132.鑑定士、第6精霊と契約する
守り手【青嵐】とのバトルに勝利した、数十分後。
俺は、海底にある隠しダンジョンへとやってきた。
俺の目の前には、砂でできた城のようなものがある。
『クククッ……人間よ。よくぞわが城へ参られた。まずはそこを褒めてやろう』
偉そうな声が、どこからか響いてくる。
『しかし! わが難攻不落の居城、【ダーク・シャドウ・ダークネス城】に一歩足を踏み入れたが最後! その命はないものと思うが良い!』
「なあ、この痛いセリフは。あんたの娘さんのものか?」
『い、いいい痛くないわ無礼者ぉ!』
俺は隣にいる、青嵐に声をかける。
「黙れ小僧! 妾の娘を侮辱するのか!? 死罪だぞ!?」
青嵐はさっきの竜の姿から、美しい女性へと変化していた。
外見年齢は20歳ほどか。
青い髪をまとめ、【チャイナドレス】(ユーリが教えてくれた)というものを身に付けている。
ちなみに胸はかなり大きかった。
『ま、まあ良い。わが元へ来たいのであれば来るが良い! もっとも、城のなかには複数のトラップ、そして数々の強力な守護モンスターたちが貴様を襲うだろう! 果たして無事にたどり着けるかな!』
数十分後。
俺はマオのいる場所まで、やってきた。
「なんで無事なのよぉおおおおおお!!」
そこはユーリたちのところとと同じく、広いホールになっていた。
海底に巨大な光る木【世界樹】が生えている。
その根元に、精霊【マオ】はいた。
見た目で言うと12,3歳くらいか。
体つきは未成熟だ。
赤い髪をツインテールにしている。
左目を眼帯で覆い、両手には包帯。
そしてなぜか黒いマント? のようなものを羽織っていた。
「マオ、ちゃん!」
俺の左目が輝き、金髪美少女が顕現する。
「ユーリちゃぁあああああああん!」
マオは涙を流しながら、ユーリの体に抱きつく。
「えへへ♡ マオちゃん、ひさしぶり~♡」
ユーリは嬉しそうに、妹の頭をよしよしと撫でる。
「ユーリちゃん! 今すぐ逃げよう!」
一方でマオは、青い顔をして必死の形相で言う。
「あの男、バケモノだよ! ママを倒し、あたしのトラップに守護モンスターたちをぶっ倒したまさにバケモノだよ!」
マオが恐怖の表情で、俺を指さしていう。
「マオ、ちゃん。アインさん、は、敵、じゃ、ない、よ?」
「ほ、ほんとなの……?」
左目が輝き、残りの精霊たちが出てくる。
「お姉ちゃんたち! それにメイも!」
ぞろぞろとマオの周りを、姉妹たちが取り囲む。
「やーやーマオマオおひさ~」
「マオってば相変わらず変なコスプレすきだよね~☆」
「まーちゃん! うでにほーたいが! おけがしたのですかっ!」
姉たちからはぐりぐりと頭を撫でられ、メイからは腕を引っ張られている。
「い、いやメイ……違うのよ。これは別に痛いから包帯まいてるわけじゃなくってね……」
しどろもどろなマオ。
「? けがしてないのに、どーして包帯まくのー? へんだよー」
「へ、変ちゃうわ! これはオシャレ! かっこいいヤツ! ファッション!」
メイから指摘を受けて、マオが反論する。
「へん!」
「が、がーん! ひどい!」
がくっ、とマオが肩を落とす。
「マオマオ、それ変だよ~」
「包帯の無駄遣いだね☆」
「ううぅうううるさいな! いいの! これがかっこいいのよ!」
……どうやらマオは、姉からも妹からもいじられるキャラのようだ。
ややあって。
「はぁ……あんたが敵じゃないっていうのはわかったわ。疑ってゴメンネ」
マオが腕を組んで俺を見上げていう。
「くくく、とか、わが居城、とかはもう言わないのか?」
「う、うっさいな!」
顔を真っ赤にしてマオが言う。
「で、も……マオちゃん、元気で、よかったぁ~♡」
ユーリはマオを後からぎゅーっと抱きしめている。
身長差があるので、マオの頭の上に、ユーリの巨乳が乗っていた。
「ユーリちゃん、また胸デカくなってない……?」
「そー、かな? マオちゃん、も、おっきく……おっきく……なったね!」
「同情しないでよ……はぁ……」
確かに年齢の割に発育がよくなさそうだ。
「で? ユーリちゃんはどうしてこんなバケモノ連れてるわけ?」
「だ、からバケモノ、じゃないです。アインさん、は、わたしの、大切な人です」
真剣な表情で、ユーリがマオに言う。
「そして、わたし、の……旦那様♡ ぽっ……♡」
「は!? え、ユーリちゃん結婚したの!?」
すると姉たちが、ニヤッと笑う。
「そうだよ~。なんだマオマオ知らなかったの~?」
「マオ以外で結婚式やったんだからね☆」
「そ、そんな……仲間はずれなんて……ひ、ひどいよぉ……」
「「うっそ~☆」」
「このアホ姉ぇえええええええええ!」
マオが顔を真っ赤にして、クルシュとピナを追いかけ回す。
「マオはいつもあんななのか?」
「はい。マオ、ちゃん、わたし、たち、の、アイドル、です」
アイドルというかオモチャのような気がする……。
ややあって。
「愚かな人間よ。このわれ、マオも貴様とともに行動してやろう」
マオが俺に、赤い精霊核を手渡してくる。
「くくく、このわれも雌伏の時を破り、外に出る刻が来たのだ……!」
「それって演技なのか? それとも二重人格?」
「ちがうわよ! カッコいいからやってるの! カッコいいでしょ!」
カッコいいだろうか、それ……?
「とにかく! あたしは外に出たいの。もうこんな暗い海底でひとり闇の支配者ごっこにも、いい加減飽き飽きしてたのよね」
こいつ、【ごっこ】って言ったぞ。
「ダメだ! マオよ!」
青嵐がマオのことをむぎゅーっと抱きしめる。
「我は許さぬぞ! 外は危険がいっぱいなのだ! 愛しいおまえを外になど出してなる者か!」
「ちょっ! ママ! やめてよ! みんながいる前で!」
「マオ、この母と一緒に海底で暮らそう」
「いやよ! ママ! あたしは外へ行くの! もうこんなとこでママと二人きりにも飽きたの!」
守り手の青嵐は、どうやら本当に過保護らしい。
「ならさ~。青嵐ママも、マオといっしょに外へ行けば良いじゃん☆」
「ピナ、ちゃんのゆー、とーり、です!」
「なに? どういうことだ、ウルスラ。説明せよ」
「はっ! 青嵐さま!」
ウルスラが、精霊核を加工して義眼にすることで、精霊を外に連れ出せること。
賢者の石を使うことで、世界樹を守りつつ、守り手も外に出ると説明。
……というか、やはり力関係で言うと、四神たちの方が上なんだな。
黒姫たちがフランクすぎるか。
「おい小僧。我も力を貸してやる。光栄に思え」
かくして第6精霊マオと、守り手・青嵐が仲間になって、以下の能力を手にした。
【浄眼】
【→精霊マオと契約して手に入れた能力。あらゆる幻術を打ち破り、その正体をあばく。また周囲の生体反応を察知可能】
【複製】
【→青嵐と契約して手に入れた能力。魔力を消費し物体を複製する】