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11.鑑定士、リベンジマッチする



 魔力量を鍛え、魔法も各種覚えた。


「では実戦といこうかの」


 そう言って、俺はウルスラとともに、死熊デス・ベアのもとへ向かった。


 俺たちは物陰から、こっそりと、様子をうかがう。


 人間を遥かに超える高さ。

 巨人と見まがうほどの太い腕。

 そして何より鋭い爪が特徴的だ。


「…………」


 ごくり、と息をのむ。

 なにせこっちは、初日に手ひどくやられたからな。


 敗北の苦い経験が、どうしても二の足を踏ませてしまう。


「何を緊張しておるのじゃ」


 はぁ、とウルスラが呆れたようにつぶやく。


「確かにおぬしはまだ弱い。だが……前よりは強くなった」


「そりゃ……まあ」


「ムカつくことに貴様は意外と飲み込みが良い。持っている能力を駆使すれば、きちんと勝てるだろう」


「……あんたも褒めることあるんだな」


「うるさい。さっさと倒してこい」


 ゲシッ、とウルスラが俺のケツを蹴る。

 

 相変わらず俺への態度が雑すぎるぜ。

 だが……まあ緊張はほぐれた。


「よし……よぉし、行くぞ!」


 俺は無詠唱で、【火球】を放つ。


 その数は5。


 ボボボボボッ!


 俺の手から放たれた火の玉は、めちゃくちゃな方向に飛んでいった。


 ……そう。

 確かに俺は、尋常ならざる魔力量と、数多くの魔法を鑑定コピーした。


 だが、基本的に俺は鑑定士であって、魔法職ではない。


 つまり、魔法を使った経験に乏しいわけだ。


 ようするに、魔法を使う能力はあれど、それを上手に活用できない。


 ……平たく言えば、魔法を当てるのが下手っぴだった。


「グロァアアアアアアアアア!」


 魔法が壁や床に、狙ってない場所に当たる。


 だが、目くらましにはなったようだ。


「よーい……どん!」


 俺は単眼悪魔グレムリンから鑑定コピーした超加速の能力アビリティを使用する。


 死熊めがけて、一直線に、凄まじい速さで走る。


「グガァアアアアアアア!」


『→2秒後、頭部を狙った爪攻撃』


「【超鑑定】!」


『死熊の頭部を狙った爪攻撃の軌道(S)』


『→』


 突如として、死熊の動きがゆっくりになる。


 大丈夫。

 狙う場所もタイミングも、そして動きも、完璧に見切っている。


 俺はギリギリで死熊の攻撃を回避。


 やつの目が、ゆっくりと、驚愕に見開かれる。


 俺は攻撃をくぐり抜け、死熊の背後を取る。


「これなら当たるだろ!!!」


 俺は至近距離で、【風裂刃】を詠唱破棄して使用。


 びょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


「グゥァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 俺の出した竜巻に飲み込まれ、死熊は独楽のようにグルグルと回る。


 無数の風の刃で、やつの体が切り刻まれる。


「よっしゃ! 喰らえ火球100連!」


 とどめとばかりに、俺は至近距離からの、【火球】を喰らわせる。


 ボボボボボボボボボボッ!!


 俺は魔法職じゃない。

 だから、魔法を当てる腕も、魔法の威力も、さほどではない。


 1発の威力は、普通の魔法職が打つ魔法と比べると、遥かに弱い。


 だがこっちには、魔力量がある。

 手数がある。


 1発で倒しきれないなら、何十何百と攻撃を与えるまでよ!


「グルウァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


『→腹部を狙った連続爪攻撃』


「【超鑑定】!」


 炎に焼かれ、もだえる死熊。

 苦し紛れの攻撃も、精霊の目を持つ俺には効かない。


 攻撃を容易く避け、背後を取り、魔法をぶっ放す。


 後はもう作業だった。

 俺には攻撃が全て見切れる。


 逆に向こうの攻撃は全て外れる。

 そして背後から魔法でチクチク攻撃される。


 一方的ななぶり殺しだった。

 あんなに恐れていた敵が、今では全然怖くない。


 相手が弱体化した?

 いや、違う。

 俺が、強くなったのだ。


 ややあって。

 俺は最後に火球100連を喰らわせると、死熊デス・ベアはその場に倒れ込む。


 やがて、動かなくなった。


「はは……やった……倒せたぞ!」


 勝利の喜びが、じわじわと湧いてくる。


「しゃっ! どうだ!」

「はしゃぐでないわ。まったく、死熊程度倒したところでなんだ? モンスターはまだダンジョンに無数におるぞ」


 ウルスラがため息をついて、俺の隣に来る。


「けどSランクで、あんなに強いモンスターを実力で倒せたんだぜ?」


「だからなんだ。この程度、わしなら火球の一発で消し炭にできた」


 まあ事実そうなんだろうけどさ……。


「ほれ、さっさと死熊から能力を鑑定コピーするがよい。少しは強くなるだろう」


「そ、そうだった!」


 俺は死熊の死体のそばにしゃがみ込み、鑑定を行う。


「【超鑑定】」


死熊デス・ベアの能力(S+)』


『→【金剛力】(S+)』


『→10秒間だけ自身の腕力を超向上させる』


『→【斬鉄】(S+)』


『→武器や爪の切れ味を向上させる。鉄をも切れるようになる』


 ……死熊は2つの能力アビリティを持っていた。


 さすが、強いだけある。


 俺はこれで3つの能力を手にしたことになる。……まあ、手にした後、頭痛で2度も死にかけたが……。


「これで少しは自信がついたか?」


「おうよ」


「そうか。まあ、死熊が倒せたのだ。あとは出くわすモンスターを倒し、能力を鑑定コピーしながら地上を目指すが良い」


「え……? って、ことは?」


 ウルスラがうなずく。


「いちおう、基礎的な訓練はこれで仕舞いじゃ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 詠唱破棄の能力が念じただけで魔法が使える ってことは、火球100連は100回頭の中で念じてるの? で、途中で死熊の動きも鑑定してるって 火球を念じながら鑑定も念じてる感じになるけど す…
[気になる点] 戦闘における2秒という数字ですが……。 最低、超加速が一般的な人間レベルの1.5倍だと仮定して、2秒でおよそ30m走れます。実際はSランクモンスターのアビリティでの超加速なので1.5…
2020/01/09 02:00 退会済み
管理
[気になる点] 秒数がやはりきになるぶっちゃけ、戦闘において2秒とか1秒とかいう単位なのか? 人間の反応速度でさえコンマ何秒って世界ですのでそれ以上のモンスターなら反応速度と初動時間にかかる時間が秒単…
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