約束
読んでいただきありがとうございます!
少しずつ、恋が進んでいますが
まだまだ初心な2人です。
エディは小声で話す。
「おい。誘ったか?」
「い、いや、まだだ。」
エディは頭を横にふった。
「そんな事だろうと思った。」
「これから誘おうと思ってたんだ。」
トーマスはエディを睨みつける。
「きっと何時間経っても言えないだろ。」
「なっ!!!」
トーマスは立ち上がりそうになった。
ちょうどその時ユリアが紅茶を持ってキッチンから出てきた。
「俺が援護してやる。」
エディがトーマスに目配せした。
「お待たせしました。トーマス様と同じ紅茶で良かったですか?」
「もちろん!ありがとう!」
エディは紅茶を一口飲むと
あたかも思い出したかのように話し出した。
「そうだ、トーマス。今度の恩賞式の後のパレード、家族用の席があるけどお前は誰か呼ぶのか?」
「え?何が?」
急に訳の分からない事を言われたトーマスは
ぽけーっとしている。
その時、テーブルの下でエディがトーマスの足を蹴った。
馬鹿!お前!話合わせろ!
エディがトーマスに目配せする。
「ほら、パレードの席だよ。お前のご両親は領地が遠いから来れないよな?な?」
「あ、ああ。そうなんだよ。」
「俺の妹がさ、見に来るんだけど。1人じゃ寂しいって言うんだよ。誰か一緒に行ってくれる優しい人いないかな?ほら、パレードって言ったら晴れの舞台だからな!誰かいないかなー。」
エディはチラッとユリアを見る。
ユリアはこちらこそ見ていないが
この話に興味しんしんという感じだ。
エディはトーマスにあごで合図する。
ほら!今だよ!今!なう!
トーマスはハッとしてユリアの方を見た。
「あ、あの。ユリアさん。」
トーマスに話しかけられたユリアはビクっとして
こちらを向いた。
「あ、はい!」
「あの、もし宜しければ……宜しければなんですが……今度、ドラゴン征伐のパレードがありまして。」
「そうなんですか、パレードがあるんですか。」
「こいつの妹君が、パレードに来るのですが…もし宜しければ一緒に行ってあげてはくれないでしょうか。」
「え!私がですか?」
ユリアは咄嗟に行きたい!と思った。
パレードでは、正装した騎士団がパレードする。
もちろんトーマスもだ。
とっても見たい……
とりあえず一呼吸とおいてユリアは落ち着く。
「私なんかでよいのでしょうか?その方の話し相手には役不足では……。」
そこまで言った時、エディが話に入ってきた。
「いやー、貴方にお願いできるならもう安心ですよ!トーマスから貴方の事は聞いております!とてもいい方だとか!是非!お願いしたい!」
エディは畳みかけに入った。
その勢いに押され気味ではあったがユリアが承諾してくれる。
「では、パレードは来週ですので!お席はこちらでご用意しておきますから!なっ!トーマス!」
「あ、はい!ご用意しておきますのでお任せください。」
「よかった、よかったー。」
エディは満面の笑顔でトーマスを見る。
「では、私はこれで!」
帰り際、エディはトーマスにだけ聞こえる声で言った。
「お前はしばらく居ろ。わかったな!」
エディは早足で帰って行った。
ユリアはその日いつもより閉店時間を早めた。
1人で切り盛りしている為、元々他のお店より閉店は早い。
トーマスが早く来てくれたのでという理由にしたが、本当はパレードに来ていく服を考えなくては!と焦っているからだ。
「トーマス様、戸締りできました。ありがとうございます。」
ユリアはトーマスとドアの前で向かい合う。
といきなり、トーマスがユリアの手を握った。
「ユリアさん、パレードお待ちしています。では明日!」
握られていた時間はほんの一瞬だったが
その瞬間は手に体中の神経が集まったのでは?と思うくらいだった。
気づいた時は、もうトーマスは走り始めようとしていた。
「お、お気をつけて!……」
精一杯声を出してトーマスに呼びかける。
でも、驚きのあまり声が震えて上手く出せない。
それでも、かろうじてトーマスに聞こえたらしく
トーマスはペコっとお辞儀をし手を握って走って行った。
トーマスが角を曲がるのを見届けた後、ドアの鍵を閉めたユリアはヘナヘナとその場に座り込んだ。
さっき、トーマスに握られた両手を見つめる。
どうしよう!トーマス様に!
両手を胸に押し当てて、喜びを噛みしめる。
その後しばらくその場で
ニヤニヤしたり、きゃー!と奇声をあげたり
足をバタバタさせたユリアであった。
三連休は
台風で出かけていないので
ドンドン書いて行きたいと思います。
誤字脱字に注意していますが
長ーい目で見ていただけると嬉しいです。