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152/244

152.キング、家族から失望され家庭が崩壊する



 鑑定士アインが、特級魔族キングを撃破した、数日後。


 ふと、キングは目を覚ました。


「俺様は……生きてる……のか……?」


 ここは魔王城にある、自室だった。

 どうやら自分は、ベッドに寝かされているようだ。


「あなたっ!」


「【エリザベス】……? どうして、てめえがここに?」


 黒髪の美女が、キングにしなだれかかってくる。

 

 彼女はキングの妻。

 そして、懲罰部隊における【クィーン】だ。


「あなたがアインに負ける寸前、ウーノに頼んでゲートを開いてもらったのです。良かった……ほんとうに……生きてて良かった……」


 心からの安堵の表情を、エリザベスが浮かべる。


 キングは彼女の頬に……思い切り、拳をたたきつけた。


 バキィッ……!


「きゃあッ……!」

 

 エリザベスは部屋の端まで吹き飛ぶ。


 キングは立ち上がると、ふらつきながら、妻の元へ行く。


「エリザベス……てめえ……今、なんつったよ? あぁ!?」


 怒りの表情を浮かべながら、キングは妻である彼女を見下ろす。


「誰が、負けたって!? あぁ!?」


 禁術で強化した脚力で、エリザベスの腹部を勢い良く蹴り上げる。


 ドゴッ! ドスッ! ボゴッ!


「俺様はあの後勝っていたんだ! それを余計な邪魔しやがって!」


「ご、ごめんなさい……でもわたし……あなたを失いたくなくて……だから……」


「うるせえ! しゃべるな! 死ねやぁ!」


 キングがエリザベスの顔面に、強烈な拳による一撃を喰らせようとした……そのときだ。


「パパ! もうやめて!」


 ガシッ! と背後から、キングの腕にしがみつくものがいた。


 キングの娘。

 長女の【クワトロ】だった。


「ママを殴らないで!」

「離せクワトロ! 離しやがれぇ!」


 キングがその腕を無理やり振り払おうとする。


「やだ! 離さない!」


「なっ!? ど、どうなってやがる! 微動だにしないだと!?」


 クワトロの制止を、キングは振り払えなかったのだ。


「やめてぇえええええええ!」


 クワトロはキングの腕をひねると、そのまま、一本背負い。


 ドゴォオオオオオオオオオオオオン!


「ガハッ……!」


 キングは寝室の壁に、たたきつけられる。

「ママッ! だいじょうぶ!?」


 娘が母親エリザベスのもとへ詰め寄る。


「だい、じょうぶよ……クワトロ。わたしは平気だから……」


 エリザベスは立ち上がると、真っ青な顔でキングを見やる。


「あなたっ!」


 壁に激突し、頭から血を流すキング。

 それを見たエリザベスは、クワトロを見下ろす。


 バシッ……!


