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恋を知らない2人

第4話書き上げました。



トーマス、魔法カフェに

2回目の来店です。






カランカランカラン♩


店のドアが開いた。

店内にいた4人の視線がドアに向く。


そこにはトーマスが立っていた。

季節は秋だと言うのに、大汗をかいている。


ユリアは一瞬トーマスを見て動きが止まったが

ハッとすぐ我に帰り笑顔になる。


「いらっしゃいませ!」


その言葉に安心したトーマスは

ちょっと照れながら言った。


「あ、あのこんにちは。また来ました。」


視線を感じたトーマスが店内を見ると

3人のお客さんがこちらを見ている。


トーマスはペコっと頭を下げて

カウンターの椅子に座った。


「さて、それではワシはそろそろ帰ろうかな。」

ジュライおじいちゃんが席を立つ。


ジュライおじいちゃんを見たトーマスは

ガタン!と席を立った。


「こ、これは!ご無沙汰しております!」


「ほっほっほっ。ああ、久しぶりだなトーマス君。」


2人は顔見知りのようだ。


「あれ?お二人は知り合いだったんですか?」


ユリアが聞くと、ジュライは誰にも分からないようにトーマスに少し目配せをした。


「ああ、何。こちらのトーマス君のお爺さんとな昔仲良くしていたんじゃよ。なぁ、トーマス君。」


「あ、は、はい。」


「では、わしはこれでな。ユリアちゃんまた来るよ。」


ジュライおじいちゃんが帰った後

八百屋のおばさんも仕立て屋のおばあちゃんも

いそいそと帰って言った。




「トーマス様。また来ていただけて嬉しいです。今日は何か召し上がりますか?」


ユリアはテーブルを片付けながらトーマスに微笑んだ。


「あ、はい!今日も何か食べるものを!先日のビーフシチューがものすごく美味しくて!」


トーマスは緊張の面持ちでユリアに言う。


「今日はビーフシチューはないんですが、その代わりじゃがいものキッシュとキャロットラペがありますよ?いかがですか?」


「はい!では、それを。」


「わかりました!少しお待ちくださいね。」


ユリアは小走りでキッチンへと入っていった。

自分では気づいていないが満面の笑顔になりながら。






トーマスは、緊張していた。

もう涼しい季節になっているのに汗が止まらない。


この何日か、思い出すのはあの天使のことばかり。


これは恋なのか?と思ったりもしたが

トーマスは今まで恋というものをした事がないのでよく分からない。

でも、この胸のドキドキはおそらく世に言う恋なのだろうと思った。


公爵家に生まれたトーマスは、小さな頃から騎士を目指していた。

長男ともなれば家を継ぐ事が決まってるいるが、次男の自分には何ができるか……。

騎士団という存在を知った時、これだ!と思った。


それからと言うもの、トーマスは騎士団に入る為剣や体術の訓練に精を出した。

騎士団に入って騎士団長まで出世したが、自分には他に取り柄もない。

その為、遊びや恋などとは無縁の生活を今も続けている。


そんな自分に訪れた予想もしない出会い。


女性と話す事が苦手なトーマスではあるが、勇気を振り絞って天使に会いに来た。

それだけでも大進歩というものだ。


今日こそは名前を聞くぞ。


心に決めているトーマスである。






キッチンでキャロットラペに混ぜるアーモンドを砕きながらユリアは鼻歌を歌っていた。


トーマスがまた来てくれて嬉しい。


ユリアは素直に思った。


じゃがいものキッシュキャロットラペをトレーに乗せてちょっとだけ回復魔法を込める。


ユリアは、物心ついた時には既に母親と2人でこの家に住んでいた。

母とカフェで過ごす事が多く、それが楽しかった。


同年代の女の子が盛り上がるイケメンの話題というものは、この魔法カフェには存在しないがイケメンが嫌いなわけではない。

恋もしてみたいと思った事もある。

しかし、母親が亡くなりそんな事を言っている暇もなくこの店を継いだ。


恋とはどういうものなのか?


ユリアは気づかないうちにその恋を体験しているのを知るのは少し後の事である。




トーマスはユリアお手製のじゃがいものキッシュとキャロットラペを頬張る。


なんて美味しいんだ……。


ふと見ると、ユリアが微笑みながらこちらを見ているのに気づいた。

思わず、喉が詰まりそうになったがどうにか堪えて飲み込む。


何か話さなきゃだめだ。

でも、何を話したら?

あー、クソ!こんな事ならエディに女性が喜ぶと話題とか聞いときゃよかった!


トーマスはない経験を掘り起こしながら

ユリアに意を決して話しかけた。


「あ、あの。先日もそうですが、今日の料理も本当に美味しいです!」


「ありがとうございます!お口に合ってよかったです!」


ユリアの満面の笑みに一瞬クラッとするトーマス。


ううっ。なんて可愛い笑顔だ。


「そう言えば、トーマス様はこの間は体調が良くなかったみたいですけど大丈夫だったのですか?」


「へ?体調?」


トーマスは自慢じゃないが、風邪ひとつ引かない丈夫な体が自慢だ。

ここ最近、体調崩した事ないしな……などと考えていると、あ!と思い出した。


「あー!あの日はお腹が空いてまして……その前の日から何も食べずに城へ帰ったものですから。」


「お腹が空いてたんですか!」


「あ、はい。僕は食べるのが大好きなんですが仕事中はそれを忘れてしまう癖があって…お恥ずかしい。」


トーマスは頭を掻きながら笑った。


その仕草に思わず


「可愛いですね!」


ユリアの何気ない一言に、トーマスは目を丸くした。


ん?

もしかして、今私可愛いとか言っちゃった?

うそ!どうしよう!どうしよう!

騎士団長様に可愛いとか言っちゃった!

私ったら、バカバカ!



「…………」


「…………」


「す、すみません。可愛いなんて失礼な…こと。」


「あ、い、いえ。………」




その後、しばらく沈黙が続いたのは言うまでもない。





みなさん、台風お気をつけくださいね!


お家に篭るので

その間に沢山書きたいと思います。

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