空気の流れ
アストロ・ジーラスの出現が報告され、王宮は密かに厳戒態勢になった。
ユリアはエバンとトーマスと共に、セレニウムの元を訪れていた。
「誠に情けない限りです。」
セレニウムは頭を下げていた。
自分がアストロ・ジーラスに付けいる隙を与えてしまった事を知ったセレニウムは、先程から頭を下げっぱなしである。
「私の心に嫉妬や妬みがあったなんて…。おそらく貴方の事が羨ましかったのでしょう。私も白の魔法使いになりたかったですから。」
「そうなのですか?」
「ええ、見習いの時に貴方の母上と共に学びました。」
「え!お母さんと!」
「そうです。私は魔法書で読んだ伝説の白の魔法使いに憧れていました。回復魔法が得意でしたので、自分はもしかしたら白の魔法使いではないか?と思っていたのです。」
セレニウムはふぅーと息を吐き、思い出すように話した。
「しかし、私は白の魔法使いではなかった。一緒に学んでいた貴方の母上が白の魔法使いだったのです。魔法使いの色は自分では決められない…生まれ持った物です。あの時はショックでした。」
セレニウムは少し笑って言う。
「あの時から、白の魔法使いにコンプレックスがあったんでしょう。本当にお恥ずかしい。」
アストロ・ジーラスに乗り移られていた時の事は何一つ覚えていないようで、相手の情報は得られなかったがセレニウムは言った。
「マグゴナル様が回復するまで、何かあれば私がお力になります。今回の事も私の心の弱さから始まった事。罪滅ぼしをさせてください。」
「セレニウム様。ありがとうございます。もし、何かあったらよろしくお願いします!」
「もちろんです。」
ユリアとセレニウムは握手を交わす。
それを見たトーマスとエバンはほっと安心した。
コートは起き上がれるようになったとは言え、まだ完全に回復はしていない為、王宮の一室で休養している。
ユリアはカフェを一時的に閉め、特別にコートの側にいる事を許された。
「ユリアちゃん。カフェの方は大丈夫なのかい?」
「ええ。カフェは元々パンの販売しかしていなかったし、騎士団の皆さんの食事は宿舎のキッチンで作るから大丈夫です。今はコートおばあちゃんの側にいたいし。」
「ありがとね。」
「じゃあ、ちょっと宿舎に行ってきます!」
「ああ、行っといで。」
ユリアはコートに手を振り出て行った。
王宮の中は、いつもより沢山の騎士団の警備が付いていた。
入り口、廊下、主要な部屋の扉の前、様々な所に配置されている。
表向きはいつもと変わらない風に見えるが、水面下ではかなりピリピリしている。
最近のユリアは白の力のお陰で、空気の流れが見える様になって来た。
重い病気や怪我をしている人の身体から出るオーラが空気中に漂うと空気の流れが変わる。
白の魔法使いはオーラや気の流れを見て、人を癒したり穢れを浄化したりする。
今の王宮は、緊迫感を感じさせる何かがあった。




