表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/244

117.シェリア、魔族化しても鑑定士に勝てない



 女医エドナの手により、シェリアは魔族化した。


 話はその数十分後。


 彼女は王のいる、謁見の間までやってきた。


「国王陛下ぁ♡」


 だだっ広いホールの最奥に、玉座が1つある。


 何かの謁見途中だったのだろう。

 国王以外にもその場にいた。


「おぬし……シェリア、なのか?」


「ええ、そうです。見てください、新しい力を手に入れた私の姿を」


 謁見の間にいた近衛騎士たちは、シェリアから発するただならぬ気配をすぐさま察知した。


 ガチャガチャガチャ……!


 シェリアの前に、近衛騎士たちが集う。


「ここは通しませんよ、シェリア元団長!」


 近衛騎士のひとり、パメラが、大盾を構えていう。


「……どけ雑魚が。私は陛下に用事があるんだ」


 シェリアは、路傍の石をみる目で、近衛騎士団たちを見下ろす。


「雑魚ってよく言うぜ! パメラに負けたくせに!」


 だっ……! と男騎士のひとりが、剣を構えて走り出す。


「ま、待って! うかつに飛び出すのは危険です!」


「でりゃああああああああ!」


 騎士が剣を、振り下ろす。


 シェリアは剣の柄を握り、少し抜いて、元に戻した。


 キンッ……!


「ぐあぁああああああああ!」


 男騎士は突如、悲鳴を上げた。

「腕が! 腕がぁああああああ!」


 彼の両腕が、切断されていたのだ。


「い、いったい何をしたんだ……?」


「くそぉ! 喰らえ!」


 槍を持った騎士が、シェリアに一撃を食らわせようとする。


 シェリアは先ほど同様、剣を少し抜いて、戻した。


 キンッ……!


 バラッ……! と槍が腕ごと、みじん切りにされた。


「うぎゃぁあああああああ!」


「な、なんだこの人……めちゃくちゃ強くなっている!?」


 近衛騎士たちは警戒し、シェリアから距離を取る。


 注意深く、相手の動向を探ってくる。


「私が何をしているのか……サルの貴様らには、理解できないようだな」


 シェリアは教わったわけでなく、元部下たちをサル呼ばわりした。


「目を見開け。そしておののくがいい。我が必殺の【神速剣】を」


 シェリアは体から噴出する闘気で身体能力、そして剣速を上昇させる。


 キン……!


「ぐぁ!」「ぎゃッ……!」「うぎゃぁああああああ!」


 近衛騎士たちは武器ごと四肢を切断され、その場にうずくまる。


「弱い! もろい! 人間サルとはなんて脆弱なんだぁああ!」


 何もシェリアは、特別なことをしたわけではない。


 光を越える速さで剣を抜き、そして周囲にいる近衛騎士たちを切り刻み、鞘に戻しただけだ。


「見てくださいましたか、国王陛下ぁ……

♡ 私、強くなりましたよぉ」


 一歩一歩、シェリアは国王に近づく。


 彼は厳しい表情を崩さぬまま、玉座に座っていた。


 その背後に、宰相など臣下たちが震えている。


「行かせません!」


 半壊した大盾を構えながら、パメラがシェリアの前に立ち塞がる。


「消えろ、落第騎士が!」


 キンッ……!


 がぎぃいいいいいいいいいいん!


「くっ……!」


「ほぉ……? 今の一撃を防ぐのか。やるじゃないか、サルのくせに」


 シェリアの一撃を、パメラはなんとか耐えた。


 だが大盾は今のでボロボロになった。


「どけ。次は殺すぞ?」

「どきません!」


 パメラは毅然とした表情で、シェリアをにらみ返す。


「その程度の力で、私を倒せると思っているのか? 思い上がるなよサルが」


「違います! 力を持つものは、弱い人たちを守るために最後まで戦うべきだと、アイン団長に教わったから!」


「……アインアインって、むかつくんだよ、おまえらぁあああああああ!」


 ゴゥッ……!


