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109/244

109.鑑定士、部下を迷宮に連れ実践訓練する



 ウルスラとデートした数日後。


 俺は騎士団【赤の剣】のメンバーたちと、かつてユーリがいた、隠しダンジョンへやってきていた。


『アインよ。ここはクリアしたぞ。なぜまたこのダンジョンへ?』


「団員たちの腕試しだ。どれくらい強くなったのか、実感してもらおうって思って」


 隠しダンジョンのなかを、俺はスタスタ歩く。


「あ、あのぉ、団長……」


 振り返るとそこには、栗色のショートカットにメガネが愛らしい、女騎士がいた。


「どうした、【パメラ】?」


「こ、ここ隠しダンジョンです、よね。Sランクモンスターが、うじゃうじゃいるっていう……ひぃ!」


 泣きそうな顔をしながら、パメラが言う。

 周りの団員たちも、同様に、怯えていた。

「心配すんなって。ここら辺のモンスターなんて、おまえら楽勝で倒せるから」


「で、でもぉ……。隠しダンジョンでの実戦訓練なんて、まだ早いですよぅ~」


「安心しろ。おまえらは強くなった。それに、何かあっても俺がいる」


 団長なんてガラじゃない。

 けど任された以上、俺は部下を守る。


「あ、アイン団長ぅ~♡」


 パメラが頬を赤らめて、潤んだ目で俺を見上げる。


「つーことで、ほら、行ってこい」


 俺はパメラの背中を押す。


「ほえ? だ、団長……いったい……?」


「グロォオァアアアアアアアアアア!」


「ひぃ! で、死熊デス・ベアぁあああ!?」


 そこにいたのは、懐かしの死熊だ。


 Sランクの、巨大な熊モンスターである。


「剣を抜け」

「むむむ無理です死んじゃますぅううううううう!」


 パメラは目をグルグル巻きにして叫ぶ。


「大丈夫。今のおまえならできる」


 彼女は恐る恐る。腰の剣を抜く。


 闘気の付与された剣だ。


 ぶぅん……と刀身が、そして、刀身から腕、体へと闘気が伝わっていく。


「グルアァアアアアアアアアアアア!」


 死熊はパメラめがけて、その巨大な腕を振るった。


「いやぁあああ死んじゃぅううううう!」


 ガギィイイイイイイイイイイイイン!


「いやぁあああああ! ……って、あれ? 生きて……る?」


 死熊の攻撃は弾かれ、その場にもんどり打っていた。


 パメラはもちろん無事だ。


「ど、どうして? わたし、なにもしてないのに?」


「忘れたのか? 改良された闘気武器の効果を」


「そ、そうでした!」


 パメラが剣を見やる。


「その剣には俺の闘気が付与されている。そしてみんなには【闘気オーラ操作】の技能スキルを付与した。剣から体へと闘気が流れるように調整されている」


 俺は付与術士の【技能スキル付与エンチャント】を使って、彼らにスキルを分け与えたのだ。


「ほら、相手はまだ生きてるぞ」


「はい! よぉし! いくぞ! 団長にいいところを、見せてやるんだから!」


 パメラは気合いを入れると、死熊めがけて走り出す。


「たぁ!」


 ズバンッ……!


「グルォアアアアアアアアア!」


 死熊の片腕が、パメラの一撃に乗って、容易く切断される。


 敵は逆の腕で反撃を喰らわせようとする。

 スカッ……!


 パメラはバックステップで、死熊の攻撃を華麗に避けて見せた。


『さすがアインだ。部下たちも闘気による身体強化、なかなか様になってきているではないか』


 その後もパメラは、死熊からの攻撃を避け続ける。


 たまに反撃を喰らうが、体にダメージは喰らってない。


 ややあって。


「とどめよ! せやぁあああああああ!」


 パメラは闘気を剣に集中させ、死熊めがけて、上段斬りを喰らわした。


 ズバァアアアアアアアアアアアアン!


 死熊は縦に切断され、そして絶命した。


「や、やった! やりました、団長ー!」


 笑顔のパメラが、俺に向かって走ってくる。


 正面から、俺をハグした。


 ……で、デカい。


 胸鎧チェスト・プレート越しだから、さすがに柔らかさは伝わってこない。


 が、その乳房の大きさに、俺は気圧される。

 

「すげえ! やるじゃんパメラ!」

「あんなデカい敵を、女の子が倒せるなんて!」


 仲間たちが、パメラの肩を叩く。


 パメラが涙を浮かべながら、俺に近づいてくる。


「わたし……団で一番非力で、弱い、なぜ弱いんだって。シェリアさんにいつも叱られてばかりだったんです」


「そうか。つらかったな」


「けど! 団長のおかげで! Sランクを倒せるほどまでに、成長できました!」


 パメラは涙を拭くと、俺の前で、深々と頭を下げる。


「これも全て、アイン様が団長になってくださったおかげです! ありがとうございました!」


 赤の剣たちは、みな居住まいを正し、いっせいに敬礼する。


「気にすんな。俺はやるべきことやってるだけだ」


「さすが団長!」「ほんとすごいお人だ!」「すてきー!」「団長! 結婚してー!」


 わぁわぁ、と団員たちが歓声を上げる。


「ほらおまえら、気を抜くな。訓練を再開するぞ」


 その後、俺は団員たちとともに、隠しダンジョンをうろつく。


「たぁ!」


 ザシュッ!


「でりゃぁああああ!」


 ズバンッ……!


「おらぁああああああ!」


 ザシュッ……! ズババンッ……!


 出てくるSランクモンスターたちを、闘気で強化された団員たちが、退けていく。


 誰一人として、Sランクに後れを取っているものはいなかった。


 ややあって。


 俺たちは、迷宮主ボス・モンスターがかつていた部屋までやってきた。


「いやぁ、おれたち、めっちゃ強くなってねっ?」


「うん! もうSランクなんて楽勝だよ!」


 全員が笑顔だった。

 来たばかりのときの、怯えた表情はもうない。


 彼らの輝く目からは、確かな自信がうかがえた。


「団長! これなら私たち、魔族にだって通用しますよね!」


 そのときだった。


 ゴゴゴゴッ…………!!!!


「な、なんだ!? 地震か!?」


「あ、あれは!? ご、岩巨人ゴーレム!?」


 現れたのは、かつてこの部屋に住んでいた、迷宮主の岩巨人ゴーレムだ。


 ウルスラ曰く、迷宮主は時間がたてば復活するらしい。


「あれを全員で倒してみろ」


「「「無理無理無理無理!!!」」」


 またみんなが怯えた表情で、岩巨人を見上げる。


「あんなデカいの倒せませんよ!」


 俺は精霊の剣を取り出す。


 体を少し闘気で強化して、岩巨人めがけて、軽く剣を一閃させる。


 ズバァアアアアアアアアアアン!!!!


「う、うそぉ~」「岩巨人が、い、一撃でまっぷたつ?」


 迷宮主が倒されて、消える。


「闘気使えるんだから、おまえらもこれくらいはできないとダメだぞ?」


「「「いや! あなたにしかできませんよぉお!」」」


 団員たちが叫ぶ。


「いやぁ、さすが団長だ。あれを倒すとは!」


「わたしたち、思い上がってました!」


「団長の強さには遠く及んでませんでした!」


 騎士たちが表情を引き締めて、俺を見やる。


「よし、訓練を続けるぞ」


「「「はいっ!」」」

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― 新着の感想 ―
[良い点] >……で、デカい。 先生、体調回復したようでなにより
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