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プロポーズ

トーマスからのプロポーズ。

ユリアは黙ったままトーマスを見つめる。


以前は、ユリアが何も言わなくて心配していたトーマスだったが今回はニッコリ微笑みながらユリアの言葉を待った。


ユリアもまた、トーマスの顔を見つめてニッコリ微笑んでいた。


「トーマス様。」


「はい。」


「こんな私ですが、どうぞよろしくお願いします。」


トーマスはユリアの隣に座り、ユリアの身体を抱きしめた。

そして、ユリアの頬を撫でて微笑む。


「ユリアさん。2日後の王様との謁見が終わったら、僕の両親に会っていただけますか?」


「ご両親に!も、もちろん!」


「そんな緊張しなくても大丈夫。ユリアさんの事は手紙で知らせてあります。」


「え!そうなんですか?」


「ええ。だから、大丈夫です。」


「は、はい。」


トーマスは緊張しているユリアの頬を掌で押さえて、チュっとキスをした。


「大丈夫です。僕がいるから。」


「は、はい…。」


ユリアは内心ハラハラしていた。

トーマスは公爵家の次男である。

本家を継がない次男といえども、公爵ほどの家柄であれば分家などを立ち上げて領地を持つ事も珍しくない。


庶民の私を受け入れてくれるだろうか…。



ユリアはトーマスに心配がバレないように笑顔を作った。


「それで、ユリアさん…。ちょっと両親の事でお話が……。」


来た!

やっぱり、トーマス様のご両親は反対なんだ…。


ユリアが身構える。

トーマスは少し考えてからユリアに話し始めた。


「我が家は男ばかりの兄弟でして…。」


「は、はい。」


そうよね、自慢の息子達だもの…お嫁さんはちゃんとした人がいいわよね。


「それで、その母がですね……。」


ほら!やっぱり!お母様が反対されてるんだわ。


「ユリアさんの事を……。」


「は、はい……。」


「あの…えっと…。」


ユリアは息をのみトーマスの言葉の続きを待つ。


「母が、ユリアさんの事を娘が出来た!と喜んでおりまして…。」


「………え?」


拍子抜けした顔をするユリアを見て、トーマスが慌てた。


「いや!その、それ自体は問題ないのですが…。」


「はい……。」


「若干、母は行動が突拍子ない人で。その…きっとユリアさんは驚かれると思うので、最初にお話しておかなくてはと。」


ユリアは考える。


え?反対してないって事?

じゃあ、トーマス様はなんで言いにくそうなんだろう?


「トーマス様…それは反対はしていらっしゃらないという事でいいんでしょうか。」


「え!反対!いや、それはしていません。していないのですが…なんと言ったらいいのか。」


トーマスはしどろもどろになる。


「母は娘が欲しかったんです。兄が結婚した時に母は同じように娘が出来たと喜んでおりました。」


「はい。」


「義理の姉は、子爵令嬢だったのですが…一昨年病で亡くなりまして。」


「え!」


「母はとても落ち込んでいました。ですから…その反動でユリアさんを溺愛するのではないかと。」


「溺愛…。」


「ちょっと母は、いや…かなり激しい人なので。驚かないでください。」


「は、はい。分かりました。」


ユリアは反対されていない事にホッとして、トーマスの言葉をあまり深く考えていなかった。


「大丈夫です!トーマス様のお母様が私を愛してくださるなら、何の問題もないです!安心しました。」


ユリアの言葉に安堵の表情を見せたトーマス。

ホッとしたのか、はぁーっも息を吐いた。


「では、帰りましょう。身体が冷えたら大変だ。」


トーマスはユリアの手を取る。

2人はカフェまでの道をゆっくりと歩き始めた。


トーマスの言葉の意味を、ユリアが思い知るのはこのすぐ後の事だった。



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