表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/244

150.イオアナ、キングの一族にバカにされる




 鑑定士アインとの勝負に負けた数日後。


 肉片となったイオアナは、ゲートを通して、魔界へと帰還した。


 魔界の森にて。


「くそ……チクショウ……アインめ……覚えてろよ……」


 イオアナの肉体は再生していた。

 だが神闘気に触れた左腕は、元に戻らなかった。


 隻腕となったイオアナが、ふらふらと歩いていた……そのときだ。


 しゅおんっ……!


 突如として、目の前の光景が切り替わった。


 さっきまでいた森のなかではなく、魔王城の会議室へとやってきていた。


「今のは……ワープか……?」


「見てたよ、イオアナ。きみ、ぜーんぜんダメダメだったねぇ~」


 ニヤニヤと笑いながら、ひとりの小さな子供がやってくる。


 メガネと蝶ネクタイをつけた、小さな男の子だ。


 ネクタイには【ビショップ】の駒が描かれている。


「あんだけ息巻いてたのに負けるとかさ~恥ずかしくないの~?」


「う、うるさいっ!」


 イオアナが禁術で強化した拳で、ビショップに殴りかかろうとする。


 だが突如として、ビショップの眼前に【ゲート】が開いた。


 イオアナは勢い余って、ゲートのなかへと入る。


 ゲートを抜けると、ビショップの背後にいた。


「くそっ! くそっ!」


 繰り出す拳は、しかしすべて、ビショップの眼前に出現するゲートによって阻まれる。


「どんなに強い攻撃も、当たらなくちゃあ意味が無いよね~」


 と、そのときだ。


「おい【ウーノ】。その辺にしておけ」


「父様!」


 ビショップの少年【ウーノ】は、晴れやかな表情で【父】のもとへ行く。


「父様って……き、キング。あんたがこのガキの父親なの……?」


 キングの周りには、

【クィーン】が1人。

【ルーク】が2人。

【ビショップ】が2人。


 エキドナがイオアナに微笑んで言う。


「イオアナ。残る懲罰部隊は、すべてキングのご家族なのよ。クィーンは妻、ルークとビショップはそのご子息とご令嬢なの」


 確かに、残る5人は、全員からとてつもないプレッシャーを感じた。


「とうさま。このざこ。ウーノ。ばかにした。ころしていい?」


 胸に【ルーク】の駒のぬいぐるみを抱いた少女が、イオアナの肩に触れた……そのときだ。


 メキ……メキメキメキ……!


