おはようございます
読んでいただきありがとうございます!
第7話です!
トーマスの朝は早い。
夜明けとともに起き、朝の走り込み。
この朝の走り込みは、トーマスが子供の頃騎士団を目指した頃から行なっているルーティンである。
清々しい朝の空気を吸いながら朝の街へ出て行く。
街の中をパトロールしながらぐるりと大きく1周。
2時間ほど走り込みを今日も行う。
今日は最後に立ち寄る所がある。
ユリアの魔法カフェだ。
カフェはまだしんとしている。
ユリアはまだ起きていないかもしれない。
カフェの周りに怪しい人物はいないか
危険なものが散乱していないか
トーマスは走りながらチェックする。
「よし、大丈夫だな。」
トーマスがお城に帰ろうかと思った時
カフェの扉が開いた。
ユリアは外の壁に手を当てて
何やら呟いていた。
「ユリアさん、おはようございます!」
トーマスが声をかけるとユリアはビクッとして
振り返る。
「トーマス様!お、おはようございます。」
見るとユリアは壁に手をついたままだ。
「今日はよいお天気ですね!ユリアさん、壁に手をつかれてどうしたのですか?」
一瞬、ユリアはハッとなり
壁から手を離した。
「いえ、なんでもありませんよ。あははは」
トーマスは、「そうですか!」と言うと
また笑顔で走っていった。
「では、また夜に!」
また夜に来るつもりなんだ……
と思いながらトーマスを見送った。
トーマスを見送った後、カフェの中に戻ったユリアは
はぁ〜っとため息をついた。
「トーマス様には会いたいけど、魔法を使っている姿を見られるのはまずいなぁ。」
ユリアがそう思うのには訳がある。
母が生きている頃、いつも言われていたのだ。
「ユリア。魔法力が強い事をあまり知られてはダメよ。みんなの前ではあまり魔法は使わないように。」
小さい頃からそう言われて育ったユリア。
何故、知られてはいけないのかは分からなかったが
おそらくこの強い魔法力のせい。
魔法力が強いと何かと面倒ごとに巻き込まれる可能性がある。
そもそも、庶民でユリアほどの魔法力がある人間は
そうはいない。
目立つ事も嫌いだったので、ユリアはこのカフェに必要な魔法以外は極力使わないで生きている。
「うん、トーマス様の前では気をつけよう!」
ユリアの中で、この魔法力を知られてはいけないと
心が言っていた。
それから、毎日朝と夜。
トーマスは走り込みの合間に、ユリアの元を訪ねるようになった。
夜は戸締りまでしっかりと確認して帰って行く。
ユリアは何度か大丈夫だからと断ったが
トーマスは頑として譲らない。
トーマス曰く
「若い女性が1人など、騎士として放っておけません!」
最初は遠慮していたユリアだが
最近はトーマスが来るのを楽しみにしている。
朝、トーマスが来た時にお礼に新作のクッキーやケーキなどをお土産に渡していているのである。
トーマスは次に来た時にその感想を言ってくれたりするので、今はそれが毎日の日課になっている。
今日もトーマスは、ユリアから貰ったクッキーを手に宿舎へと帰ってきた。
ふと見るとドアの前に、エディが立っていた。
「お!帰ったな!」
「ああ。」
トーマスは部屋の中に入ったが
当たり前のようにエディも後ろについて入ってきた。
エディは、トーマスの手に持たれている
なんとも似合わない可愛らしい包みを見る。
「トーマス、それなんだ?」
「それとは?」
「お前が最近走り込みから帰る時、いつも持ってるその可愛らしい包みだよ!」
やばい………
トーマスはそっと包みを後ろに隠した。
エディはにやぁっと笑い、その包みをヒョイと奪った。
「お、おい!やめろ!それは大切なんだ!」
トーマスは包みを取り返そうと必死だ。
「本当にやめろ!あ!それは!ユリアさんが俺に!」
「ん?ユリアさん?」
「あ。」
エディは後退りしながら聞く。
「で?そのユリアさんってのは?お前の彼女なのか?」
「彼女?彼女じゃない!まだ彼女じゃないぞ!」
トーマスは顔を真っ赤にしている。
「ふーん……この包みを返して欲しかったら、詳しく聞かせてもらおうかな。」
エディは包みをひらひらと見せ、ニッコリ笑った。
次回も、頑張ります!