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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
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28 王子戦当日/王子の心情2




「お嬢様。準備はよろしいですか?」


「え、ええマリー。いつでも大丈夫……でも、この服装はちょっと…」

「いえいえ、陛下もいらっしゃるそうでございますし、やはりお嬢様の美しさを鮮明に押し出さなければ…」


 ムンスっとマリーが、何着ものドレスを両手にかかえて熱弁する。



 今日は、王子の試練……『俺に勝ってからにしろ。』の日。というか、今私がいるのは、訓練場の女子更衣室。



 学院の訓練場は、スタジアムのように周りに観客席があり、そこに王子や他貴族らが観戦しにくるという。


 お父様やお母様はこない。これないようにした。マリーが手回しして、王から通常の三倍は仕事が回るようになっていて、今頃お父様は謎の激務に追われていることだろう。

 お母様も、タールの世話やお父様の手伝いで手一杯。


 お兄様は学院があるけれど、なーんかすぐバレそう。あの人勘鋭いからなー。

 一応、今回のことは内密にということになっているので、人伝でお父様に伝わることもないと思いたいけれど…。


「それにしても、これは……」


 立てかけの鏡に映った、自分の姿を見る。



……これはあれだ。ゴシック・アンド・ロリータ。ゴスロリ。


「この落ち着いた黒と、お嬢様の輝く白髪の対比がいいのです!素晴らしい!眼福!」


 あれ、マリーって魔王に因縁なかった?白髪恨んでなかった?

 目が血走っていて怖い。



「我ながら似合っているとは思うわ。でもね……」


 ただ見るのと、実際にやるのは違う。


 前世では、『ゴスロリかわゆい!萌える!』とか思っていたけれど、実際着ると恥ずい。

 まあ、普段も学院以外では似たような服を着ているけれど、もっと落ち着いた感じのものを選んでいる。


「でも、これじゃ動きにくいです。髪も後ろで結び…」

「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダ」

「怖い怖い怖い」


 どうしたんだマリーさん。たまに暴走する時はあるけれど、今日は増してやばい。



 髪は下ろされ、服は空気抵抗を強く受ける。


…とはいえ、マリーが持ってきた他のドレスはこれ以上にフリフリしているし、相手の王子が制服じゃないので制服は使えない。王様や貴族達の前でジャージというのも無理。


…これが一番ましなのかぁ。ゴスロリ令嬢かぁ。



「仕方ないわ。時間も無いし……マリー、短剣を」

「どうぞ、お嬢様。」


 今回使うのは木刀。でも当たれば痛いし、怪我もする。どんな傷を負っても、完全に治せるレベルの、国内最高の治癒魔術師を呼んだらしいので、本気で王子とぶつかれてしまうのだ。

 短剣欲しいなら協力者(マリー)にもらえば良くね、とは思ったけれど、マリーは魔術等を極めるのは大賛成だけど、魔物と戦うのはあまり賛成できないらしい。



 私の目的は、ややこしくなってきたけれどこう。

 王子に力を示し認めてもらい、短剣を貰う。そして、エデラー区に出現した魔物を、トリスタンと得た短剣を使って狩って、神(笑)からミッション報酬を受け取る。


 つまり、私は私欲のために、こんな大事を引き起こしたと言っていい。



…ならば、逃げるなんて選択肢はない。


 初級魔術、中級魔術、上級魔術…そして、オリジナルの魔法陣を描いた魔法紙を合計六十枚ほど、出しやすいよう服の内側の特殊なポケットにしまう。重さは教科書ほど。


 そして最後に。


 "トリスタン"二錠を、別ポケットへと入れた。



「…行ってきます。」


「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」



 更衣室と訓練場を隔てる扉。


 それを今、開いた。






   ・・・・・・・・






「……来たか。」



 そう呟いた俺に、返される言葉はない。どこへ行っても同じだし、もっとも今回は、この場に他者はいない。


 向こうの扉を開け現れたのは、魔王のような、真っ白い髪の少女。髪飾りのダイヤモンドよりも、その髪は輝いて見える。



 これを言うと立場上大問題になることはわかっているので誰にも言ったことがないが……俺は魔王が好きだ。


 俺の兄は常に上を行く。王位継承権も序列一位、なんでもできる男。


 だからと言って、下の俺が自由になることはない。努力をいくらしても兄上を超えることなどできやしないのに、意味もなく勉学と武術に剣術などなど、様々なことをやらされる。


 魔王は自由だ。他人のことなど考えず好き勝手に破壊を繰り返し、気分でその加減を変える。


 王族という立場に縛られた俺は、溜まったストレスを霧散させることもできない。故に、駄目だとわかっていても魔王に憧れ、尊敬する。


 冒険者も好きだ。なぜと聞かれたら、自由だからというしかあるまい。



「準備は出来たか?」



 白髪の少女に問う。


 こいつは、なんでも魔物を倒しに行くためのダガーが欲しいらしい。

 日頃、俺に魔法陣を描いてくれるので感謝はしている。だが、そのことを聞いた時思わず止めてしまった。なぜかはわからない。



「……大丈夫です。お願いします。」


 勝利条件は、相手を組み伏せるか、降参を言わしめるか……しかし相手は公爵令嬢。この観衆の中でどちらかが一方的となるとまずい。



 スっと、俺も木刀を手に持つ。



「よし。それじゃあ──始めだ。」



 俺は一気に間合いを詰めた───





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