表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/244

134.鑑定士、魔族の偽装を見破る



 第6精霊マオを仲間にした、数時間後。


 俺はエルフ国【ギ・ヴ】の街、王城へと帰還した。


 謁見の間にて。


 国王フランシスに、帰還の報告をしに行くと、見覚えのないエルフがいた。


「おや、フランシス。件の雄ザルが帰ってきたようだねぇ」


「【コモノグース】。ぼくの大事な友人を愚弄するな」


 長身の上級エルフ・コモノグースは、俺を小馬鹿にしたように言う。


 長い金髪。

 顔立ちは整っている。


「人間なんぞ我ら上級エルフから見ればサルも同然さ。君も本当はそう思っているんじゃないかい、フランシス」


「……いくら族長とは言え、不敬だぞコモノグース」


「そう怒るなってフランシス。不敬罪で引っ捕らえるかい? 同じ族長で、しかも君よりも長く生きているこの私を?」


 どうやらコモノグースは、フランシス同様族長のひとりらしい。


 たしかエルフ国は、5つの部族が治めていると聞いた。


 この金髪男は、そのなかの一つを治める族長なのだろう。


「フランシス国王、何かあったんですか?」


「私が答えよう、下等生物くん」


 コモノグースは俺の前までやってくる。

 

 身長はこいつの方が上なので、自然と見下される形になる。


「君には、【ギ・ヴ】を除く4つの部族から、国家反逆罪の疑いがかけられてるんだよ」


「は? そんなことしてませんけど?」


「それはどうかなぁ? 聞くところによると、君は白鯨を単身で倒すほど、バケモノじみた力を持っているそうじゃないか?」


 コモノグースが俺に近づいてくる。


「さらに? 君がこの国に来てから、魔族が近寄ってきたって? これはもう、貴様が魔族と同族ってことじゃあないのかぁい?」


「ふざけるな! 彼がいなかったら魔族に国が滅ぼされていたんだよ!」


 フランシスが怒りをあらわにして、コモノグースに近づく。


「しかしぃ? 彼がいなかったら、魔族は来なかったんだよ? 今まで魔族の襲撃なぞほとんどなかった我が国が? このサルが来るようになってから訪れた。これは偶然かなぁ?」


 コモノグースは国王の髪を掴んで、乱暴に放り投げる。


 俺はフランシスを受け止める。


「魔族はアイン君を狙っていた! 仲間なわけがないだろ!」


「仲間割れという可能性をどうして否定でき無いかねぇ、お子ちゃま族長くん?」


 ぎり……っとフランシスが悔しそうに歯がみする。


 確かに同じ上級エルフ同士でも、コモノグースの方が背が高く成熟している。


「私たちのなかで一番の年下のぶんざいで、偉そうに組織のトップを気取るなガキが……」


 コモノグースが国王をにらみ付けてくる。

「他の3部族長たちも、アインを捕らえよという意見でそろっている。4対1だ。よってアイン・レーシック、貴様を捕縛させてもらおう」


 パチンッ!


 ぞろぞろ……。


 コモノグースの背後から、鎧を着たエルフたちがやってくる。


「やめろ! 彼はぼくの大切な人だ!」


「おやおやフランシス陛下もぉ? もしや魔族と通じているのかなぁ? これは君も捕まえないといけないかもねぇ?」


 ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべるコモノグース。


 と、そのときだった。


『くくく、我が眷属よ。よく聞くがよい』


 脳内から、精霊マオの声がした。


『奴の部下、姿を偽装しているぞ?』


 俺はマオを仲間にして手に入れた【浄眼】を発動させる。


 青い光が、部下たちに降り注ぐ。


 すると、コモノグースの部下の姿が、エルフから、魔族へと変化した。


「なっ!? バカな!? 最高峰の偽装魔術だぞ!?」


 コモノグースが驚愕の表情を浮かべる。


「魔族を連れておいて、よく俺に魔族の内通者って言えたもんだな」


「く、くそ! いけ! 殺せぇ!」


 コモノグースの命令に、しかし魔族たちは脱兎のごとく逃げ出す。


「ふざけるな! おれたちは逃げるぞ!」


「あんたの偽装は完璧だって言うから力貸したのに!」


 禁術で体を強化。

 俺は精霊の剣を出し、高速で剣を振る。


 ヒュッ……!


