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137.コモノグース、異形化して挑むが敗北




 鑑定士アインが、コモノグース率いるエルフの軍隊を撃破した、直後。


 エルフ国の地下牢にて。


 コモノグースは、大汗をかいていた。


「マズいマズいマズいぞぉ……! アインが来る……!」


 コモノグースは使い魔を使って外部と連絡を取り、軍を率いてアインに挑んだ。


 しかし結果は惨敗。


 まもなく首謀者であるコモノグースのもとに、彼はやってくるだろう。


「ここにいたら殺される……!」


 コモノグースは立ち上がり、地下牢の鉄格子を叩く。


「くそっ! 出せ! 出せよぉ!」


 この牢屋のなかでは魔法は使えない。

 脱出は不可能……と諦めていたそのときだ。


「こんにちは、コモノグース」


 そこに麗しい見た目の、ダークエルフがいた。


「エキドナぁ……! 話が違うじゃないかぁ!」


 コモノグースは怒りをあらわにしていた。


「あの男は天使で対処可能だと、よくも大嘘をついたものだなぁ!」


「ごめんなさいね。あそこまで強くなっているなんて、想定外だったの」


 エキドナが申し訳なさそうに頭を下げる。


「まあいい。おいエキドナ、さっさとここから出せ!」


 エキドナは胸の谷間から、地下牢の鍵を取り出す。


「そうだ! さっさとその鍵をよこせ!」


 コモノグースが手を伸ばした……そのときだ。


 ボトッ……!


「ぎゃぁあああ! 腕がぁあああああ!」


 いつの間にか切断された腕を、コモノグースは抑えながら倒れる。


「あら、大丈夫? 血がドバドバ出て痛そうね?」


「貴様ぁあ! 裏切ったのかぁ!?」


「裏切る? 心外ね。そもそも最初から、あなたは利用される側だったのよ」


 エキドナはしゃがみ込んで、コモノグースを見下ろす。


「あなたはアインの成長を測る物差しとして、よく働いてくれたわ」


「ものさし……だと……? 対等な同盟じゃ……なかったのか……?」


「誤解させてしまったのならごめんなさい。お詫びに、良い物をあげるわ」


 にぃ、っと薄く笑うと、エキドナは谷間から、赤い宝玉を取り出す。


 そして、コモノグースの額に差し込んだ。


「うぎゃあぁああああああああああ!」


 バキバキバキ!


 骨が折れ、肉が膨れ上がり、内臓の位置が変わる。


 コモノグースだったものは、異形の存在へと変わっていった。


 人間の倍ほどのある、【大蜘蛛】へと変化したのだ。


「あら失敗。やっぱりシェリアのときみたいに、上手に魔族化するのって難しいわ」


【なんだこの醜い姿はぁあああああ! 認めない! これが私なんて認めないいい!】


 大蜘蛛となったコモノグースは、手足をめちゃくちゃに動かす。


 ドガァアアアアアアアアアアアン!


 牢屋を破壊し、天井を突き破り、コモノグースは外へ出る。


【私は上級エルフなんだ! 美しく! 気高き存在なのに! こんな気持ちの悪い姿なんてしていけないのだぁあああああ!】


 地上へと出たコモノグースは、足を長く伸ばす。


 8本の長い足を、まるで鞭のように、それぞれ自在に動かす。


 鞭の尖端には、鋭い爪が付いていた。


 ズババババババババッ……!


 鞭は建物を、そしてなかにいた人たちを傷つける。


 王城の建物は、音を立てながら崩れ落ちていく。


「あら、自我が残っているのね。あながち失敗作って訳でもないか」


 エキドナは指を鳴らすと、一瞬で消えた。


 残された大蜘蛛コモノグースは、王城内をカサカサと走りながら、腕を振り回す。


 鞭のしなりが加わり、面白いように人も、建物も切断されていく。


 ドガァアアアアアアアアアアアアン!


