50 このロリコンじじいが!
「おはようございますルミリエ様……って、その方は?」
霧島さんが私の部屋に不法侵入してきた次の日。この日も学院があるから、とりあえず一回お帰り願ったのだけれど…
「初めまして、お嬢さん。本日よりルミリエ嬢の護衛を勤める、ミストと言う者でございます。以後お見知りおきを。」
執事服に身を包み、完璧なお辞儀をする霧島さん。
「護衛?」
「あはは、色々ありまして…」
「ふうん…」
訝しげにリラちゃんが見つめる。
ええ本当に色々ありましたよ。主に情報面で。
「皆様お気になさらず。学院内では、基本的にパトロールなどをさせていただきますので。」
と、霧島さんは言った。
流石に授業中もずっと付いているのは迷惑だし、パトロールと称しておにゃのこを観察するのじゃぁ、と昨日言っていた。キモかった。
どうやら皆も納得してくれたみたい。なんで今更、と思ってはいるだろうけれど、スルーしてくれたのはありがたい事だ。いや~、良い友達を持ったものだね。
「…それで、その彼はどこにいるのかの?」
「…教室行けば一瞬でわかりますよ。」
教室に向かう途中、小声でそう言ってきた。
そう、霧島さんが護衛として学院に入った目的の一つが、その彼女の情報収集である。
まあ、聞き出すのは全部私だし、霧島さんは王子を一目見ておきたいってだけの理由らしいので、本命はそれじゃないらしいけれど…。
教室に着くと、案の定というか、いつもの光景が視界に広がる。
「ジル様、今年の剣技大会も優勝なされたのですよね!?おめでとうございます!」
「殿下!この間は弟のためにありがとうございました!ぜひまたいらして下さいね!」
「わ、私の屋敷にもぜひっ!」
「ちょっと!次は私の所に来て下さる番なのよ!?勝手なことを言わないで!」
「…す、すごいの…。」
「最近は、彼女たちも分別がついてきたお陰で、椅子を占領したりはしなくなったんですけどね…。」
相変わらずの日常風景。幼等院の頃から変わらない。
ちなみに、私のクラスは小等院1年1組。ロローナちゃん達は他のクラスにバラけちゃったのに、王子とイラシャちゃんは同じクラスです。
学力で分けられるのは2年からなので、来年は皆同じ1組になろうね、と約束しました。
幼等院から小等院に進級する際、またクラスがバラバラになるのは、庶民院に通っていた子の家が男爵家に昇進したりすると、そこで貴族院に編入されるからだとか。逆の場合も然り。
「ふむ…チワワのような幼女も悪くないのう。」
「それって暗に貶してません?」
「褒めてるんじゃよヒホッ!」
すんごいニヤニヤしてる…。
でもまあ、実害が無いなら放置でいいかな。私に手出したら承知しないけど。
「これが、この国の第二王子か。イケメソじゃの。」
霧島さんが、王子に近付いて、王子の頬をつんつんした。そう、触れたのである。
しかし、王子が気付くことはない。
これが、霧島さんが神(笑)から与えられたチートだ。
そのチートは、『消去と復元』。
つまり今は、私以外からの認識を消去しているのだ。
そこら辺の説明は難しくて詳しく理解出来なかったけれど、概念的に消去が可能なんだって。私の部屋に入ってきたのも、窓の鍵とか自分の音とかを消去して来たらしい。
復元は、消去したものを直す能力。復元が無かったら消しっぱなしだから、必要不可欠な表裏一体の能力と言っていた。
「それにしてもいやはや、学院とはいい所じゃの!!視姦し放題じゃあホヒッ!!」
「お巡りさんこっちです…ってか、あなたがお巡りさんになるんですよ!ホームルーム始まるので出てって下さい!」
「わかったわかった。んじゃ、儂は3年の子でも見てくるわい。」
若干スキップしながら、霧島さんは教室から出ていった。
はあ…なんか、私の悩みが増えた気がする。ガチでロリコンですよこの人。霧島さんから見れば、さぞかしこの小等院は天国みたいな場所なんでしょうね…。
さて、私は私で、自分の仕事をすることにしましょう。
と、いうわけで、王子の元へレッツゴー!
……と思ったけれど、ちょうどホームルームが始まる時間だ。次の休み時間に改めて行こう。