冷たいトーマス
読んでいただきましてありがとうございます!
第6話です!
次回からは、恋を発展させたいなと
思いながら書きました。
トーマスはカフェを出た後、お城までの距離をほぼ全力疾走で走り続けた。
何故かユリアのご飯を食べた後は、ものすごくパワーがある。
「これは魔法なのか……?」
走りながらトーマスは呟いた。
そのまま、宿舎の部屋に帰ったトーマスは
支度を整え訓練場まで急ぐ。
騎士団に入った時から、毎日の自主練だけは欠かさない。それがトーマスだ。
訓練場に着くと、すぐエディが駆け寄った。
「トーマス!どこ行ってたんだ!話があるんだよ!聞いてくれよ!」
「話?なんだ。」
訓練の支度をしながらエディの話を聞く。
事の次第を身振り手振りを加え話すエディ。
「トーマス!俺はどうしたらいいのかな。」
「そうだな……自業自得だな。観念して結婚したらどうだ。」
「お、お、おい!冷たいじゃないか!なんだよ!」
「天罰が下ると言っただろ。男だろ自分でなんとかしろ。俺は忙しい。」
エディは、その場に座り込んだ。
その夜、トーマスの部屋を訪れたエディは
涙ながらに領地に帰りたくない。
騎士団にいたいと話した。
「本当にどうしたらいいのかな。」
「昼間も言っただろ、観念して結婚したらどうだ。」
「おいおい!簡単に言うなよ。」
「じゃあ、故郷に帰ってその幼なじみと婚約しろ。」
「どっちにしても結婚させられる……」
頭を抱えるエディ。
そんなエディとは対照的に
ハッと明るい顔のトーマスが話し出した。
「エディ。お前にちょっと聞きたい方があるんだった。」
「ん?」
「その……、女性が喜ぶ話題というのは…どういうものなんだ?」
ガタンッ!
エディは驚きのあまり椅子から落ちた。
「お、お、お、おい!!トーマス!どうした!」
「何がだ。」
「お前、女性と話すのか……?」
「悪いか……」
エディが2.、3歩後ずさる。
「おい、大変だ!トーマス!大変だよ!」
「だから、何がだ。」
「お前!ついに!ついに!男になったのかー!」
そう言って、トーマスに抱きつくエディ。
「離せ。なんだよ。」
「この、このー!何だよ、相手はどんな子だ?聞かせてみろよ!」
「うるさい。」
「照れちゃってー。」
「それ以上言うな。殴るぞ。」
「顔だけはやめてくれ。」
そう言いながら、エディはさっきとは打って変わって嬉しそうにトーマスに抱きついてきた。
抱きつくエディを剥がしながら、窓から月を眺める。
ユリア・エスターク……トーマスは心の中でその名前を何度も繰り返す。
自分には一生縁のないと思っていた
この淡い想いが確実に自分の中にある事をトーマスは感じていた。
この想いを伝えようなどとは思ってはいないが
あの人の笑顔がいつも側にあったらどんなに幸せだろうか。
想いを伝えたとして、もし迷惑だと思われたら?
それを考えると怖くなる。
だから、今はこの想いは閉まっておこう。
それが1番だ。
「おい、何1人で百面相してるんだ?」
「うるさい。」
トーマスはまた月を見上げた。
その頃、1日を終えたユリアも
自宅の窓から月を見ていた。
明日来ます!と言ったトーマスの事を思い出す。
まだトーマスと出会って間もないが
トーマスの人柄はよく分かる。
それに美味しそうにご飯を食べている姿は
見ているだけで笑顔になる。
沢山食べてくれる人は大好きだ。
ユリアは昔、母が言っていた事を思い出す。
幸せそうに食べる人に悪い人はいない。
「そうね、悪い人ではないわよね。」
ユリアは自分に確かめるように呟く。
母が生きていた頃、1度だけ父親の事を聞いたことがあった。
物心ついた時から、母と2人暮らしだったユリアだが
やはり父親の事が気になっていた。
子供心に聞いてはいけないかも?と思ったが
意を決して母に聞いてみた。
すると母は、こう言った。
「あなたのお父様はね、とても笑顔が可愛らしい人だったのよ。みんなから慕われる人だったし。」
「お母さんは、お父さんのどこが好きだった?」
母は少し考えて言った。
「美味しそうにご飯を食べる所かな!男の人の胃袋を掴みなさい、ユリア!」
そう言って私を抱きしめてくれた。
抱きしめた母の顔は私からは見えなかったが、うっすら涙が出て浮かんでいたのを私は知らなかった。
恋を知らないユリアではあるが、トーマスが自分に取って特別になりつつあるのは流石に気付いている。
もし、これが恋だとしてもどうすればいいのかな?
それに私とトーマス様じゃ身分も違いすぎるしね。
上手く行きっこない。
トーマス様の優しさに勘違いしてはいけない。
あの人は騎士様なんだから。
もし、この気持ちが本当の恋だとしても
その事は言わずにいよう。
同じ月を見上げる2人が同時にため息をついたのを知っているのは月だけだった。
ブックマークしてくださっている方がいて
驚きました!
本当に嬉しいです!
次回も頑張りまーす!