 突如、イオアナの肩から、植物が生えてきたのだ。


「うぎゃぁあ! 吸われる! 生命力が……!」


「【トレス】。そのくらいにしてけ。ゴミに触ったらきたねえぞ」


「わかった。トレス。おとーさんのゆーこときく」


 パッ、と少女が手を離す。

 樹木化が解かれた。


「ボクが……ボクがゴミだっていうのかよ!?」


「ごみ。だって。あんなざこにまけた」


「く、くそぉおおおおおお!」


 イオアナは立ち上がり、トレスに殴りかかろうとする。


 その瞬間、イオアナの目の前にゲートが開く。


「ダメだよザコアナ~。トレスねえさんをいじめんなよ」


 拳がゲートをくぐった瞬間、門が閉じたのだ。


「うぎゃっ!」


 イオアナは右腕すらも失う。

 ゲートが足、腰、肩など、局所的にいくつも開いて、そして閉じた。


「ぎゃぁああああああ!」


 四肢をバラバラにされ、イオアナはその場に崩れ落ちる。


「ねえねえパパ! 今度はアタシに行かせてよっ!」


 褐色に金髪の少女が、キングの腰にしがみついて言う。


「【クアトロ】。おめーはすっこんでろ」


 クアトロと呼ばれた少女の耳には、【ルーク】のピアスがつけてあった。


「あの鑑定士のガキは、キングである俺様がぶっ殺してやる」


 ニヤリ……と好戦的な笑みを、キングが浮かべる。


「あら、いいの? キング。あなた、アイン討伐には関わらないと言ってなかったかしら?」


 エキドナがキングに近づいて言う。


「気が変わった。久しぶりに、骨のありそうなサルが現れたみたいだからなぁ」


 獰猛な笑みを、キングが浮かべる。


「あーあ。アイン、終わったな~。父様が本気出したら、1秒で消し炭だよ~」


 ウーノが両手を頭の後で組んで言う。


「さすがおとーさん。アイン、かわいそう」


 トレスがキングに、尊敬のまなざしを向ける。


「しょうがないよ! パパはこの世界最強だもん! 誰にも負けない、アタシたちの自慢のパパだもん!」


 クアトロが妹と同じく、キラキラした目をキングに向ける。


「エキドナ。てめえお気に入りのあのサル、殺しちまうが構わねーな?」


 キングがエキドナを真正面から見やる。


「ええ、構わないわよ」


 目をギラギラ輝かせながら、金髪の大男キングは歩く。


「おい、待てよキング!」


 体が再生したイオアナが、キングに詰め寄る。


「アインを倒すのは、このボクだ! 君は下がってなよ!」


「あー……?」


 キングは不愉快そうに顔をしかめる。


「このキングに……命令してんじゃねえぞごらぁ!」


 その瞬間。


 ドガガガガガガガガガッ!


 まるで速射砲のごとく、キングが拳を繰り出した。


 あまりに早すぎて、その腕の数が千にも万にも分裂して見えた。


「ぐぇえええええええええええ!」


 キングからの連撃を受け、イオアナは体を粉々にされた。


 魔核だけになったイオアナを、ガンッ! とキングが踏みつける。


「ひ、ひぃい! やめて! やめてくれよぉ!」


「何度言ったらわかるてめぇ? キングに逆らうんじゃねえぞ殺すぞ?」


「わかった! ごめんなさい! もう逆らいません! 2度と口答えしません!」


「俺様がしゃべって良いっていってねえのに……しゃべるんじゃあねえ!」


 キングがイオアナの魔核を、踏み潰そうとしたそのときだ。


「まあまあキング。落ち着いて」


 エキドナが、いつの間にか、イオアナの魔核を回収していた。


「いいじゃんほっとこうよ父様~。禁術が使える程度で舞い上がってるバカなんて」


「禁術程度……だと?」


 そこでイオアナは、驚愕する。


 キングの一家は、全員、禁術の【痣】を持っていたのだ。


「しかも常時【痣】を出してる……だって……?」


「この程度できないとかやっぱり、ザコだね~。ザコアナちゃん? あれ、イグアナだっけ? ま、ザコの名前なんて、どーでもいいや。覚える価値のないザコだもんね、きみ」


 イオアナは、なにも言い返せなかった。


 キング一家と比べたら、確かに自分は、弱者なのだから。


「んじゃ、俺様はアインと戦ってくるぜ。久々の戦いだ。血がたぎるぜ……!」


 出陣する一家の大黒柱を、家族たちが見送る。


「がんばって父様! まっ、勝つのは絶対に父様だけどね!」


「あたりまえ。おとーさんがまけるわけない」


「当然じゃん! パパは世界最強だもん! パパッ! 圧勝してきてね!」


 キングはニヤリと笑って、ウーノの出したゲートをくぐる。


「多少やるようだが所詮はこのキングの敵ではない。せいぜい、少しは楽しませてくれよ、なぁ、鑑定士アイン?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
イオアナだけはなぜに誰もとどめを刺さないんだ? 主人公も魔族も明らかに見逃してる。 イオアナがうまく逃げてるではなく、明らかに見逃してる。 両者ともほかの敵には追いかけてトドメを刺すほどなのに、明らか…
[気になる点] 主人公もエキドナも、ザコアナに甘すぎる なんで助けたり、 余裕で完全に消せるのに手抜きして見逃したりするんだよ 2人とも、実は惚れちゃってるの? なんだよザコアナをめぐって、 主人公…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