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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
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45 渾沌たる遠足/境界交信-2




 まさかの、庶民院との合同遠足。


 庶民院には、貴族院の何倍もの子供が通っている。そりゃ当然だ。中世日本だって、武士と農民の割合は1:9はあったわけだし、まとめる立場の方が少ないのは至極当然なのだ。


…しかし、問題はそこじゃない。


 王子然りクロリアさん然り、こいつら六歳児なのか、と思うほどの知能レベルの子が周りにいたせいで麻痺していたが、私たちは六歳なのだ。ガキンチョだ。

 私は論外だけれど、皆一様に高貴な家の生まれ。イラシャちゃんだって、私の立場を理解しているから直接石を投げたりしない。


 でも、理解していない子供なら?純粋に、白髪を恐怖の対象と見ている子ならどうなる?


 多分、誰も近寄らないし、寄ってきても石を投げるとかそんなところだろう。


 いや、貴族院でもあんま人寄ってこないのは同じだよ?でもそれはさ、『あいつ髪白い…でも公爵令嬢…お関わりにあわないでおこう…。』っていう中立的な考えからでしょう。白髪+公爵家=微妙な立場、ですよ。


 そこから公爵家が抜けて、白髪=ヤベー奴に見られるのは正直嫌だ。仲良くしたいんだけどなぁ…。


 でも、弱気になるのもダメか。試してみなくちゃわからないよね!

 よし、今日は自分から声をかけに行くぞ!行ってやる!



「んじゃ、今から自由行動なー。あんま遠くに行くんじゃねえぞ。」

「ランチタイムも自由です。全員仲良く食べること。では、どうぞ。」


 先生とドリンクバーさんの言葉で開始。ちょうど、数十メートル離れたところで、庶民院の子達も開始したみたい。



「ルミリエ様、どうします?班で鬼ごっこします?」

「それだと、ルミちゃんと殿下の無双状態になっちゃうんじゃないかな……」

「まずはランチにしませんか?」

「…本が読みたいわ」

「俺は寝る。おいお前、シートを広げろ。」


 むう、皆好き勝手言って…。特に王子のは解せない。


 まあ、とりあえずサリエちゃんの意見を採用してランチにしようか……と思った矢先、問題が起きた。


 何かって?そりゃあ……



「ジル様~!!ぜひ私たちといっしょにランチを!」

「私、がんばってお弁当をつくってきましたので、ぜひごいっしょに!」

「殿下!花かんむりをつくりました!どうですかどうですか!?」

「ちょっと、おさないでよ!」

「そっちこそ!」


 王子争奪戦である。他の男子がかわいそう。


「……逃げるぞ。」

「「了解ですっ!」」


 王子は少し考え、庶民院の子が集まっているところへ、逃げることにしたらしい。


 確かに、追ってくる乙女達のプライドを揺さぶる良い案かもしれない。庶民院にこんな姿を見られたくは無いだろうし。


……とでも思ったか王子!普通に追ってきてるじゃないですか!


「「「ジル様~!!!」」」


「なんだなんだ?」

「貴族のやつらかよ。なんだこれ?」


 庶民院の子らも気づいたようで、特に追われている私達に注目が一番向けられているようだ。そして…


「おい、あいつの髪…」

「ひぇっ……た、たべられる…たべられちゃうよぉ…」

「みんなにげろ!あぶないぞ!」


 血走った大勢の乙女と、白髪の私が飛び込んで来たせいで、もう全員大パニックに。先生方も止められない騒動になってしまった。


 中には、混乱して先生の監視外に出てしまった子や、怪我をしてしまった子も出た。ちなみに、私も怪我をしました。誰かが投げた石が足にぶつかって、ニーソが破けて血が出ました。ひどい。リアルに石をぶつけられたのは地味にショック。


 結局、王子争奪戦から起きた大パニックは落ち着くまで三時間ほどかかり、遠足を実質潰してしまったのであった……。





   ・・・・・・・・





『やぁ』



 あ、こんちわ。


…なんですか、その顔は。



『ようこそ、ゴッドハウスへ。この"トリスタン"はサービスだから、まず受け取って飲んでほしい。』



 遠足行く前の、熱の時会ったから…四ヶ月振りですね。



『うん、"また"なんだ。済まない。』



……あのですね、ネタはいいのでちゃんと喋って下さい。



『おおっ、知ってたんだ。』



 はい。仏の顔もって言うしね。次やったら謝っても許しません。



『今日はイライラしてるね。まだ遠足の時、茶髪の男の子に怪我させられたの根に持ってるのかい?』


 それ後で詳しく。


…イライラしてるというか、ほら。神(笑)が無茶なミッション課すせいで、お父様とかと色々あったわけだし。

 今回の"レベルを5上げる"とかも、実際どれくらい上がったのかわからないし…。


 ちょっとガバガバなんですよね。改善して下さい。



『わ、わかったよ…。じゃあ、次のミッションは無しでいいから…。』



 それは根本的な改善じゃない気が…。


 まあいいや。んで、この新しい"トリスタン"は?コピー?



