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125/244

125.鑑定士、海賊たちを退ける



 エルフの国への船旅の途中。


 船の甲板にて。


「てめぇらぁ! 命が惜しければ金を出せぇ!!」


 曲刀を持った柄の悪い男たちが、数十人いる。


『アインよ。やつらはこの海で海賊をしている輩のようじゃ』


 ウルスラが彼らの素性を鑑定してくれる。

 なんだ、モンスターかと思ったのだが。

 しかし船旅を邪魔されては困るな。

 

 俺は海賊たちに近づく。


「あ~? なんだぁおまえ……?」


 海賊の1人が、俺に気付いて、曲刀を俺に向けてくる。


「ガキに用はねえ。とっとと消え失せ」


「そりゃこっちのセリフだ。大人しく消えるんだな」


「ああっ!? ガキのくせに偉そうに命令すんじゃねえよ!」


 海賊は俺のことを知らないようだ。


「命令じゃない。これは警告だ。けがしたくなきゃさっさと帰れ」


「ガキが! 死にてえようだなぁ!」


 海賊が曲刀を振り上る。


 俺は闘気で身体強化する。


「おらぁ! 死ねえ!」


 ブンッ!


 ガキンッ!


「ひゃーっひゃっひゃ! おれたち海賊に刃向かうからこうなるんだ……ってぇえええええええええ!?」


 海賊が、折れた曲刀を見て、目をむいている。


「おいおいどうしたぁ~?」


 仲間の海賊たちが近づいてくる。


「こっ、このガキ! おかしいぞ!」


「何言ってるんだよおまえ~」

「こんなひ弱なガキ1人にびびってんじゃねーっつーの」


 仲間の海賊たちの顔には、俺に対する侮蔑の表情がありありと浮かんでいる。


「抵抗するなら相手してやるよ。かかってこい」

 

 俺は精霊の剣を取り出し、海賊たちを見渡していう。


「おいおいしょんべんくせえガキが、海賊と戦おうって言うのか~?」


「おれたち海賊だぜ~? 怒らせたらとんでもないことになるぜ~?」


「ケガする前にとっととママのところに帰るんだなぁ、ガキぃ~」


 海賊の1人が剣を、俺の首筋につきつける。


 俺はその刃を手で掴んで、握りつぶした。

 ばきぃいいいいいいいいいいん!


「はぇ!? な、何が起きたんだ!?」


 俺はそのまま、剣の柄で海賊の鳩尾を強打。


 ボグッ……!


「ふぐぅ……」


 ドサッ!


「な、なんだ今の……?」

「早すぎて目で追えなかったぞ……」


 海賊たちの顔に緊張が走る。

 どうやら、ようやく状況を認識したようだ。


「もう一度言う。ケガしたくなきゃ大人しく消えろ」


「ぜ、全員で、かかれー!」


 ワァアアアアアアアアアアアア!


 海賊たちが曲刀を構えて、いっせいに俺に突撃してくる。


「おら! 死ね!」


 ブンッ!


 パリィイイイイイイイイイン!


「なっ!? ぶ、武器が弾き飛んだだと!?」


「妙な技を使うぞ! 気をつけろ!」


「遅えよ」


 俺は闘気で脚力を強化し、たくさんの海賊たちの間を、走り抜ける。


 ガッ! ドゴッ! バギッ! ドゴッ!


「うぎゃ!」「ぐぇ!」「ふぐ!」「ぐげぇえええええ!」


 その場にいた海賊たちが、いっせいに崩れ落ちる。


「なっ、なんだアイツ!?」

「めちゃくちゃ強いぞ!!」


 海賊たちが怯えた目を俺に向ける。


「なんだ、もう終わりか?」


 俺が彼らに近づくと、海賊たちはジリジリと下がる。


「び、びびってんじゃねえ! おい【召喚士】を呼べ!」


 海賊たちの中から、杖を持った男が現れる。


「【召喚サモン】!」


 海賊が召喚スキルを使用。


『アインよ。【クラーケン】。タコ型のAモンスターを水中に召喚するつもりじゃな』


「了解。クルシュ。アリス」

『あいよ~。千里眼と虚無の組み合わせね~』


 ボシュッ……!


