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118/244

118.鑑定士、魔族化したシェリアを圧倒する



 俺は、部下と国王の危機を千里眼で察知した。


 王城に向かうと、魔族となったシェリアがいた。


 話は、彼女の【天衣無縫】を完璧に打ち破った直後。


 王城の裏の庭にて。


「私が……弱い、だって……?」


 シェリアが呆然とつぶやく。


 鑑定によると、彼女は何者かの手により魔族となったらしい。


 爛々と光る赤い瞳には、殺意がまだ消えてない。


「そんなことはない! 私は! 強くなったのだ!」


 シェリアは落ちていた自分の剣を拾いあげる。


「私はおまえのことを! おまえより弱い私を! 絶対に認めない!」


「こいよ。おまえの言う強さ、俺が否定してやる」


「【流星散華】! せやぁあああああああああ!」


 シェリアが体を闘気で強化し、俺に向かって突っ込んでくる。


 闘気によってスピード、パワーともに上昇している。


 しかし……やはり単純な攻撃だ。


 俺は闘気で剣を強化し、彼女の刺突を真っ向から受け止める。


 がぎぃいいいいいいいいいいん!


「く、くそっ!」 


 シェリアは体制を立て直し、俺に技を繰り出す。

 

「【百花繚乱】!」


 ほぼ同時に100連撃。


 だが俺は回避することなく彼女の体に、一撃を食らわせる。


 ズバンッ……!


「ぐぅぅう……!」


 パッ……! とシェリアの胸から、血が噴き出す。


 彼女は下がって俺から距離を取る。


「なぜ私の攻撃が当たらないのだ!?」


「言っただろ? 技が大ぶりになってるんだよ」


 一撃の威力は確かに上昇している。


 だが隙も大きくなっているため、そこを狙って剣を放ったのだ。


「黙れぇえええええ!」


 彼女がだっ……! と走ってくる。


『シェリアの剣技【猪突猛進】。文字通り突撃しながらの連撃じゃ』


 俺は後に下がりながら、彼女の剣を打ち払う。


 キンキンキンキンキン!


「ちくしょう! 当たれ! 当たれよぉ!」


 キンキンキンキンキン!


「そんな雑な技で俺が殺せるわけ無いだろ」


 俺は足を止め、やや強めに剣を振るった。


 ガギィイイイイイイイイイイイン!


「ぐわぁああああああああああ!」


 シェリアは背後に吹っ飛び、顔面から地面に激突する。


「ぶぎゃっ!」


 俺は彼女が立つのを待つ。


 ふらり……とシェリアが立ち上がる。


「ちくしょお……ぐす……なんでだよぉ~……」


 ボロボロと、シェリアが大粒の涙を流す。

「この目があれば……私はアインと同じ強さが手に入るんじゃないのかよぉ……」


 シェリアの左目は、どくんどくんと脈動している。


 ゾイド、イオアナと同じものが、シェリアに埋め込まれているようだ。


「最強の力を手に入れたはずなのに、どうして、勝てないんだよぉ~……」


「シェリア。それは間違ってるよ」


 俺は自分の顔に触れる。


「手に入れた力を、自分のために使っていては誰にも勝てない」


「わけのわからないことを……言うなぁああああ!」


 激昂したシェリアが、闘気を練り上げる。


「【天衣無縫】!」


 ゴォオオオオオオオオオオオオ!


 彼女が神速で剣を動かすことで、周囲にあるすべては塵と化す。


 超高速の連続斬りの嵐の中。


 俺は、歩き出す。


 スカッ!


 スカッ! スカッ!


「当たれぇ! 当たれよぉ!」


 シェリアが涙を流しながら、技を発動させている。


 だが俺は、その全てをかわす。


 この神眼は全てを見通す。


 攻撃の軌道、攻撃が当たらない場所、すべてを、見抜くことができる。


 時にかわし、時に剣で流す。


 そうしながら、俺は彼女の間合いの内側へと入った。


「くそぉおおおお! 死ねぇえええ!」


 彼女が天衣無縫を解いて、俺に雑な一撃を放ってくる。


 パリィイイイイイイイイイイン!