『この前、スライムに瓶ごと食べられたよね?あれで、オリジナルは失われた訳だけど…なんとか得ていた情報を元に、改良型を作ってみたよ。いやぁ、すごいエネルギーを使っちゃったよ。今度は、瓶ごと投げ入れるなんてしないでね。』



 はあい。


 具体的には……副作用の軽減ですか。それはありがたい。



『かなり副作用で苦しんでいたようだったから…君の聖剣を使った時に、二錠までならデメリット無しで使える、お手軽仕様にしたから安心して。』



 わかりました。それでは、今回の報酬と質問コーナーを…。



『報酬は、前回同様お菓子でいいね。』


 お米と醤油と味噌追加で。


『オッケー。それで、質問はあるのかい?』



question:1

 黒スライムは死んだのか?



『結論からいうと、死んでないね。』



 ですよね。


 だって、遠足の時ミニマムバージョンと遭遇しましたし。



『あれは、()()()()スライム…グリューエルの残りカスみたいなものだよ。消滅した時に霧散した魔力が固まったみたいだね。』



 あれっ、消滅?



『う~ん…どう言えばいいのかな…。

 肉体、器となるボディーは一回滅んだけど、精神、魂はバリバリ生きてるってこと。ほら、君が転生した時の状態と同じ。今も、半分くらい同じ状態だよ。』



 でも、スライムボディーは失われたわけでしょう?



『そこが、グリューエルの厄介なところだよ。肉体的に滅んでも、魔力を伝ってまた新たな肉体を得て復活する。……しかもあいつ、複数魂を持ってるみたいなんだ。』



 チートかよ。



『魔王軍の中でも、しぶとさは一番と言っていいね。攻撃力も、本気出せば…多分、君は一瞬で蒸発してたよ。舐めプしてもらえて良かったね。』



 よかったです。…まあ、魔物と戦えって言われただけで、倒せとは言われてないので……もう黒スライムと会うこともないでしょうし。次の質問行きますね。



question:2

 私のレベル教えて下さい



『ああ、"祝技の儀"は十歳に執り行われるんだったね。』



 はい。それが終われば、なんか変な水晶でステータス見られるみたいですけど。



『技透玉のことかい?あれらは、少なからず肉体に不可を与えて、ステータスを数値化するものだからね。身体が未熟だと危険なんだ。』



 ふーん。


 それで、実際のところ私のレベルは?



『じゃあ、特別に見てあげるよ。ちょっと待ってね……はい。』


 もう出たんですか?


『ほら、見てみて。』


 仕事がお早いことで。どれどれ……



〘レベル 16〙



 うわ微妙。高いのか低いのかわかんないよこれ。RPGだったら、二つ目の街クリアしたくらいだよ。

 ここはさ、普通に考えて『う、うそ!私のレベルって70なの!?』みたいになるとこじゃん。私のチートはオクスリだから仕方ないけどさ。


『まあまあ、現在はそう甘くないよ。これでも、同年代の人間の中では十分強いから。

 レベルアップ補正も一応効いてるし…実際、遠足のあとのトレーニングで、レベル5ちゃんと上がったからね。おめでとう。』


 ありがとう。


 でもな~、それこそ、グリューエル倒したんだったら、ゲーム的に考えて30くらい上がってて欲しかったな~。魔王軍の幹部とか、絶対経験値おいしいもん。



『レベルが上がったから能力が上がるって訳じゃなくて、あくまで能力が上がったからレベルが上がるっていう仕様だから。そういうシステムにしたから。…今回はここまでかな。』



 ん?まだ一個残ってるよ?質問。



『エネルギーがそろそろ持たないんだ。』



 あー、前にも同じこと言ってましたね。



『うん。次会う時に質問してくれたらいいよ。』



 次も、三ヶ月後くらいですかね。ミッションもないし…何もしなくていいんですか?



『ぼーっと待っててもいいよ。しばらくは、大きな動きは無いみたいだし。』



 詳しくは理解できないけど…しばらくは平和ってことですね?分かりました。



『その解釈であってるよ。…それじゃあね。』



 はいはい。では、また三ヶ月後!




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