 感情に呼応して、シェリアの体から、どす黒い闘気オーラが噴出する。


 常人なら気圧されるだろう。しかし、パメラは一歩もそこからどかなかった。


「死にさらせぇえええええええええ!」


 シェリアは闘気の乗った神速に一撃を、パメラの胴体に向かって振り下ろした。


 ガギィイイイイイイイイイイイン!


「おおっ! アイン君!」

「団長!」


 シェリアの剣を受け止めているのは、少年アインだった。


「アイン……また、貴様かぁああああ!」


 アインは剣を振る。


 攻撃が当たる前に、シェリアは後に下がる。


「団長だ!」「アイン様が来た!」


 地面に転がる近衛騎士たちの顔に、希望の光がともる。


「シェリア……おまえ、何やってるんだよ……? どうして魔族になんてなったんだよ?」


 彼の目は、シェリアの状態を見抜いているようだった。


「ハッ! 決まってるだろ! 貴様を殺して、国王陛下に認めてもらうためだぁ!」


 狂気の笑みを、シェリアが浮かべる。


「見ていてください国王陛下ぁ! あなたのシェリアが! このクソ劣等種のガキをぶっ殺して見せまぁあああす!」


 シェリアは鞘から刀身を抜く。


「勝負だアイン! 我が必殺技で! 貴様を消し飛ばしてやる!」


 大量の闘気が体から吹き出し、シェリアの体に纏う。


「ウルスラ。みんなを安全なところに転移させてくれ」


 一瞬で、周囲にいた人間たちが消える。


「塵芥と化せ! 【天衣無縫】!」


 シェリアは闘気で強化した状態で、絶技を発動させた。


 ゴォオオオオオオオオオ…………!!


 彼女の周囲にある物体が、チリと化してくる。


「闘気で強化した我が神速の剣から繰り出される、広範囲の超攻撃……躱せるものなら躱してみろぉお!」


 攻撃範囲が、どんどんと広がっていく。


「…………」


 アインは回避することなく、剣を手にした状態で、一歩も動いていなかった。


「どうしたアイン!? 我が必殺の剣を前に恐怖で動けぬか! 臆病者のサルめ!」


 ゴォオオオオオ…………!

 シェリアの剣は、天上を削る。


「最強の騎士は私だ! 陛下の騎士は私だけで十分なんだよ! 死ねザコがぁああ!」


 シェリアの剣が、アインに届く寸前。


 彼は闘気を込めて、剣を横に、思い切り振った。


 ズバァアアアアアアアアアアアアアン!


「ぐぁあああああああああ!」


 彼の放った一撃に押され、シェリアは背後に吹っ飛ぶ。


 ドガァアアアアアアアアアアアン!


 謁見の間の壁を突き破り、シェリアは城の外へと吹っ飛ぶ。


 無様に2回3回とバウンドし、地面に転がる。


「な、なんだ? 何が起きたんだ……?」


 呆然とつぶやくシェリアの前に、アインが転移してくる。


「おまえ、強くなった気でいるけど、逆に弱くなっているぞ」


「そっ、そんなわけがあるか! 【天衣無縫】!」


 闘気で強化した必殺技を放つ。


 パリィイイイイイイイイイイイン!


 シェリアの剣は弾かれて、自分の手を離れる。


「ば、バカなバカなどうして!? 神速の剣がなぜ見える!?」


「おまえは確かに強くなった。けど力任せに振ってるだけの雑な剣だ。俺の目には攻撃の隙が、前よりもハッキリと見えてたぞ」


 アインはシェリアを冷たい目で見下ろす。


「おまえ、弱くなったな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 「光の速さを超える」と表現されているので、「空気摩擦で剣は燃えないの?」という疑問と「剣が摩擦に耐えられる代物ならパメラの盾程度は簡単に切り裂ける力量差じゃないの?」という疑問が生まれ…
[気になる点] 魔族になった瞬間に人間のことをサルって呼ぶのはどうかと思う。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