 ボトボトボトボトッ!


「ひ、ひぎぃいい!」


 コモノグースはその場で尻餅をつく。


「あ、あぁああの数の魔族を一息で! 全滅だとぉ!?」


「今更魔族なんて、俺の敵じゃないんだよ」


 俺はコモノグースのもとへ近づく。


「ひぃいいいいい! アイン様! 申し訳ございませんでしたぁあああああ!」


 金髪の美青年が、必死の表情で土下座をする。


「私は魔族たちに脅され仕方なく! 仕方なくエルフを裏切ったのです! 私に悪気はなかったのですぅううううううう!」


 ぐりぐりとコモノグースが頭を地面につけ、土下座する。


「仕方なくだと! ふざけるな! 自分の意思でアイン君を殺そうとしたんだろう!?」


 フランシスが憤怒の表情で、コモノグースを蹴飛ばそうとする。


「国王、落ち着いてくれ」

「しかし……!」


「冷静になってくれ。まだ魔族との内通者である裏が取れたわけではない以上、手を出すのは問題になるだろ?」


「……わかった。しかし、さすがだなアイン君。冷静な判断だ」


 そのときだった。


 にやり、とコモノグースが邪悪に笑う。


「バカめ!」「はい、内通者確定」


 スパンッ……!


「うぎゃぁああああ! 腕がぁあああああああああああ!」


 切断されたコモノグースの腕には、杖が握られていた。


「おまえが敵意を向けた瞬間、千里眼で次の動作が見えた」


「くそくそくそおぉ! こ、こうなったら最後の手段だぁああああ!」


 コモノグースは、無事な方の手で、何やら複雑な印を組む。


 天上に魔法陣が出現。


『アインよ。こやつ、【天使】を召喚するみたいだ』


「天使?」


『文字通り天の使いじゃ。聖職者系の希少職レア・クラスが呼び出せる、非常に強力な使役モンスターじゃ』


 天上から、白い翼を生やした、巨大な何かが降りてきた。


 人間、のようでいて、人間ではない。

 銅像に近いかもしれない。


「第一階梯【大天使アーク・エンジェル】! はーっはっは! これを出したが最後! チリも残さず貴様は死ぬぅ!」


 大天使が俺を見下ろす。


 その手に巨大な錫杖を持っていた。


「我が最強の力を前に怯え! 震えるがいいサルがぁあああああ!」


 大天使はその巨大な錫杖を、俺目がけて振り下ろす。


 パリィイイイイイイイイイイイン!


「なぁ!? なんだとぉおおお!?」


 禁術オーラの鎧に弾かれ、錫杖が吹っ飛んでいく。


「なんだ、期待させといて、こんなもんか」


 俺は禁術で強化した斬撃を、大天使めがけてお見舞いする。


「し、しかし大天使の防御力を舐めてもらっては困る! なにせオリハルコンを越える強度を」


 ズバァアアアアアアアアアアアアアン!


 大天使は、俺の一撃を受けて跡形もなく消え去った。


『どうやら禁術は天使にも有効なようじゃな。さすがじゃアイン』


「ば、ばかなぁ~……わが部族に伝わる、秘伝が、一撃でやられるだとぉ……」


 へたり込むコモノグース。


「たいしたこと無いな、おまえんとこの秘伝」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう敵になる奴らの民度が低すぎて・・・ なのに高貴な役職に就てるから不思議。 いままでどうやって仕事とか人間関係を構築してきたの? と疑いたくなるぐらい頭も悪いし性格も悪すぎ。 いくら貴族社会とか弱肉…
[気になる点] この世界の種族達はそんなにサルが好きなんか?どんだけサルサルサルサルサルサルサル言うんだよ
[良い点] エール送ります [一言] エールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエールエール…
2020/01/28 19:32 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