エディの悩み
第5話です!
トーマスは基本走ってますね。
書いていて思いました。
でも、ちょっと抜けてるイケメンって
可愛くて好きです♡
お城にある騎士団の宿舎に響く足音。
その足はトーマスの部屋の前で止まる。
ドンドンドン!
ノックをするが中から返事はない。
「あれー?おかしいな。」
ドンドンドン!ドンドンドン!
再度ノックしてみる。
「トーマス!いないのか?エディだ!おーい、トーマスー!」
エディはドア越しに声をかけたが、やはり居ないようだ。
「あれ?」
第2騎士団長のエディ・ブレンダーは、悪友のトーマスを先程から探していた。
エディやトーマスはドラゴン征伐の恩賞で今日から3日間の休暇が与えられたのだが、そんな休みでも訓練を欠かさないトーマスがどこを探しても居ないのだ。
「おかしいな…あいつどこ行ったんだ。」
エディがトーマスの部屋を訪れたのは
ちょっと困った事になったからだ。
エディには最近口説いていた女性がいた。
本気でか?と聞かれたら、ちょっと言葉に詰まるくらいの気持ちで。
エディは女性を口説く過程が好きだ。
そして、口説き落とした後の蜜月をしばらく過ごすとまた違う女性を口説き始める。
その繰り返しだった。
以前、トーマスに言われた事がある。
「おまえ、そんな事して楽しいのか?ふしだらな奴め!天罰がくだるぞ!」
エディはその容姿から、女性に困らない。
放っておいても寄ってくる。
来るもの拒まず、去るもの追わず、追って来るものから逃げる。
そんなこんなで、のらりくらりやって来たが
今回は少々面倒くさい事になった。
社交界で知り合ったとある令嬢と仲良くなり
デートを重ねていた。
何を思ったかその令嬢、自分の両親にエディ・ブレンダーと婚約したと話してしまったらしく、心配した令嬢の両親からエディの両親に連絡が行った。
もちろん、エディは婚約したおぼえはない。
婚約とか結婚とかそういう言葉も令嬢の前で話した事もない……と思う。
エディからしてみれば、お相手の令嬢が勝手に言っている事だがそこは貴族同士の話。
様々な面倒な貴族間の問題に発展しかねないと
エディのご両親はご立腹である。
先ほど、エディの両親から早馬で連絡があり
騎士団を辞めて領地に帰ってこい。
こちらの決めた相手と結婚しろ!と。
「天罰かも……」
エディは天を仰いだ。
その頃、魔法カフェでは
ユリアとトーマスのなんとも言えない
気まずい空気がまだ漂っていたが
それでもちょっとずつ会話になっていた。
「あ、あの。このお店はお一人で?」
「はい。昔、母がこのお店を始めたんですがその母が亡くなってからは私1人です。」
「そうなんですが。いや、変な事を聞いて申し訳ありません。」
「あ、いいえ!もうずいぶん前の事ですので、お気になさらず。」
トーマスは店の中を見渡す。
小さいながらも可愛らしく飾られた店内。
掃除も行き届いていて清々しいお店。
ふと、トーマスは気になった。
ここに1人で暮らしているのだろうか?
「あ、あの。つかぬ事をお聞きしますが……」
「はい、なんですか?」
「あ、あの。お一人でお住まいに?」
「え?」
思いもよらない言葉にユリアはすっとんきょうな声を出してしまった。
「あ!いや!変な意味ではなく!や、いや、ちが!違うんです!いや、本当!変な意味とかでなはく!」
その慌てようを見て、ユリアはクスッと笑ってしまった。
「大丈夫です(笑)わかっています。」
「あ、あ、はい。す、すみません。」
「私はこのお店の上に1人で住んでますよ。」
ユリアは上を指差して言った。
「え!1人でですか!そんな危険ではないですか!」
「あ、いや。それは大丈夫ですから。」
ユリアは、結界魔法を使えるので危険な事は全くないのだが、その事はトーマスには言わないでおこう。
全然大丈夫と言っても、トーマスは何やら考え込んでいて聞いていない。
あー、参ったなぁ。
トーマス様聞いてないよ……
すると、突然席を立ったトーマスに驚くユリア。
「あ、あの!ご安心ください!これから私がお守りしますから!」
とガッツポーズを作る。
え?どういう事?
突然の事について行けないユリア。
「女性が1人でお住まいとは。私は騎士ですのでお任せください!では!今日はこれで!」
トーマスは、ドアに手をかけると
勢いよくこちらに振り返った。
「あ!あの!お、お名前をお聞きしても……よろしいでしょうか。」
「あ、はい。ユリアです。ユリア・エスタークと申します。ユリアとお呼びください。」
「ユリアさん……では!また明日!」
そう言ってトーマスはまた勢いよく帰って行った。
ユリアは外に出て走るトーマスを見送る。
トーマスはあっという間に見えなくなっていた。
守るって言っていたけど、どうやって守るのかしら?
また明日って……明日来てくれるって事よね?
うん、トーマス様の前ではあまり強力な魔法は使わないようにしよう。
また明日もトーマスに会えるんだと思うと嬉しかった。
ユリアは見えなくなったトーマスが走って行った方をしばらく見つめていた。
台風が落ち着いて来ました。
早く通り過ぎてくれる事を祈ります。
今日は寝れそうにないので
もう1話ぐらい書こうと思います。