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穏やかな顔

両手を広げ、ゆっくり目を閉じるユリアは

本に書かれていく呪文を身体で感じていた。


一方アストロ・ジーラスは、身体の中の黒い霧を全て出し尽くし大きな霧を作っていた。


これほどまで自分の身体から黒い霧を出した事がなかったアストロ・ジーラスは自分の命が少しずつ吸い取られている感じがした。


「私が死ぬか、お前が死ぬかどちらかだ。黒い鷹よ…私に力を…」


アストロ・ジーラスは大きく両手を広げ、一気に身体から黒い霧を放つ。


その地響きで大広間の窓が全て割れてしまった。




上から落ちてくる破片を避ける騎士団と王宮魔法使い達。

トーマスは自分のマントでコートの体を覆った。


「マグゴナル様、大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫さ。」


コートはトーマスのマントの下で頷いた。

コートほどの魔法使いならば、自分の身は自分で守れるのだが前回のアストロ・ジーラスとの戦いの傷でまだ完全ではない。


コートは礼を言うと、トーマスと破片が落ちてこない位置まで下がった。




ユリアは目を閉じたまま、身体の白の力に語りかける。


「お願い…私に力を!そして、アストロ・ジーラスからみんなを守って!」


ユリアの身体から発された白い光はアストロ・ジーラスが命を削って発した黒い霧を包んで行く。


アストロ・ジーラスはそれに負けじと力を込め、白い光を押し返す。

ジリジリと音を出しながら2つの力がぶつかって行く。


そして…ユリアが白の力に想いを込めた瞬間。


大広間にまばゆい光が差した。

その白い光が薄っすら消えて行くと、黒い霧は跡形もなく消えていた。


「はぁ…………」


ユリアは深い深呼吸をして両手を閉じる。

ふと、前方を見るとそこにはアストロ・ジーラスが倒れていた。


ユリアは迷う事なくアストロ・ジーラスに近づいた。


倒れていたアストロ・ジーラスの顔は穏やかで

黒魔術に囚われていた先程までの顔とは別人のように優しい顔をしていた。


倒れたアストロ・ジーラスの側に膝をついたユリアは、その手を握った。


コートがユリアとアストロ・ジーラスに近づく。


「この人もかわいそうな人だったね。」


「私はこの方を助けてあげられたんでしょうか?」


「もちろん。見てご覧、こんな穏やかな顔をして…もっと早く黒い穢れを癒してあげられたら良かったのかもしれない。でも、きっとユリアに感謝しているはずさ。」


「そうですね…。私、もっと頑張ります。この人の様な想いを知る人がいない国にしたいです。」


「そうだね…戦いに使うのではなくて、みんなを癒す為に力を使える世の中にしないとね。」


ユリアはアストロ・ジーラスの手を胸の上で組んだ。

そっと立ち上がり後ろを向くと、騎士団や王宮魔法使い達がこちらを見ている。


そして、その中にトーマスの姿を見つけたユリアは自然に涙が溢れて来た。


「ユリアさん。」


「トーマス様。」


トーマスはユリアの元にゆっくりと近づき、抱きしめた。


「頑張りましたね。本当に頑張りました。」


「はい。」


「辛かったでしょう。」


「はい。」


「貴方は私の誇りです。」


「はい。」


「貴方を愛しています。」


「はい。」


トーマスはその後もユリアの涙が止まるまで

ずっとユリアを優しく抱きしめていた。


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