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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
53/55

53 雨の賢者/緊急退避



✳霧島視点



「どうですか?上手く行きました?」


 儂の隣で、十歳とちょっとの少女がそう聞いてくる。


「大丈夫じゃ。気付かれておらん。このまま、例の部屋まで操作するぞい。」


 儂は現在、少女…ルミリエに、第二王子に取り付けさせた小型ゴーレムを遠隔操作しておる。


 このゴーレムには、儂の微細な魔力を感じ取り、弱くはなるが儂の"消去"と"復元"や魔法を放てるようになっている。

 本来は、神のヤツから『次は学院だよ。それも少等院。』と聞いた時から用意していた盗撮盗聴用のゴーレム…いや、何も言うまい。


 とはいえ、こうして役立てることができて万々歳じゃ。魔法も一部使えるようにしておいて正解じゃった。これで、一度来た場所にしか飛べない転移を、空間座標の固定をゴーレムにやらせることで楽に済ませる。


「霧島さん霧島さん。今回は、あくまで調査ですよね?その部屋に何かないか、という。」

「そうじゃな。じゃが、仮に目標がいたならば、その場で狩るぞ。

……お、着いたみたいじゃ。」


 さて、そろそろ行くかの。

 もしやすると、久しぶりの運動になるやもしれんが、その時は儂の"雨の賢者"としての力を出すだけじゃ。


「もし、手を借りんといかん状況になったら連絡する。その時は、この魔術を使え。上級空間魔術じゃ。座標もつけ足したからの、自動的に跳べるようになっておる。」

「…わかりました。お気をつけて。」

「うむ。」


 ゴーレムの取り付けた空間座標まで、一瞬で移動する。


 すると、目の前には扉の護衛が三人。


「なっ、何者だ!」

「"ワイドスリープ"」


 動揺しておる途中に、中級魔法で眠らせる。


 実は儂、王城のヤツらには顔バレしておるので、一応フードを被ってきた。この国に住んどるだけなんじゃが、知らんうちに国家戦力扱いになっておったんじゃ。


「侵入者だ!捕らえろ!」


 ほお、もう追加が来るか。ここの兵士は優秀じゃのう。

 見たところ二十人程度かの。


「"雨域(レインフィールド)"」


「雲…?」

「総員警戒態勢!相手は魔術師だ!」


 やはり優秀じゃ。魔術師だとわかるや否や、配置をすぐさま変更とは。

 じゃがな…一つ違う。


 儂は、魔術師ではないんじゃよ。


「…母なる大地よ天空よ、我の願いに応え顕現せよ"石狂域(ガイアフィールド)"!」


 向こう魔術師三人が、同時に地属性の(フィールド)を展開しおった。

 こちらは水属性。普通に考えれば不利。


 ま、それだけじゃないがな。

 儂の"雨域(レインフィールド)"は、水、火、氷、雷、そして空間属性の複合魔法じゃ。


 上空にできた雲へ向け、一筋の紫電を放つ。


「まさか…」

「引けーっ!結界魔術を発動させろ!」


 敵隊長がそう叫ぶ。

 魔術師は、結界魔術を慌てて張る。


「大丈夫じゃ。──死にはせん。」


 極太の光柱…いや、雷が落ちる。それはあたかもレーザーのように、数秒間降り注いだ。


 ふむ……死にはせん、とは言ったものの、これやっぱ死んだかもな。ヒホッ。


 こう煌びやかな場所で、雨が降りしきるというのは何とも不思議で違和感があるのう。その中で一人、佇む儂。


 一応、倒れ伏した兵士どもに回復魔法をかけてやる。仮に心臓が止まっていても、これで動くようにはなるじゃろ。



 階段を下りる足音が聞こえてきた。面倒じゃし、さっさと見てくるか。


「"消去(イレイス)"」


 結界を存在ごと消去する。そして、扉の一部も消去。


 中に入り、即座に"復元(レスタ)"で戻した。



「……ほぉ。こりゃ酷い。」


 中は、そう呟いてしまうほどの景観じゃった。


 明かりもなければ道もない。それだけでなく、壁がズタズタに引き裂かれたようになっておる。


 どうやら、かなり広い空間のようじゃ。

…そして、一人誰かがおる。


 儂は夜目が効くほうじゃが、こう真っ暗ではさすがに無理じゃ。光球でも出すか。


「…広いのう」


 おもちゃのようなものや壊れた武具、食器やらが散漫しておる。まるで、巨大動物が暴れ回った痕みたいな感じじゃ。


 ゆっくり奥へ歩いてゆくと、人間の反応が動いた。どうやら、こちらに気づいたようじゃ。



 やはり、間違いない。この反応、幼子…四、五歳といったところか。

 だんだんと距離が縮まる。


…万一に備えて、準備だけはしておくかの。



 そして、数十秒。

 ついに、お互いの顔が見える位置まで来た。



「こんばんは、お嬢ちゃん。名前は?」


 その少女は、何も知らないような、無垢な顔をしていた。


 その姿に、儂は思わず引いてしまった。


「こんばんは…?」


 この少女はチート(神の力)を持っている。


 そして、その力は儂を滅ぼし足り得るほど。そう悟ったのじゃった。






   ・・・・・・・・





「暇…退屈…」


 私は、超絶暇だった。

 強いて言うならば、ベッドに横たわって霧島さんを待つくらいしか、やることがない。


 あー……暇。


 でも、それでいい。霧島さんが救援要請なんて、それは危険ってことじゃないですか。行きたくないじゃないですか。


 一応、"トリスタン"はちゃんと持ってるし、着替えもしておいた。流石に寝巻きで戦闘とかアホくさいし。


「"トリスタン"ねぇ…」


 上級魔術や最上級魔術の発動練習の時にしか、最近は使っていない。魔素量が一時的に増えるから、素では撃てない魔術も撃てるようになるから便利。

 神(笑)の言う通り、副作用も緩和されている。二錠までなら、聖(短)剣持ちで普通にいける。


 ただ、やっぱ私、一応貴族なのよ?公爵家のご令嬢よ?戦いとは無縁な人種のはずなんだけどなあ……

 

 でも、私は〖天使〗らしいし。これも仕方のないことなのかもしれない。ウルトラスーパー不本意だけれど。



「……」



 静かな夜。


 その静寂を突き破ったのは、またもやあのロリコンジジイだった。



 ボーッとしていた私の目の前の空間が、突如揺らぎ始める。


「き、霧島さん!?」

「捕まれ!一度退避する!」


 霧島さんの腕には、見知らぬ女の子が一人抱えられていた。


「えっ、その子って…」

「話は後じゃ!早く!」

「わ、わかりましたっ!」


 空間魔法が発動した。


 一瞬光に包まれ、浮遊するような感覚の後、私は全く知らない場所にいた。



「ここは…?」

「儂の隠れ家じゃ。全く、面倒なことになったわい。」

「え、ちょっと何が面倒なことになったのか説明して下さいよ。私、何が何やら…」

「そうじゃな。まずはこの子……メグリについてじゃ。

こやつは転生者じゃ。強力なチートを持っておる。じゃが、まだ記憶を取り戻しておらん。」


 つまり…あれだ。転生したことに後になって気づくパターンってことかな。


「それで、なんでここに?」

「ああ。それじゃが…しばらくは、ここにいた方がよさそうじゃ。」


 寝ている?女の子…メグリを横目に、霧島さんははっきりと、こう言った。



「魔王が、現れた。」

「……は?」


 衝撃の告白だった。



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