ユーリがきょとん、と首をかしげる。

 

 幼子のような表情と、成熟しきった大人の体つき。


 しかも煽情的なかっこうに、ギャップがあって、俺の頬はかぁっと熱くなった。


「おっとー! お兄さんが洗体プレイに顔を真っ赤にしたー!」


「ピナてめえ! ユーリに変なことを吹き込むんじゃねえ!」


「ご、めんなさい。こうすれば、アインさん、元気になるって聞いたから」


「いや、謝らなくていいぞ。怒ってないし……」


「それにあっちもとっても元気になったしね☆」


「おまえは後で殴るからな」


 その後体を洗った俺たちは、一緒に湯船に入る。


「……なんでみんなタオル取り払ってるんだよ」


「「「お風呂なので!」」」


「俺に裸見られて嫌じゃないのか?」


「「「アインさんは特別なので、全然オッケー!」」」


 そんなふうに、精霊たちとまったりと温泉に浸かった。


 美少女たちの裸にドキドキしてしまい、あまり休めなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
「ふ、ふん。われがこんなあられもない姿をお主以外に見せられるわけないわ」 女性にここまで言われたら流石にとぼけるのには無理がある。 経験上、普通はここまで女性は言わないけど稀に言われることがある。 も…
アインも同じ手に引っ掛かり学習しないw 「ふ、ふん。われがこんなあられもない姿をお主以外に見せられるわけないわ」 しかもユーリの守り手が前回と言ってる事が180℃違いデレデレモードに入って来てるのに…
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