ユリアの治癒魔法
コートを抱えたエバンが戻ったのは、騎士団の宿舎であった。
そこに待機していたファッジとエミネールがその2人の姿を見て血相を変えて走ってきた。
「コート様!」
エバンの腕の中でコートはぐったりとしている。
先程まであった意識も今はもうない。
「エバン!コート様は!どうなさった!」
「アストロ・ジーラスの黒い霧と戦って相討ちになりました。マグゴナル様は先程まで意識があったのですが!」
エバンはそのままコートを抱えて、医務室に運び込む。
コートの身体には火傷がいくつもあり、切り傷もあった。
エミネールは、回復魔法をかける。
回復魔法は身体の体力を回復させる事は出来るが、キズを治すには治癒魔法を使わなければならない。
そして、魔法同士で出来た傷は質の高い治癒魔法でなければならない。
ファッジは治りきらないコートを見て、エバンに言う。
「今すぐ、ユリアちゃんを連れて来ておくれ。急ぐんだ!」
「わかりました!」
エバンは全速力で宿舎を駆け抜け、そのまま馬に乗った。
馬で魔法カフェにたどり着いたエバンは、カフェのドアを勢いよく開けた。
「ユリアちゃん!!」
騎士団の団員達がまだ食事を取っている最中だった。
いきなり現れたエバン総長を前に、全員が起立する。
すると、部屋にいたトーマスが声をかけた。
「総長殿!どうされました!」
「トーマス!ユリアちゃんは!」
その声を聞いてユリアがキッチンから出てきた。
「エバン様!何かあったんですか?」
「トーマスとすぐ王宮に行ってくれ!」
「王宮に?」
「トーマス!馬が表にいる!それで宿舎の医務室までユリアちゃんを連れて行け!マグゴナル様が危ない!」
「え!コートおばあちゃんが!」
トーマスは緊迫したエバンの雰囲気にただ事ではないと察して、ユリアの手を取りカフェを飛び出した。
エバンはカフェの外に出て叫んだ。
「トーマス!急げ!」
トーマスはユリアを馬に引き上げると片手でユリアをギュッと抱きしめながら、馬の脇腹を蹴った。
「しっかり僕に捕まって!」
物凄い風がユリアの耳元でビュービュー鳴っている。
ユリアはその怖さに思わず身体を硬らせる。
「ユリアさん、大丈夫です。僕があなたを離しませんから。」
トーマスはユリアの身体をギュッと抱いた。
あっという間に王宮に到着した2人は、急いで騎士団の医務室へ走る。
医務室の周りには、団員達が集まっていた。
その中にいたハンターが2人を見つけると叫んだ。
「トーマス団長殿!ユリアさん!こちらです!」
団員が道を開けた医務室には、ぐったりとしたコートが寝ていた。
「コートおばあちゃん!」
ユリアはコートに駆け寄った。
「どうしたの!コートおばあちゃん!」
ファッジがユリアに近寄り言う。
「コート様はアストロ・ジーラスと戦って負傷したのよ。ユリアちゃん、治癒魔法をお願い!」
「分かりました!」
ユリアは涙を拭くと、コートの手を握り目を閉じる。
目を閉じて白の力に集中すると、黒い点のようなものが沢山見えた。
これが傷だわ……。
ユリアはその黒い点一つ一つに白の力を注ぐ。
ユリアとコートの身体は白い光に包まれた。