「え……?」


 ぽかん、とした表情をクワトロが浮かべる。


「クワトロ! あなた、なんてことを!」 


 エリザベスは、娘の頬をビンタしたのだ。


「で、でもパパは……ママのこといじめたから、だから……」


「父親に手をあげるなんて最低な行為ですよ! あなたは最低の娘です!」


 ダッ……! と娘を残し、エリザベスは夫の元へ駆け寄る。


「あなた! だいじょうぶ!? ケガは!? すぐに治癒を……」


「うるせえ! 引っ込んでろ!」


 キングがエリザベスに殴りかかろうとした……そのときだ。


「おいおいやめなよ、父様~」


 ブンッ……! と拳がカラぶる。


 いつの間にか、キングの右腕が切断されていたのだ。


「ウーノ!? てめえ何しやがる!」


 キングの息子、【ウーノ】が、いつの間にかエリザベスの目の前に立っていた。


「負けた腹いせに母様をいじめるとかさ、恥ずかしくないわけ~?」


「だ、黙れぇ! 父親にそんな態度とるんじゃあねえぇえええええ!」


 再生した拳で、ウーノに連打をたたき込もうとする。


 だがウーノのワープ能力により、キングの攻撃を容易く避ける。


「父親? ぼく、あんたのこと、もう父親って思ってないけど~?」


 ウーノは高い位置に出現し、キングを見下ろす。


「今まで父様……いや、キング。あんたは、ぼくの尊敬する父親だった。けどさ……サルに負けるなんてさ。だいぶ、がっかりしたよ」


 はぁ……とウーノが深くため息をつく。


「魔神とか最強とかのたまっていても、結局下等なサルに負けるとか、あり得ないよね」


「黙りやがれぇええええ!」


 キングは禁術で強化した拳で、ウーノめがけて拳を繰り出しまくる。


 だがウーノは、キングを上回る速度でそれを回避し続ける。


「なんだ!? どうなってやがる!?」


「鑑定士の剣には闘気を吸収するチカラがあるんだって。あいつに負けて、魔神の持つ莫大な闘気を吸い取られた。あんたは今や、ぼくらに劣るザコに成り下がったんだよ」


 だから、娘にも、息子にも翻弄されているというのか。


「……おとーさん」


「トレス……それに、【ドース】」


 いつの間にか、キングの隣に、娘と息子が出現していた。


 トレスはキングの体に触れる。


 ズォオオオオオオオオオオオ!


「うぎゃあああ! 吸われる! 生命力がぁあああ!」


 トレスの触れた部分から、植物が生える。

 それはキングの闘気を凄まじい速度で吸っていた。


「おかーさん。いじめる。おまえ……ゆるさない」


「トレス! あなたなんてことを! やめなさい!」


 エリザベスは金切り声をあげて、トレスの頬を張り倒す。


「おかーさん……うえぇえええええん!」


 トレスが泣き叫ぶ傍らで、ウーノは心底嫌そうな顔をしていう。


「ぼくは家を出るよ。こんなサルに負けた弱者と家族なんて思われたくないからね」


 ウーノはワープを使って消える。


「あたしも家でる。ママを虐めるパパも……家族を殴るママも……大嫌い……!」


 クワトロは吐き捨てるように言って、部屋の壁をぶち破って消える。


 泣き叫ぶトレスの手を、弟である【ドース】はにぎり、キングの前から立ち去ろうとする。


「お、おい待て! 能力を解け!」


 キングがトレスに触れようとする。


 バシッ……!


 その手を払ったのは、息子ドースだ。


「……姉さんに、汚い手で触れるな。クソ親父」


 パキ……パキパキ……!


 キングの手が、徐々に凍り付いていく。


 ガキィンッ……!


 突如として、キングの体が、氷付けになった。


「ドース! おやめなさい! なんて酷いことをするのぉ!」


「……おれは姉さんと家を出る。大切な姉さんを泣かせるこんな最低な家になんて、もういたくない」


 ドースは姉であるトレスを連れ、その場から煙のように消えた。


「どうして……どうしてこんなことになるの……! たかが1度の敗北で、家庭が崩壊するなんて……!」


 エリザベスは氷付けになった夫に抱きついて、半狂乱になって泣き叫ぶ。


「くそ……が……。アイン……め。次こそ、殺す……覚えて……やがれ……」


 薄れ行く意識のなか、キングは憎しみを込めて、そうつぶやくのだった。

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― 新着の感想 ―
この家族今まだどうやって共生してきたんや?と思うぐらい無茶苦茶W 田舎の頭悪いヤンキー家族よりもヒドイ まぁでも確かになんでも人のせいにする頭おかしいクレーマーとかおるからな。 確実に近づいたらあかん…
[気になる点] 殺すつもりで挑んだ相手に敗北した腹いせにDV →家庭崩壊→全部俺を負かせた奴が悪い おいおいすげーな つまりこいつらが誰かを殺そうと思ったら、 対象者は強くても防衛の手段を持っていて…
[気になる点] キングはアインに闘気を吸われて弱くなっているだけで本来の力は息子たちより強いんでしょ? 本来のキングがアインに翻弄される訳だし、息子はもっと遊ばれるんじゃ… そんでもって娘は仲良くハー…
2020/02/09 23:49 退会済み
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