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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
23/55

23 どうしてそうなる。




「ジル様!借りを返す時ですよ!」



「……借り?」



 薄暗く、人目につかない学院の端廊下でそう、王子に向けて、指を指してビシッと告ぐ。



「そうです。私がジル様に毎日渡す魔法陣。その対価をまだ貰っていませんし、そもそも選んですらいません。今日は欲しいものができたので、頼みに来ました。」


「……それ、公爵家でも手に入らないほど高価なものか?」

「いえ、そうではないのですが……お父様やお母様に頼むと、少しばかり問題が……」



 今度、遠足で向かうエデラー区のライルット草原に現れたという魔物。

 神(笑)に課せられた件もあり、私はこの魔物を倒すことにしたのだ。

 勝てるかどうか、で考えると、今のままだと正直自信が無い。


 トリスタンを飲めば、ステータス上では勝るかもしれない、というか多分上回る。二錠も飲めば、100倍なのでかなりの上昇が見込めるものの……実戦したことがない。当たり前だ。自衛隊じゃあるまいし、前世でも無い。



 さらに、それ以前に武器もない!神(笑)は素手でいける、と言っていたけど、力が強すぎた場合は、魔物が『見せられないよ!』な状態になるだろうし、力が弱かった場合は私の方がそんな状態になってしまう………。


 最近は魔術も出来るようになってきたし、今のところ中級魔術のゴリ押しで行こうと思っているけれど、接近戦が心許ない。

 そこで、少しでも確実な勝利にするため、装備も充実させたいのだ!



「私が欲しいものは短剣です。なるべく軽くて丈夫なものをお願いします。」

「いやなぜ短剣?」


 ちょっと一狩りに……とは言えないか。ううむ、理由を聞かれると困るな……。



「ちょっと、殺したい奴がいまして。」

「!?」


 サッ、と王子が身を引く。


 あっ、これは言葉選びを間違えた。やばい、確かにこれはダメだわ。どこの暗殺貴族よ。



「ウソデス、マチガエマシタ。」


「そんな声色では説得力ないぞ………人を殺るのか?」


 どうやら、引いてもビビってはいない様子。これでも王族だもんね、そこら辺のことも既に学習済みかぁ。



「マモノデース」


 そう、棒気味に答えると、王子は少し真剣な顔持ちとなって忠告してきた。



「魔物……危ないぞ、やめておけ。確かにお前は、術式構築に関しては天才だ。俺が保証してやる。だが、実戦は別。お前、体強くないだろ。この前も、少し走っただけで倒れたしな。」


 くっ、反論できねぇ!6歳のくせにやりおる!


 てかコイツ、本当に6歳なの?天才+英才教育でこうなったとしても、普通に大人と渡り合えるんじゃない?


 貴族の子は、温室育ちの影響か、我儘な性格となるケースが多い。その反面、教育に関しては高水準となるため、歳に反してボキャブラリーも多い。

 ロローナちゃん達も、癖はあっても頭はかなりいい。イラシャズだってそうだ。


……でも、王子は別格なんだよなー。


 なんというか、よく分からないけど「さすが王族!」って感じかな?


「ステータスで言えば、耐や力、俊敏が弱い。魔とかはかなりのものかもしれないが……」

「……心配して下さるのですか?」


「なっ………まあ、そうだ。仮にも知り合いが死んだら、後味が悪いからな……」



 そっぽを向いて、少し恥ずかしそうに呟く王子。

 こいつの羞恥心のポイントが分からない。お姫様抱っことか簡単にするくせに!


「とにかく、ダメだ。他のものにしろ。」


「どうしても、ですか……?」


 ダメ元で聞いてみる。

 効かないだろうけど、上目遣いと甘えるような声もプラスする。お父様ならこれで一発。ついでに、王子の好きな髪の毛もサービス。



「っ……。どうしても、と言うなら………」


 案外効いたみたいだ。ナイス、美少女フェイス!いやぁ、挑戦したかいがあったというものですよ、ええ。家族以外にやるのはめっさ恥ずかしいですよ。


 そう、既に貰える気分でいた私の内心を、吹き飛ばすような一言が王子の口から放たれた。



「俺に勝ってからにしろ。」



 どこの守護者だよ!!!



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