 大蜘蛛は王城の壁を破壊し、外に出る。


「ひっ……!」「ばけものだぁ!」


 眼下には、王城で働くエルフたちがいた。


【だれがバケモノだぁ! 殺すぞぉおおおおお!】


 コモノグースは、長い足を、エルフたちめがけて振り下ろそうとした、そのときだ。


「やめろ!」


 エルフたちの前に、何者かが両手を広げて立ち塞がった。


 国王フランシスだ。


「それ以上、ぼくの子供たちを傷つけることは許さないぞ!」


【私に命令するなゴミぃ! 死にたくなければどきやがれぇ!】


「どかない! ぼくは国王、この子らの長だ!」


【そうかぁ! じゃあ死ねぇえええええええええええええ!】


 今度こそ、大蜘蛛がその鋭い爪を、フランシスにめがけて振り下ろした。


 ガギィイイイイイイイイイイイン!


 その爪を、鑑定士アインが、精霊の剣で受け止めていた。


【アインぅうう!】


 そしてアインの隣には、白髪の小柄な上級エルフがいた。


「……姉、上?」


 フランシスが呆然とつぶやく。

 目の前にいる少女を見て、涙を流した。


「うそだ……姉上が……どうして?」


「予期せぬ襲撃じゃった。わしの転移魔法でなければ間に合わなかったのじゃ」


 アインは剣で、コモノグースの爪を弾く。


「アインよ、みなの治療はわしに任せろ。後は頼む」


 ウルスラは転移魔法を発動させる。


 アイン、そしてコモノグースを、安全な街の外へと転移させた。


【アイン! 邪魔が入ったけどこれで決着が付けられるなぁああああああ!】


 大蜘蛛コモノグースが邪悪な笑みを浮かべる。


「決着……か。そうだな。もう終わりにしよう」


 アインは両手を広げる。

 

 右手に魔力。左手に闘気。

 その二つを、胸の前で合わせる。


 ゴォオオオオオオオオオオオオ……!


 アインの左目に、美しいあざが浮かぶ。


 樹木とも蔓とも見えるそれは、彼に神聖さを与えていた。


【あぁあああ美しいぃいいいずるいずるいずるいぃいいいいいいいい!】


 コモノグースは狂ったように叫ぶ。


【どうして貴様は強く美しく進化するぅううう! どうして私はこんなにも醜い姿でなければ強くなれないぃいいいいいい!】


 大蜘蛛の手足を伸ばし、縦横無尽にそれを振る。


 ひゅごぉおおおおおおおおおおおお!


 先ほどの何百倍もの速さで、大蜘蛛の足が動き、周囲の物体を切り刻む。


「それは思い違いだ、小物野郎」


 アインは一歩前に足を出す。


 高速で動く鞭のなかを走りながら、一度も傷つくことなく進む。


【なぜだぁ!? なぜ当たらないぃいい!?】


「俺の目には、おまえごときの攻撃、止まって見える」


 紙一重でアインは、攻撃を全て回避していく。


【くそぉおおおおおおおおおおお!】


 やがて、アインは大蜘蛛の間合いのなかへと到達する。


「さっきの言葉を訂正するよ。おまえは、強くなんかなってない。ただ醜くなっただけだ。……哀れだな」


 アインの体から、より一層莫大な量の闘気が噴出する。


 彼は超高速で、剣を振るった。


 ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


【こんな醜い姿になっても……勝てないなんて……この異常な強さ、まさに……バケモノだ……】


 超強力な一撃を受け、コモノグースは跡形もなく消滅。


 その隣に、ウルスラが転移してくる。


「さすがじゃ、アインよ。異形化した上級エルフを、真正面から倒すなんてな」

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― 新着の感想 ―
[一言] なんかなんでもかんでも禁術で倒してウルスラが「さすがじゃ」的な感じの流れが出来上がっちゃっててなんか微妙。別に禁術はいいんだけどウルスラの「さすがじゃ」のセリフはいらないかなぁ。
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