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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
26/55

26 鬼教官は身近に...




「お嬢様、まずは体力づくりから始めましょう。」



 私は現在、マリーに連れられて学院の訓練場に来ていた。

 今日は、日本で言う土曜日で、学院はお休み。自主的に魔術を撃ちに来る生徒もいるみたいだけれど、ルミリエの名で貸し切った。ちなみに、お父様方には何も伝えていない。



「体力づくり…ランニングですね。そのためにジャージ……」


 ランニングは嫌いなんだよね。そもそも運動が嫌いだったし。



「魔術だけでどうこうできる相手ではありませんので。多少なりとも体や俊敏を上げておいて損は無いと思います。」


 先生のように、自らもジャージ姿となって指導するマリー。



「それでは早速、ストレッチを行ってから走りましょう。この施設の端を……三十周ほどが妥当でしょう。終わり次第、剣術の指導を致します。」



 何周とマリーが言ったか聞き取れなくて、十回ほど繰り返し確認した。



 三十…






   ・・・・・・・・






 死ぬ。


 死んだ。いや死んでないけど、死んだ方がマシだわ。



「っは、はふっ、ひゃ」


「お嬢様!あと一周でございます!ファイト!」



 広大な600メートルトラックを三十…18キロメートル。



 朝っぱらからぶっ通しで走ってるからもう限界…限界なのに…



「ペースが落ちておりますお嬢様!"リカバリー"!」


 あああああああ!


 疲労が回復して走れてしまう!


 限界まで疲れて回復して、また疲れて……の繰り返し。おまけに、昨日トリスタンを飲んだ影響か、今日は起きた時から体がだるかった。



「ま、マリーやめて、はっ、しぬ」

「大丈夫でございます!あと七枚残っておりますので、このままゴールを目指しましょう。」


 鬼だ!このジャージ着たメイド、鬼だわ!



 精神的にキツい。肉体的にも、ヒールをちまちまかけられるせいでピンピンしてるし!


 あー脇腹痛くなってきたー、喉もちょっと痛くなってきたー。


「あと少しです、"ヒール"」



 ほら。もうやだおうち帰りたい。



「残り半周!いけますよお嬢様!」


 半周!こうなったらもうやけだ。何がなんでもさっさと走りきって、家でまったり寛いでやる!



 私は走った。輝かしい未来のために、全神経と体力を使って走った。



 あと残り約二百メートル。


「ラストスパートです。頑張って下さい!」



 残り百メートル。


「"リカバリー"!あと僅かでございます!」



 残り五十!


「ゴールは目前です!あの線を越えた時点で終了となります!」




 残り……十メートル。



「はっ、やった、やったわマリー………、」


「お疲れ様でしたお嬢様!」



 0メートル。


「次は剣術の稽古となりますので、汗を簡単に拭いた後、新しい服へ着替えて来て下さい。」



 マリーさんは、鬼畜だった。







   ・・・・・・・・






「お、おわったぁ……」


「はい、今日はこのくらいでよろしいかと。まだ初日ですし。」



 マリーの言い方に含みがあるけど、なんとか地獄のトレーニングを終えられた。


 結果、朝から夕方まで食事もろくに取らずに持久走やら剣の稽古やら、体術や柔軟その他色々…。

 でも、結構さまにはなったと思う。とくに身のこなしが良くなったと、マリーに褒められた。


「疲れたわマリー…お父様方には何と言い訳をすればいいかしら。」

「そこは、私めにお任せあれ。それにしても、お嬢様は飲み込みが早いですね。エレイ様も同じ訓練を前に致しましたが……」

「お兄様が?」


 初耳。


 あの人は大抵なんでも出来ちゃうスーパーデラックス兄様だから、こんな苦しいトレーニングをしたとは知らなかった……。



「エレイ様の場合、一日でステータスが軒並み2ほど向上しましたね。その点、お嬢様はそうですね…今日だけで3ほどは伸びたのではないでしょうか。」


 数字で見ると悲しいなおい。



 あ、でも10歳の子が普通20前後のステータスらしいから、伸び幅はかなりのものか。でもこれ続けるのはなぁ。嫌だわ。死ぬわ。てか死んだわ。



「お嬢様は力はさほどお強くありませんが、かなり身軽なようですので…剣は軽い物が良いでしょうね。」


 おお、やっぱり。王子に頼んだのも短剣だったし、私の選択は間違いではなかったのね。


 それに、トリスタンを飲めば一錠十倍…ステータス3の伸びが実質30みたいなものだし、王子戦までは頑張るのもいいかな。



「明日は魔術を中心に、ダガーを用いて戦う方法を試しましょう。いやはや、お嬢様がその小柄な体躯で戦場を駆け巡る姿、想像しただけで……じょる」


 おっと、マリーさんが何かやばいぞ。たまにマリーはこうなるから困る。仕事人オーラが無に帰る時があるのよね。



 しても、本当に今日は疲れた。明日もキツそうだし、屋敷に帰ったらお風呂に入って食事をして、そしてさっさと寝よう。


……そういえばマリー、最初のマラソンの時全く息切れしてなかったなー…あの人にはもう何も突っ込まないようにしよう。




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