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129.魔族、禁術を前に手も足も出ない



 鑑定士アインが、新たな力を手にした、数時間後。


 エルフ国の近海にて。


「ごきげんよう、鑑定士。我が輩の名前は【操魚】シャチ・ハタと申します」


 二足歩行するシャチ型の魔族。

 侯爵(序列2位)。


 シャチは海上に立ち、アインを見上げていた。


「何しに来た?」


 アインは飛翔能力で上空に浮かんでいる。


「あなたを殺しにきたにきまっているではありませんか」


「あんだけお仲間が殺されてるのに、まだ挑みに来るのか。学習能力が足りてないんじゃないか?」


「負けた奴らは人間以下の実力しか無かったサル以下のアホどもだっただけですよ。我が輩は、違う」


 パチンッ、とシャチは指ならす。


 すると、海面が盛り上がり、そこから巨大なクジラが出現する。


「我が輩の能力は【操魚】! 魚類ならば無制限に作り出すことができる! そう! たとえ白鯨であってもです!」


 シャチの周囲には、【白鯨モビィ・ディック】が泳いでいる。


「魚たちの目を通してあなたの先日の戦いを見ました。あなた、随分と白鯨に苦戦していましたねぇ」


 ニヤニヤとシャチが笑う。


「1匹でも苦戦していた白鯨が、なんと10匹もいますよ! どうです? 絶望的ですよねぇ」


 シャチの周囲を、白鯨たちが泳ぐ。


 ブシュウウウウウッ…………!


 白鯨が濃霧を噴出し、辺りが見えなくなる。


「大人しくその首を差し出すというのでしたら、苦痛無く殺してあげますよ!」


 シャチは勝ち誇った笑みを浮かべる。


「問題ない」


「ほう、抵抗するのですか? いいですよ! 殺せ!」


 しーん……。


「ど、どうしました白鯨たちよ! ゆけ! ゆくのです!」


 ボシュッ……!


 一瞬で、辺りの霧が消える。


 そしてシャチは……驚愕に目を見開いた。


「なぁあ!? は、白鯨が……1匹もいないだとぉ!?」


 周囲の海は、先ほどまでいた白いクジラたちが、1匹も見当たらないのだ。


「ばかなっ!? い、いったい何をした!? 何をしたんだぁ!?」


 バッ……! とシャチが上空を見やる。


 そこにいたのは、確かに鑑定士アインだった。


 だが……その外見は、異なっていた。


「な、なんだその、顔の【あざ】は!?」


 アインの左目周辺に、模様のような痣が浮かんでいた。


 その痣は樹木のような、美しい模様をしていた。


「禁術を発動させると、痣が浮かび上がるんだそうだ」


「き、禁術!? なんだそれは!?」


「おまえに答える義理はない。それで? もう終わりか?」


「はっ、ハッ! そんなわけがないだろう! 出でよ! 我が軍勢よ!」


 ざばあぁあああああああああああん!


 水中から白鯨が、大量に顔を出す。


 その数、合計100体。


「いくら貴様とて、この数を相手にできるわけがなかろうが! やれ! 殺せええええええええ!」


 ーーォオオオオオオオオオ!


 白鯨たちが、いっせいにアインに襲いかかる。


 額に生える巨大な角が、100本。

 アインの体を、串刺しにしようとする。


「お得意の剣で切り捨てるか!? だが斬るほど数が増えて不利になるのはおまえだぞぉ!」


「斬らねえよ」


 白鯨たちの攻撃に、アインは……動かなかった。


 バキィイイイイイイイイイイン!


 角がアインの体を串刺しに……していない。


 あの巨大な角が、アインの体を貫くどころか……折れたのだ。


「き、貴様ぁ! 何をした! なんの能力だぁ!」


「能力じゃねえよ。禁術で俺の体は、超強化されてるんだ」


 先ほどから禁術という単語が気になってしょうがない。


「たたき殺せ! 白鯨たちよ!」


 白鯨が巨大な尻ヒレを持ち上げて、アインを海面にたたきつけようとする。


 パリィイイイイイイイイイイイイン!


