表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/244

101.鑑定士、全滅寸前の騎士団を救出する



 獣人国から帰国し、半月ほどが経過した、ある日のこと。


 千里眼が、敵の襲撃を察知した。


 場所は俺たちの住んでいる国の南部。


 その山中にて。


氷巨象フロスト・マンモス。氷ブレスと長い鼻での強打が特徴。Sランク』


 敵の元へと俺は飛翔する。


「……なんだよ、これ?」


 山の麓にて。


 鎧を着込んだ一団が、倒れている。


 俺は倒れている男のひとりに、世界樹の雫をかけて治療する。


「ありがとう……。我々は王国騎士団。マンモスの討伐に来た」


「どうしてこんな酷いケガを?」


「それは……【シェリア】団長が……そ、そうだ! 仲間たちが山のなかで戦っているんです!」


「どういうことだ?」


「麓で最初戦闘になったのです。しかし激しい戦いに仲間たちは傷つき倒れ……。その後マンモスは逃走。深手を負った我々を置いて、シェリア団長たちは討伐に向かいました」


 怪我人を放置して、敵の討伐を優先したのか。


「ユーリ。急いで治療する。手伝ってくれ」


 金髪美少女ユーリが顕現。

 世界樹の雫で、まずは麓の団員たちの治癒を行う。


 その後俺は飛翔能力を使い、戦闘現場へと急行。


 ややあって、白い巨大なマンモスと、それと戦う騎士団の姿があった。


「寝るな! 貴様ら! まだ敵は生きているぞ! 命を捨てて特攻せよ!」


 ひときわ威勢の良い女がいた。


 鎧を着込み、長い髪。

 気の強そうな目つき。


『あれが団長【シェリア】のようじゃ。Aランク。希少職レア・クラス聖騎士パラディンじゃ』


 シェリア以外はほぼ死にかけ。


 だというのに、あの女はマンモスに特攻をかけようとしてるのか。


 マンモスが長い鼻をのけぞらし、氷のブレスを放つ。


 俺はマンモスの前に立ち、結界を張り防いだ。


「なんだ貴様! 一般人はどいていろ!」


 シェリアは俺の腕をひっぱり、地面に放り投げる。


「いつまで寝てる! 起きろ!」


 倒れ伏す部下の腕を、シェリアが無理やり起こそうとする。


 俺は立ち上がって、シェリアの肩を掴む。


「おいやめろよ。無理させるなよ」


「黙れぇ!」


 バシッ! とシェリアが乱暴に腕を払う。


「もういい! 貴様らはどけ! 私が倒す!」


『アインよ。あの女マンモスにつっこむつもりじゃ。鼻で弾かれ、頭部を強打し死亡するぞ』


「だぁああああああああああ!」


 シェリアが真正面から、マンモスに斬ってかかる。


 マンモスが長い鼻を持ち上げて、シェリアに向かって振り下ろした。


 ボシュッ……!


 俺は虚無の邪眼を発動。

 マンモスの鼻をまるごと吹き飛ばした。


 スカッ……!


 シェリアの剣が空を切り、そのまま彼女は、雪に顔から突っ込む。


「ぶべっ……!」


 俺はシェリアの脇を歩き、マンモスの前までやってくる。


 マンモスがその巨大な前足を振り上げて、俺を踏み潰そうとする。


 俺は闘気で身体能力を強化。


 パシッ……!


「軽いな」

 

 マンモスの巨体を、片手で押さえる。

 逆側の手に、精霊の剣を出現させる。


 剣を軽く、マンモスの体めがけて振った。


 ズバンッ……!


