7 白髪の意味
ぼっちで料理を貪ってたら、女子五人に絡まれた。
「おお王様と話したくらいでいい気になるなんて!」
「ちびのくせににゃまいきですわ!」
「ちょっと!むしなんて無礼な!」
あー、ピーピー五月蝿い。
このパーティーって、交流会みたいなものだから、お話にでも来たのかな?と思ったけれど、浴びせられるのは関係ないことばかり。
正直、6歳児に罵倒されても何ら怖くないし、そもそもこの子ら、ちょっと震えてる。
そんなこと言われる筋合いもないから、シカトと行こうじゃないの。
あ、このグラタン美味しい。チーズが入ってる!
「イラシャ様になんて態度を!」
「あんたのた、たくらみはわかっていましゅわ!」
むしろ、さっきから一人、噛みまくってる子がいて可愛い。
にしても、大人達気付いてくれないかな……お食事の邪魔をされて困ってるんですけど。お父様もお兄様も姿が見えないし。
おお、このカレーも中々。前世のカレーとちょっと違って、それがまた美味しい。
「おふざけもたいがいにしなさい!まっ白いかみのくせに!」
「白なんて、きもちわるい!」
髪……?
「私の髪ですか………?」
「そうよ!私たちの目に入るところからはやく消えて!」
「こちらまで不吉になるわ!」
これはもしや………
「ルミィ!大丈夫か!?」
「あ、お兄様」
お兄様が駆け寄ってくると、可愛い罵詈雑言を吐いていた女子達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「ルミィ、怪我とかないか…?何もされなかったか?」
「平気ですわお兄様。それよりほら、このカレーも美味しいですわよ。このお芋はなんと言う種類なのでしょう?」
馴染み深い味………とは少し違うものの、ちゃんとカレーの味がする。これも"美食の師"が伝えた賜物か。
「そっか……よかった……」
「もう、心配し過ぎですわよ。生意気やら髪が白いやら言われただけですから。」
「大丈夫じゃないじゃないか。」
本当に、心配していると言った声色のお兄様。
あれくらいどうってことないのに……あ、でも何で絡まれたのかとかは気になる。
「ただ、白い髪…というのは気になりました。何か謂れがあるのでしょうか……?」
おおよそ予想はつく。神(笑)が狙ったかは知らないけども………
お兄様は苦々しい顔でこう答えた。
「……ルミィ、鮮紅の魔王は知ってる?」
「本で読んだことがあります。凶悪な魔物を従えて、残虐の限りを尽くしたと。」
「そうだよ。それも、人族から亜人族、魔族に至るまで。鮮紅の魔王は忌み嫌われ、恐れられている。そんな魔王の髪の色はなんだと思う?」
うん、そんなことだろうと思ったよ。
「白……ですね。」
「そう。世にも珍しい白髪だったんだ。その魔王の眷族も同じ白髪と言われている。だから、白髪の人は魔王の繋がりを疑われるんだ……酷い偏見だよ。ルミィは学院に行っても家柄上大丈夫かと思ったけど……6歳だと、まだ分からないか。盲点だったよ。」
不思議に思っていた。
いくら公爵家の娘だと言っても、あまりに過保護だと思っていた。
外には一度も出してもらったことも無ければ、今まで同年代の子と会ったこともない。
それはきっと、お父様方が、私が髪の色で虐められたりして傷つかないよう、守ってくれていたのだろう。
確かに、6歳児にこの仕打ちはキツいと思う。まあ、私は中身が17+6歳だから何ともないわけで。
「大丈夫です。私、そのような偏見に負ける程弱くありませんわ!」
学院は地味に楽しみなので、一応平気宣言をしておけば、娘大好きお父様が「ルミリエが傷つくなら通わせんぞ!」という事態も多分回避できる。
「……ルミィは本当に強いな。」
「そうですか?セルグランスの名を背負う以上、当然ですわよ。もちろん、ダイヤモンドの位も。」
「そっか………そうだね。」
優しく頭を撫でてくれるお兄様。お父様やお母様に撫でてもらうのもいいけど、お兄様のが一番気持ちが良い。なんでだろ。
しっかし、白い髪が魔王の眷族ねぇ………学院では舐められないようにしないと。
ん?私が魔王を倒せば、白い髪が悪いとはならなくなるのでは?むしろ英雄?
神(笑)め………これを狙ったのか。いいだろう……乗ってやる。私が魔王を倒してやろうじゃないか!トリスタンがあればいける!多分!
この日、私は魔王を倒す決意を固めた。同時に、学院では舐められないよう余裕を持って過ごそうと…………