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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
41/55

41 謝罪と感謝

更新が......




「………。」

「……。」

「………ええと…。」


 気まずい。


 お父様と顔を合わせて、『気まずい』と思ったことは今まで無かった。


 でも、今回はやっぱり気まずい。優しいお父様が、ちょっと怒ってるように見える。

 


 ってか、マリーさんさあ、あなたこっち側の人間でしょーよ。何しれっとお父様側についてんのさ。私ぼっちじゃん。


「ルミリエ。」

「っひゃい!はい!」


 仕事をしていた手を止めて、お父様が私を見据える。


「怒ってるように、見えるかい?」

「はい…。」

「そうかい…。確かに、私は怒っている。何に対して怒っているかは、わかるね?」


 ちらっとマリーを見るも、目を閉じて何処吹く風といった様子。なんて奴だ。



「私が、マリーを連れ出して勝手にライルット草原へ深夜向かい、危険を起こしたことです。」

「それもある。ちゃんと言って欲しかった。おいたが過ぎたね。……でも、それでも、違う。私は、私に怒っているんだ。

 冒険者ギルドとライム子爵からの情報で、ライルット草原にて奇妙な魔物の死骸が見つかったらしい。焼け方からしてスライムのようだが、本体は小さく、凄まじい魔力の残滓が死骸を取り囲んでいたそうだ。相当危険な魔物。ルミリエ、君が倒したのはそれだろう?」


 スライム。合っている。


 魔力の残滓が取り囲んでいた、というのは気になるけれど、『焼け方』ということは、それだ。あの黒スライム。


「それです。火魔術でとどめを刺したので、間違いありません。」

「だろうね。子爵は、現れた魔物の噂とは違う、と言っていたが、他に魔物はいなかった。…スライムは、危険な魔物だ。人間を一番殺している魔物と言っても過言では無い。」


 うっそ。スライムマジやべえ。ザコモンスターとはかけ離れてるじゃん。ザコが大量にいるから弱い人が殺されてるのか、スライム全般が強いのかはわからないけれど。


「そんな、危険な魔物と君は対峙した……いいや、そこじゃない。そもそも、ルミリエを危ない目に合わせてしまった、気づけなかった。…不甲斐ない。自分の娘の安全すら守れないで、何が領主だ。何が民を守る、だ…!」

「旦那様!それは違います!」

「旦那様の責任ではございません!」



 俯くお父様に、近くにいる執事たちが慌ててそう言った。


 監督責任。そんな言葉と同時に、忘れていたはず、忘れることができたはずの記憶が脳裏にちらつく。


 もう、今から見れば9年前の記憶となる。私は、その封印が解ける前に慌てて記憶を閉じた。



「ルミリエ、ごめんよ。私が、ちゃんと君を見ていなかったせいで、危ない目に合わせてしまった。君の親だというのに、君を理解できていなかった。すまない。」


 どくん、と私が動揺したのが自分でもわかった。


……謝られた。お父様に。お父様に謝り、感謝しようと決めて来たはずなのに、私が謝られている。


 不甲斐ない?それは私の台詞だ。精神年齢がちょっと高くて、神(笑)のフォローがあるくらいでいい気になっていた。魔物狩ってくるだけだと思っていた。


 でも、それは結果としてお父様を苦しめている。


「……ごめんなさい。心配も、迷惑もかけました。お父様とお母様、皆に甘えて、勝手な行動ばかり起こしていました。本当にごめんなさい。そして……」


 自然に言葉が口から漏れた。私は綺麗事とか嫌いな人だと思っていたけれど、人間やっぱり皆そういうものだ。何なのか言葉にできないけれど、そういうものなのだ。


「ありがとうございます。心配してくれて…日頃から、感謝してもしきれません。」

「ルミリエ……いや、私が…」


「旦那様。」


 ここで初めて、マリーさんが口を開いた。


「私めの処分について、お聞かせ願えませんでしょうか。」

「あ、ああ。…ルミリエ、わかった。これからは、今回みたいなことはしないで欲しい。もうちょっと、色々考えて行動しようか。」

「…はい!」


 お父様の顔は、少し晴れやかで、困ったような笑顔だった。


…そういえば、お兄様も昨日同じようなことを言ってた。親子、似たもの同士なんだなぁ…。


「さて、話は変わって、マリーさんの処分についてだ。」

「マリーにも、ごめんなさい。」

「いえ、自分でお嬢様の手助けをすると決めましたので。」


 マリーさんは一番の協力者だ。流石にお咎め無しとは行けない。



「マリーさんは、今後ルミリエ専属ではなく、単にメイド総括の仕事に専念して欲しい。」

「……承知致しました。」


 マリーさんは、元々メイド長兼私のお世話係。

 そのお世話係が無くなるってことは、会う機会がガクンと下がるってことかな。


 でも、よかった。正直、解雇とかされないか心配してたから…これからも普通に会える。



「ほら、とりあえず今は解散。ルミリエは今日も学院があるだろう?マリーさんにも早速、仕事を頼みたい。」

「そうでした!お父様、マリー、行ってきます!」


「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」

「気をつけてね。」


 何はともあれ、ちゃんと気持ちを伝えられてよかった。これで、すっきりとした気持ちで学院に行ける!


 今回は大変だった。全く、神(笑)も、こうなる未来見てからミッション出して欲しかったわ。


……ん?神(笑)?……あいつが元凶では?


 また、黒い気持ちが一つ溜まった瞬間だった。




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