 弾いた剣の柄で、俺は彼女の鳩尾に、一撃を入れる。


 ドゴッ……!


「うっ……!」


 ドサッ……!


 シェリアはその場に崩れ落ちる。


「くそぉ……ちくしょぉ……強すぎんだよぉ……」


 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにし、シェリアが大泣きする。


「俺は、強くねえよ」


「嘘つくなよぉ……そんなに強いくせに……嫌みかよぉ……」


「そうじゃないんだ。本当に、俺自身、たいした強さは持ってないんだよ」


 俺はシェリアを見下ろす。


 その目は、濁っている。

 ……昔の俺と一緒だ。


 鑑定士だからと、最弱職だから弱いのだと思っていたあのときと同じ目。


「腕力の強弱は関係ない。たとえ自分が弱くても、誰かを守るために力を振ろうとする。それが本当の強さなんだ」


 かつての俺は、自分の弱さを受け止められなかった。


 自分だけが強くなりたいと思っていた。


 けど……ユーリという優しい少女に救われて、人生観が変わった。


 見返りを求めず、傷ついた人、困った人のために、彼女は自分の力を使っていた。


 本当に強い人は、そんなふうに自分のためでなく、弱い人、困っている人のために力を使う。


 俺は、ユーリという少女から、本当の強さを教わったのだ。


「シェリア。おまえはなんのために強くなりたかったんだよ?」


「……国王陛下のためだ」


 シェリアがぽつり……とつぶやく。


「あの人の手で救ってくれたこの命を、この手で守りたかったんだ……」


「そうか。だから以前のおまえは、強かったんだな」


「私が……強かった……?」


 目を丸くするシェリアに、俺は言う。


「ああ。前は気迫のこもった、良い剣だった。けど今、力を振り回すだけのおまえには、何の脅威も感じなかったよ」


 シェリアはうつむく。


 ややあって。


「……私は、間違っていたのだな」


 シェリアは剣を手放し、弱々しくつぶやく。


「私は、強くなって国王陛下を守りたかった。けどいつからか、あの人に認められたいと躍起になって、周りが見えなくなっていたんだな」


 シェリアはハッキリと言う。


「私の負けだ、アイン」


 彼女が初めて、負けを認めた。


「おまえは強い。さすが、国王様が認める最強の騎士だ」


「今はな。けど負けを認めたおまえは、もっと強くなれるよ」


「……なれるかな?」


「ああ。諦めなければ、必ず最強騎士の称号を、取り戻せるさ」


「……アイン、頼みがある。今回のことで私は罰を受けるだろう。贖罪を終えた時は、私に剣をーー」


 と、そのときだ。


 ズドンッ……!


 突如、高速で銃弾が飛来し、シェリアの土手っ腹を貫いたのだ。


 ズドドドドドドッ……!!!


 銃弾の雨あられが、シェリアの体に降り注ぐ。


 俺は結界で防ごうとしたが、結界すらも貫通してきた。


 神眼で銃弾の軌道を見切り回避する。


 俺は銃弾が飛んできた方向を見やる。


「ひさしぶりだね、アーーーイーーーンぅうううううう!!!」


「……イオアナ」


 そこにいたのは、かつて俺が倒した、赤髪の魔族だった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔族化して強くなったのに1回負けたら悔い改めるとか、それなら最初から魔族化しなくて良かったと思われ。したならしたで、負けたら逃げるなりエキドナが逃がすなりして復讐心を燃やした後にボロボ…
[一言] 相変わらず『良いこと言ってるふう』でしかないんだよな。 どっかで読んだ台詞を書いてるだけで、バックボーンが無いんだよ。 『かつての俺は自分の弱さを受け止められなかった』『自分だけが強くなり…
[一言] あ、最強ストーカーコンビだ ストーカー同士仲良くしろよ
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