 今の一撃で、マンモスは死亡。


 俺は剣を消して、団員たちのもとへ急ぐ。


「大丈夫か?」


「お、おれたちは大丈夫だ。けど……死んだ仲間たちが何人も……」


 あちこちに、頭を潰されたり、体がぐちゃぐちゃになった団員たちが見受けられた。


「大丈夫だ。問題ない」


 俺は死亡した団員のもとへと向かう。


 そのときだ。


「おい貴様! なにをやってる!」


 ガシッ! と俺の肩を誰かが掴んだ。


「……なんだ?」


 振り返ると、騎士団長のシェリアがいた。


「私の部下になにをするつもりだ!? 事と次第ではたたっ切るぞ!」


 ちゃきっ、とシェリアが剣を構えて、俺をにらみ付ける。


「別に、この人たちを蘇生させるだけだ。邪魔しないでくれ」


「蘇生だと!? そんな技術、この世界にはない!」


「そりゃおまえが知らないだけだろ。良いから放っといてくれ。邪魔だ」


 すると……。


『アインよ。シェリアに攻撃されるぞ』


 ハァ……と俺はため息をつく。


 俺は片手で治療しながら、空いている手の方で、シェリアの剣を弾いた。


 パリィイイイイイイイイイイイン!


 弾かれた剣は宙を舞い、地面に突き刺さる。


「う、嘘だ……我が必殺の剣を、見向きもせずパリィするだと……?」


「もうちょっとおまえ黙ってろ」


 俺はシェリアの肩に手を置く。

【昏倒】の能力アビリティを発動。


「くっ……」


 シェリアはその場に崩れ落ち、寝息を立てる。


「あ、あの……団長はどうなったのですか……? まさか……死んで……?」


「ねむってるだけだ。それより、蘇生だ」


 俺は重傷を負っている騎士団員たちに、【完全再生パーフェクト・リバース】を使用。


 みるみるうちに、体が元通りになり、死んだ人間がよみがえる。


「奇跡だ!」「生きてる! おれ生きてるぞ!」


 団員たちは皆元気になった。


「も、もしやあなたは! レーシックの英雄! 古竜殺し【アイン・レーシック】様では!?」


 団員の一人が、俺に気付く。


 まあ城に出入りしているからな、顔が知られていても不思議じゃない。


「アイン様が助けてくださった!」

「さすが古竜殺し!」

「ありがとうござます! ありがとうござます!」


 元気になった団員たちが、皆俺に頭を下げてくる。


 良かった……と安心した、そのときだ。


「貴様らぁ! 何をしてるーーー!」


 振り返ると、シェリアが目を覚ましていた。


 怒りの表情を浮かべて、俺たちをにらんでいた。


「団長! 目が覚めたのですね!」


 部下の一人が、シェリアのもとへと駆け寄る。


「この愚か者がぁ!」


 バギィッ……!


 ズシャアッ……!


 シェリアに殴られた団員が、その場に崩れ落ちる。


 彼女がすごい形相で、俺をにらんでくる。


「素性の怪しい者の言葉を容易く信じ、あまつさえ感謝するだと? 恥を知れ! それでも王国を守る騎士か貴様らぁ!」


 シェリアに叱責され、団員たちの表情が暗くなる。


「おいあんた……いい加減にしろよ。あんたを心配して声をかけてくれたのに、なんだよその態度は」


「黙れ! 魔族め!」


 シェリアが、地面に突き刺さっていた自分の剣を手に取る。


「だ、団長! 違います! その方は味方です!」


「こんな強いやつが魔族でなくてなんだというのだ!? 人間ではなかろうが! そんなこともわからぬか馬鹿者どもめ!」


 俺はなんだか腹が立った。


 だがまあ、どうでも良かった。


「じゃあ、俺はこれで」


「貴様! 逃げるのか!? 正々堂々勝負をしろ!」


 シェリアが俺に斬りかかってくる。


 俺は剣の軌道を鑑定で見切り、指でつまんで、そして闘気を込めて力を入れた。


 パキィイイイイイイイイイイイン!


「ば、ばかな……あの一撃を指で受け止め、くだいただと……」


 呆然とするシェリアを無視し、俺はその場から離れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] こういう奴が、 相手がどうやっても勝てない強い男だとわかるとチョロインと化すのは定石だよなぁ 下の人と同じく、勘弁してほしいわwそのワンパターン でもクソエルフもチョロインだったので…
[一言] テンプレ噛ませ犬、挙句チョロインだったら目も当てられん。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