突然の訪問
アトリエで、先日の騎士団での治癒魔法入りの食事の報告書をコートが読んでいた。
「うーん、なかなかの出来だね。」
「本当ですか!」
コートは報告書をユリアに見せながら言う。
「この団員は、風邪気味だったが次の日はケロっと治っているね。あと、こっちは最近古傷が痛んでいたけど夜ぐっすり寝たら痛みが取れてたそうだ。」
コートがよしよしと頷いた。
「ユリアちゃんはやっぱり回復魔法や治癒魔法が得意なようだね。お母さんと同じだよ。」
「お母さんと同じですか?何だか…嬉しいな。」
「治癒魔法に関してはまだまだ経験が必要だけど、これから使っていけばもっと質のいい治癒魔法が使えるようになるさ。」
「はい!頑張ります!」
ユリアの魔法の訓練も終盤に入ってきた。
これまで、コートによる訓練で白の力の使い方がかなり上達したユリア。
白の魔法使いに必要な最初のスキルはだいたい身につけた。
「さて、残るは穢れを払う魔法だ。」
「穢れ……。」
「ああ、そうだ。これが白の魔法使いとして1番重要な魔法だよ。山に入って最後の仕上げだ。明日から1週間ほど街の外に出るから、その支度をしておいで。」
「1週間ですか!」
「そうだよ。明日はここから山に出発するから、いつもより早めにおいで。」
「わかりました!」
ユリアは家路につきながら考えていた。
明日から1週間か……。
トーマス様ともまたしばらくは会えないなぁ。
そうだ。明日からしばらく街を離れる事を知らせておかなきゃ!
ユリアはクルッと歩く向きを変えて
家とは反対方向の王宮を目指した。
王宮に到着したユリアは門番に騎士団の訓練場に行く事を告げる。
ちょうど先日の治癒魔法入りの夕食を作った日と同じ門番だったので、通る事ができた。
庭園を抜けて、騎士団の建物を目指す。
「この時間はトーマス様は訓練場かな?」
ユリアが訓練場を覗くと数人の団員が訓練をしていた。
「あ!ユリア様!」
その中の1人がこちらに駆け寄る。
見ると先日の夕食作りを手伝ってくれた若い団員だった。
「あ、こんにちは。突然申し訳ありません。あの……」
「トーマス団長殿にご用ですか?」
「あ、はい。」
「団長殿は今宿舎の部屋にいらっしゃるかと。」
「そうなんですか。お会いするのは可能ですか?」
「もちろんです!ユリア様は婚約者でいらっしゃいますから!」
いや、まだ婚約者とかそういうのでは……
と思ったが、否定するのはやっぱり辞めておいた。
「今、ご案内しますのでどうぞ!」
「ありがとうございます。」
宿舎の中を歩くと、すれ違う団員達に声をかけられた。
「女神様!こんにちは!」
「先日はありがとうございました!」
「また作ってください!」
沢山の団員がお礼の言葉を言ってくれた。
ユリアは少し照れながら、宿舎の廊下を歩く。
すると途中で、エバン総長と出会った。
「おお!ユリアちゃんじゃないか!」
「エバン様、こんにちは。先日は大変お世話になりました。」
「こちらこそ、美味しい食事をありがとう!みんな喜んでいたよ!今日はどうしたのかな?あ、トーマスに会いに来たのかい?」
「あ、はい。実は明日から1週間ほど魔法の勉強で街を離れる事になりまして。それできちんとお話しておかないとと思ったんですが。いきなり押しかけて申し訳ありません。」
エバンは豪快に笑った。
「ここは男所帯だから、あまり女性が来てくれなくてねぇ。これからたまにおいでよ!大歓迎だよ!」
「ありがとうございます。でもトーマス様にお会いしたらすぐ帰りますので。」
「まぁ、そんなこと言わずにゆっくりして行きなさい。ほら、トーマスの部屋はこの1番奥だから。」
エバンはそう言って1つのドアを指さした。




