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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
32/55

32 YOU LOSE!

 



 未だに目がチカチカする中、王子の最終通告が告げられる。


「降参すれば、悪くはしない。断れば、強引に気絶させる以外なくなる。これが最後だ、選べ。」


 木刀を持つ手は掴まれ、もう片方の腕も押さえつけられている。


……もはや、これ以外ないかぁ。アレ、やる?やっちゃう?でも怒られそうだな~、王子て無駄に正義感強いし、それ以上に立場が…。



 一応、降参しないくらい言っとくか。


「…降参は致しませっ…ぅく」


 いきなり首絞められた!ひどい、か弱い女の子に手をあげるなんて……ってことで、いいよね?血が止まってクラクラするから、さっさとやっちゃうよ?


 王子は、全方位警戒している。私が(フィールド)を操作しないよう牽制している。



 だが!一つだけ死角がある!絶対に狙われないだろうと、防御もしていない()()を、せめて苦しまぬよう一撃で叩いてやる!



 さあ落ち着け……だいぶやばい、あとちょっとで意識が消えそう。


 ごめん王子。もしかしなくても、これは君の尊厳に関わるかもしれない。でも、私はやるしかないのだ。



 さあいくぞ………刮目はするな!クリティカルバーストォォォォオ!!!



「ほごおぉあ!!!????」


 絞められていた首が解放され、力が抜けて地面にバサッと倒れる私。


 そして、おそらく人生初めての、そこの激痛によって、地面に転がりもがき苦しむ王子。



 へっへっへ、してやったり!まさか股の下から攻撃がくるとは思うまい…ククク。



 ギャラリーからザワザワと動揺が伝わる。特に男性は、心無しか内股になってる。おもしろ。



「お、おおおまえそこは」

「油断したのはジル様ですよ?私の(フィールド)に足を踏み入れたのならば、それなりの覚悟をして頂かなくては。自業自得です。」



 やっべ、怖!尋常じゃないくらい睨みつけてくる。血走ってて、威圧感がさらにマシマシ。



……とりあえず、そこの木刀と魔法紙は没収。で、あとは王子を気絶させるだけ。"幻霧域(ファントムフィールド)"の魔力吸収で、王子の魔力を根こそぎ奪えば終了だ。魔力枯渇ってやつね。



「…最後に言い残すことは?」


 逆転からの逆転というこの状況で、なんか言いたくなったから言ってみた。



「……気を失ったら、ヒールをかけて欲しい。場所はわかるな…?」



 それが、王子が気絶する前の最後の言葉だった──







  ・・・・・・・・







 王子の遺言通り、例の場所に治癒魔術をかけた後、私は汚れた服を着替えるため更衣室へと入った。



 入ったら、マリーが泣いていた。


…エ!?マリー、泣ク、ナンデ!?



「おじょうばまああ!!!」

「きゃあ!」


 飛びついてきた……けど、トリスタンパワーでしっかりと支える。


 うわぁ、マリーの顔ぐちょぐちょだ。大丈夫かこのメイド。



「ほほ、ほんとにがっだのでずねぇ」

「ええ、ちゃんと勝ってきたわよ。」


 ちゃんと勝った…から、とりあえず鼻水を服につけないで欲しいわ。着替えるけどね。


 マリーを引き離して、今日だけでかなり汚れたドレスを脱ぐ。わ、よく見たら結構土ついてる。取れるのかな……。



 王子は、私がヒールをかけた後、医務室に運ばれていった。

 観客達の動揺も大きくて、後々面倒になりそう。叫んでるオッサンもいたし。


 あ、あとあのドラゴン。私が勝利したら、『次はオレの番だ!』とか言って、すごい面倒臭いことになった。いきなり人間モードに体型変化したと思ったら、素手で殴りかかってきたし……お陰で右頬がまだ痛いよ!ほんと、どんな戦闘民族だ…竜人族。


 一発殴っただけじゃ物足りないのか、連撃パンチ繰り出された時は死ぬかと思った。王子戦で消耗したし、反応が遅れちゃったのよ。


 ギリギリで、あのドラゴンの執事っぽい人が来てくれなきゃ、今頃私は人肉ミンチだったね。

 もうなんなの。この世界の男子って容赦なさすぎでしょ。……まさかリョナ好きなのか?…違うと思っておこう。



「…ん?あ、お風呂…!」


 おお!更衣室に風呂発見!これは入るしかない!


「マリー!入ってもいい?」

「ええ、ええお嬢様!一緒に入りましょう!」



 嬉嬉として、そして当然のようにマリーも一緒に入ってきた。


……まあ、マリーも協力してくれたわけだし、今日くらいいっか。戦いの疲れを癒すとしよう。


 





  ・・・・・・・・





 あぁ~、さっぱりした。


 やっぱ、疲れた時は寝るのとお風呂が一番だよね!



「まさか更衣室に、このような場所があったとは……」


 マリーは、お風呂に入っていたらだんだん冷静な平常時マリーに戻っていった。

 メリハリがあるというか、切り替えがいいと言うか……興奮時マリーの時の記憶はあるのに、どうやら何とも思っていないそうで。



「お嬢様、どうぞ。」


……お?おおお!


 グレーターブルの乳(ぎゅうにゅう)じゃないか!

 結構レアで手に入りにくいって聞いていたけど……しかも、お風呂あがりに渡してくれると……


 流石マリー!私達にできない事を平然とやってのけるぅ!



 ビンのフタをパカッと開けて、腰に手を当てグビっと飲み干す。


 ックゥ~、うまい!昔、パパと銭湯いった時の記憶が蘇るわ。



………あの人は優しかった。今世は十分充実しているし楽しいから、戻りたいとは言わないけれど……でも、あの時神(笑)には『未練はない』と言った。あれは嘘だ。未練はあった。

 でも、過去に戻らない限り、解決もしないことだから、諦めるしかなかったし。ああ、やっぱり白黒つけたかったなぁ。



「お嬢様?どうなさいましたか?」


 こんなこと考えるなんて疲れてんのかな……いや、疲れてるわ。帰ったら直行ベッド行こう、そうしよう。



「少し考え事を。それでは出ましょうか。」

「承知致しました。」



……ん?扉の向こう、まだ人がいるのかな?騒がしいんだけど…。


 嫌な予感がする。あれだ、親に秘密で夜中ゲームしてる時、親が部屋に近づいてくる時の緊張感に似てる。



 ちょっとだけ隙間を開けて……



「お嬢様?」

「マ、マママリー……」


 はい。いきなりピンチです。




 さっきまで王子と戦っていた訓練場のど真ん中に、お父様とお母様がおりました。




???『俺の勝ち!』

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