 千里眼で水中のクラーケンを捕捉し、虚無の邪眼で消し飛ばす。


「はーっはっは! おまえ死んだぜぇ!」


 召喚士の海賊が、勝ち誇った笑みを浮かべる。


「聞いて驚け! おれさまの召喚獣は」

「クラーケンだろ。Aランクの」


「そう! Aランクのクラーケン……って、ええええええええええ!? な、なんでそのことを知ってるんだぁあああ!?」


 召喚士が驚愕する。


「は、ハンッ! 知ってたところでなんだ! ほらクラーケン! ぼさっとしてないでとっとと出てこい!」


 しーん……。


「ど、どうした! 何やってるんだ、おい!」


 召喚士が慌てて走り、船の外をのぞき込む。


「あ、あれぇええええええ? 出てこないぃいいいい!」


 召喚士が額に大量の汗をかく。


 俺は彼の元へ行き、首の後を剣の柄で強打。


 ドサッ。


「お、おいどうする!」

「まさか召喚士がやられるなんて!」


 残った海賊たちが慌てて言う。


「なんだ、今のがおまえらの最高戦力なのか?」


「くっ! くそっ!」


 と、そのときだった。


「落ち着け馬鹿野郎ども」


 ざっばぁああああああああああああん!


 水中から何かが、突如として浮上してきた。


 そいつは甲板の上に、スチャッと着地。


『フィッシャーマン。魚人型。男爵級の魔族じゃな』


 魔族が船の上に降り立ち、海賊たちを見渡す。


「お頭ぁ!」


「ったく、おまえらなに手こずってやがるんだよ」


「す、すまねえお頭……。相手が予想以上に強くって」


「はぁ? ったく、しゃーねえ。この男爵級魔族様が、相手してやるよ」


 ふっ……とフィッシャーマンが余裕の笑みを浮かべる。


「へへっ! おいガキ! おまえ終わったぜ!」


「いいかぁよく聞け! お頭はなぁ! 魔族なんだぜ魔族!」


「降参するなら今のうちだ! 裸で土下座するなら許してやっても良いぜ!」


 海賊どもが勝ち誇った笑みを浮かべる。


 フィッシャーマンは部下の海賊たちをかき分けて、俺の前へとやってくる。


「さて……部下を可愛がってくれたやつの顔を拝見するとしようか……って、げぇえええええええええええ!?」


 魔族は俺を見て、目玉が出るんじゃないかというほど目をむいて言う。


「アイン・レーシックだとぉおおおおおおおお!?」


 がくがくがく! とフィッシャーマンが体を恐怖で震わせる。


「どうしたんだお頭!」

「あんなガキとっとと殺してくださいよ!」


 事情を知らぬ海賊たちが、魔族にヤジを飛ばす。


 フィッシャーマンは光の速さで、俺の前で土下座した。


「すみませんでしたぁああああああああ!」


 魔族は土下座状態で、甲板に頭をガンガンと打ち付ける。


「どうか! 命だけは! 命だけは勘弁してくださぃいいい!」


「お、お頭が、命乞いしてるだと……?」


「魔族のお頭がびびるなんて……相手はもしかして……相当ヤバいやつだった?」


 さぁああ……と海賊たちの顔色が、真っ青になる。


 海賊たちはみな武器を捨てる。


 ガチャガチャガチャッ!


「「「すみまっせんでしたぁああ!」」」


 その場で全員が膝をついて、俺に頭を下げる。


 その様子を、船員たちが遠巻きに見ていた。


「す、すげえ……」


「海賊たちがアイン様に土下座してる!」


「さすがアイン様だ!」


 俺は海賊たちを見下ろしていう。


「見逃してやる。もう悪いことすんなよ」


「「「はい、すみませんでした!」」」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 海賊はまた別の人を襲うだろう。優しいね。
[良い点] おおwようやくコキュートスちゃんに続くアインさんと敵対=死と認識する賢い魔族さんが現れましたかw
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