 だが、アインは微動だにしていない。


 だというのに、白鯨たちは凄まじい勢いで、吹き飛んでいったのだ。


「ば、バカな!? 攻撃反射パリィだと!?」


「【禁術オーラ】を鎧のように纏っている。俺に物理攻撃は一切効かない」


「き、禁術オーラ!? なんだそれは!?」


「魔力と闘気オーラを合成して作られる闘気のことだよ。通常の闘気の何百倍も、物体や体を強化するんだ」


 しゅうう……とアインの左目の痣が消える。


「オーラが切れたか」


 アインは両手を広げる。

 右手に魔力。左手に、闘気を溜める。


 そして、それを胸の前で合わせると……。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオ!


 アインの体から、凄まじいまでの闘気が噴出された。


「うげぇええええええええええ!」


 そのあまりの闘気の量にあてられて、シャチは吐いてしまった。


「は、白鯨ども! ありったけの濃霧を吐き出せ!」


 シャチは大量の白鯨を作り出す。


 その数は500。


 いっせいに濃霧を噴出させる。


 その一方で、シャチは自分1人、凄まじい速さでその場から撤退した。


「無理無理無理ぃ! あんなの相手にしたら死ぬ! 死んでしまうぅうううう!」


 アインの出した禁術オーラ。


 それは、かつて存在した魔王ミクトランに匹敵するほどの闘気量だった。


「白鯨どもぉお! 我が輩が逃げる時間をかせげぇええええええ!」


 シャチは全力で逃走しながら、背後の様子を見やる。


 ーーォオオオオオオオオオオオ!


 白鯨たちが、まるで白い津波のごとく、アインに襲いかかる。


 だが……。


 パリィイイイイイイイイイイン!


 やはりアインの禁術オーラに弾かれて、白鯨たちがすっ飛んでいく。


「学習しない魚どもだな。クルシュ」


『あいよ~。虚無ね~』


 アインの左目が、朱色に染まる。


「知ってるぞぉ! その力は! 消し飛ばす相手が強いといっきに消せないんだろぉ! 前回の白鯨戦でも、細かく切らないと消せなかったもんなぁ!」


 アインの左目周囲の痣が、ドクンッ……! と脈打つ。


 痣の色が、瞳と同じ色へ染まっていく。


 バシュゥウウウウウ…………!


「はぁあああああああああ!? い、一匹残らず、消えただとぉおおおおお!?」


 白鯨は再生能力を持つ。

 細胞の1つでも残っていれば、そこから完璧に戻れる。


 ……しかし、白鯨は1匹残らず、細胞のひとかけらも残さず、アインの虚無の邪眼で消されたのだ。


「バカなバカなバカなぁ! そんな力はなかっただろうがぁああああああ!」


「禁術で、瞳術を強化しただけだよ」


「アイン!? い、いつの間にぃ!?」


 鑑定士アインが、シャチの目の前にいたのだ。


「虚無によるテレポートだよ」


 アインの手には、剣が握られていた。


 彼は闘気を操作していない。

 ただ手に持った剣を、シャチめがけて、一閃させた。


 ズッバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 あまりの強烈な一撃に、海が……切断されたのだ。


 否、海とそして空に浮かぶ雲さえも、彼の一撃によって切り裂かれた。


 当然シャチは跡形もなく消滅したのだった。

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― 新着の感想 ―
魔石核で再生するんだから、主人公はあまりペラペラと技とか言わない方がいいと思うけどね。 いくら魔族が傲慢とはいえ魔界で再生するから情報共有されて対策されたら不利になる。 説明するなら、心の声で説明して…
[気になる点] 白鯨ってss級なのにそんな低ランクモンスターみたいに100匹もポコポコいて良いもんなの?人類普通に滅亡しない? それに白鯨って島並に大きいみたいな描写なかったっけ?大丈夫?いっぺんに出…
[良い点] 良く続けるわw(誉め言葉) [気になる点] いつまで続けるのかな?100日か? [一言] 身体を壊さないよう頑張ってください
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