モリーナ・コスターム
宿舎のキッチンで、団員の食事を作るユリア。
コートから言われた戦いの時はいつか分からない。
とても不安で怖いという気持ちは拭えないが、その時に備えて沢山の白の力を王宮内に注いでおくというのも一つのやり方だとユリアは思った。
ユリアはその時の為に、この王宮に白の力を溢れさせておこうと考えたのである。
その為には、まず王宮の各場所に配置される騎士団の団員に白の力が沢山注がれた食事をとってもらう。
白の力が身体中に溢れる団員がいる場所には、穢れも入り込めないだろうと考えた。
「1人じゃない。みんなでこの国を守らなきゃ。」
ユリアは一生懸命に食事の支度をする。
白の力が王宮に溢れるように願いを込めて一つ一つ丁寧に力を注ぎながら作った。
ユリアの傍らには今日は助手がいた。
普段薬草園にいるファッジとエミネールである。
コートが戦った日から2人はこの王宮に滞在を許されていて、コートの世話の傍らユリアの食事の手伝いもしてくれている。
「ユリアちゃんは、本当にお料理が得意ね!」
エミネールは玉ねぎを刻みながら話す。
ファッジは魔法でお肉をミンチにしていた。
これは以前、ユリアがカフェで使っていたやり方を伝授したのだった。
「それに、ユリアちゃんの魔法はどれも身近に使える便利な魔法ばっかりね!」
ファッジはお肉に魔法をかけながら嬉しそうに言った。
「今日のメニューは何?」
「今日はミートソースのスパゲッティにします。」
スパゲッティはこの国では比較的新しい食べ物である。
以前、この国を訪れた使節団が伝えた食べ物で
王宮では食べられていたが庶民に伝わったのはここ最近である。
街では若者に人気のスパゲッティ屋もあるほどだった。
「スパゲッティ!私、食べてみたかったのよ!」
エミネールが喜んで跳ねている。
と、そこに誰かがキッチンに入ってきた。
「こら!エミネール!やめなさい。」
入り口から急に声がしたので、見てみると
そこには美しい女性が立っていた。
綺麗な金髪の髪を柔らかく編み込み、透き通る様な肌の白い女性だった。
ファッジが目を丸くした。
「モリーナ様!」
「そこで跳ねたりしたら、お料理に埃が入るでしょう!」
ユリアは誰なのか全くわからず、ただただ黙って目をパチクリするのであった。
「モリーナ様!どうなさったのですか!」
ファッジは驚いている。
「コートが怪我をしたと聞いて飛んできたのよ!」
そう言うと、その美しい女性はユリアに目線を移す。
「あら?貴方は?」
「あ、はい!私はコートおばあちゃんの弟子のユリアと申します!」
「あら!貴方がユリアちゃん?そうなの!まぁ可愛いわぁ!」
そう言って、ユリアに足早に近づきいきなり抱きしめた。
すると、キッチンの入り口にエバンがやって来た。
「あ!こら!モリーナ!何やってるんだ!」
「あら…なぁに?いいじゃないの。念願のユリアちゃんに会えたんですもの。」
エバンはユリアからモリーナを剥がすとコラっ!叱っている。
「ええっと…エバン様……こちらは…」
「ああ、これは私の妻だ。」
「モリーナ・コスタームよ。」
ユリアは驚きのあまり、口が閉まらなかった。




