146.鑑定士、第7精霊を仲間にする
巨神トールを討伐した後。
俺は隠しダンジョンに潜っていた。
『トールを倒したことで、やつのもっていた莫大な量の闘気を吸収したぞ。それと、おぬしの闘気が、トールのそれと混じり合って、変質したようじゃ』
「前とどう違うんだ?」
俺は隠しダンジョン内部の敵に襲われている。
しかしそのすべてが、禁術オーラの鎧にはじかれていた。
『神聖な気を感じる。魔族にとても効果的のようじゃ。さらに神族の攻撃に対する耐性もついたようじゃな』
『すごい、です! アイン、さん! さらにつよくなりました!』
『くくく、我が眷属よ。ならば新しい名前をつけねばならぬな』
マオが楽しそうにいう。
『神聖なる闘気、略して【神闘気】と命名するのはどうだろうか!』
『さすがじゃなアインよ。神殺しを達成し、新たな力を身につけるとはな』
ややあって。
俺は隠しダンジョンの最奥まで、たどり着いた。
氷でできた扉を開けると、広いホールになっていた。
奥には光り輝く巨大な樹木、世界樹が生えている。
その根本に、一人の美しい少女がいた。
長い銀髪をサイドテールにしている。
黒いゴシックな感じのドレスを着ている。
肩をむき出しにするデザインであり、彼女の大きく白い胸が覗く。
爆乳や巨乳ほどではないが、十二分に大きい。
その目の色は、月のように黄金に輝いていた。
「【テレジア】姉様!」
ユーリが隣に顕現。
銀髪の美少女、テレジアに向かって走っていく。
テレジアはニコっと笑うと、ユーリに言う。
「【動くな】」
びたっ! とユーリが立ち止まる。
その止まり方は、少し変だった。
ユーリはまるで、走っている途中で、時を止められたように制止する。
「あうん」
かと思いきや、その場でこてん、とバランスを崩して倒れた。
「時間停止……じゃないか」
テレジアはほほえみながらユーリのもとへ行く。
妹を起こしてやるのか? と思ったのだが。
彼女はスルーし、俺の元までやってきた。
テレジアは俺に正面から密着する。
潤んだ目で俺を見上げて、至近距離で尋ねる。
「あなた、お名前は?」
「あ、アイン」
「そう……アイン様。素敵な……お名前ね」
うっとりとした表情で、俺に抱きつく。
その大きい乳房が押しつぶされ、ひしゃげていた。
「悪神を倒し……わたくしを救ってくれた。やっと……見つけた。わたくしの……王子様」
目を閉じてテレジアがぎゅっと俺に抱きつく。
「あ、あの……テレジアさん?」
「アイン様……どうかテレジアと……呼び捨てにしてくださいまし」
「て、テレジア。妹がおまえに会いたがっていてさ、ほら」
「テレジア、姉様!」
笑顔のユーリが、テレジアに抱きつこうとする。
「【座りなさい】」
びたっ、とユーリがその場で立ち止まる。
おとなしく正座をする。
「【しばらく黙ってなさい】」
「むー! むぐー!」
ユーリが口をもごもごさせる。
テレジアの言いつけを守っている、って感じではなさそうだ。
「アイン様。これで……邪魔者はいませんわ???」
テレジアは俺から離れると、するり……と自分のドレスを脱ごうとする。
「ちょ、ちょっと待て。なにするつもりだ?」
「なに……とおっしゃられても、アイン様と……子供を作ろうかと」
な、なにを言ってるんだこいつは?
「愛しい殿方と出会ったら……その人の子供を産みたいと思うことは……おかしいでしょうか?」
「いやおかしいって! 離れてくれって!」
「離れたら……子作りしてくれますか?」
ここでノーと言っても話がループするだけな気がした。
「け、検討しよう。だから離れて、ついでにユーリに何かしてるなら解いてやってくれ」
「わかりました……旦那様」
テレジアはパチンと指を鳴らす。
「ぷはぁ……! ね、姉様の力、あいかわらず、すごいです」
ユーリが立ち上がって、俺たちに近づく。
「さぁ……アイン様。これで子作り……してくださいますか?」
するするとテレジアが服を脱ごうとする。
ユーリは俺の前にたち、手を広げる。
「姉様! アインさん、いやがってます!」
よかったどうにかなりそう。
「まずは、キスしてから、です!」
おいいいいい。こいつもか!
ぱぁ……! と俺の左目が輝く。
「やっほーテレジアお姉ちゃん」
「テレちゃんおひさ~」
ピナとクルシュが顕現する。
「アイン様……あちらの人気のない場所へ行きましょう。ここでは……邪魔者が多いですから」
「邪魔者っておまえ……。姉と妹たちがせっかくきたんだから、再会を喜べよ」
ちらっとテレジアはユーリたちを一瞥する。
「アイン様」「おう」「子供は……何人くらいがよろしいでしょうか?」「話を聞いてくれ!」
テレジアは頬を赤らめて、俺に抱きつく。
離れようとするのだが……。
「【離れるな】」
突如、俺の体の自由が効かなくなる。
動かそうとしても、びくともしない。
「アイちゃん、これがテレちゃんの能力【誓約の蛇眼】だよん」
「せいやくの、じゃがん?」
「視界に入った生物に強制的に言うことを聞かせる邪眼だよ~ん」
すさまじい力持っているな、テレジア。
「三女のテレジアお姉ちゃんは、ちょぉっと心病んでてね。愛が深すぎて好きになった人以外興味なくなるの。ヤンデレってやつ☆」
厄介な性格してるな……。
「旦那様……わたくしの初めて……どうぞもらってくださいまし」
しゅるしゅるとテレジアが衣服を脱ぐ。
とんっ、と俺の体を押し、その上にまたがる。
「ちょっと止めてくれって!」
「【全員、動くな】」
びたっ……!
精霊たちが微動だにできなくなる。
「命令は人間以外も有効だよ~ん」
「お兄さん大変☆ 貞操の危機だ~☆」
こいつら楽しんでやがる!
「アイン、さん! だめー!」
と、そのときだった。
『くくく、なにをしておる、我が眷属よ!』
青い光が俺と、そして精霊たちを包み込む。
突如、体の自由が効いた。
俺はテレジアを押しのけて、距離をとる。
「わが力の前に呪いなど無意味!」
かっこいいポーズを取るマオ。
「マオ。そうか、浄眼の力で能力を解いたのか」
「え~。マオマオちょっと空気よみなよ~」
「あーあ、マオにはがっかり。あんたほんとKYよね。昔から」
ちぇー、とクルシュとピナが唇をとがらせる。
「ちょ、なんであたしが悪いみたいな空気になってるのよ!」
「「空気よめし~」」
「うう……」
俺の元へ、ユーリが駆け寄ってくる。
「テレジア、姉様! アイン、さんは、わたしません!」
むぎゅーとユーリが俺を抱きしめる。
「そう……わかったわ。アイン様。わたくしも……あなたのそばにおかせてくださいまし」
テレジアが、金色の精霊核を取り出す。
「悪い虫がつかぬよう……お守りいたしますわ」
……かくして、俺は7人目の精霊を仲間にしたのだった。




