21 家の力と私
時間不定期ですみません...
目が覚めると………時計が14時を指していた。
「……っは!私は何時間寝て…」
「ルミリエ様ー!!!」
「ロ、ロローナさん?」
「心配しましたよー!朝にジル様が『あいつ倒れた』って先生に言って、それからずっとルミリエ様ねてたから……」
記憶が脳内で、鮮明に映し出される。
倒れて、王子に運んでもらって、その後すぐに寝た。その時の時間は9時くらい。
途中で一回起きた気がするけど……でも、そんな寝ちゃったか。授業はサボり判定じゃなけばいいけど……。
「おっ、起きたの。ルミちゃん、だいじょぶ?」
むしゃむしゃ果物を食べながら、リラちゃんが聞いてきた。自由な子だなー。
「もう大丈夫です。二人とも、心配してくれてありがとう。」
「いえいえ、私はなにもできなかったですし……」
「でも、ロロちゃんは授業中もずっと心配そうな顔してたよ。」
リラちゃんがニヤつきながらそう言うと、ロローナちゃんの顔が少し赤くなった。
「だってだって、友だちですしそりゃ心配になりますよ………」
「今いない皆も、なんだかすごい心配してたよ。ただ……」
ただ?
「イラシャたちがいつも以上にうるさかったね。殿下にまとわりついて離れなかったよ。」
「そうですそうです!やっぱり、ルミリエ様というきょうだいな力がないと、あいつら抑えられないですよ!」
ええ……私そんな力ない。そもそも、王子とはなるべく不干渉で行きたかったから、こっちから近づいたこと無いし。
イラシャズは、異様に王子に執着しているというか………とにかく、かなり周りに迷惑をかけている。
最近では、授業中でも王子に話しかけるほどになって来た。
「それにあの人、ルミリエ様が倒れたって聞いた時、すごいニヤってしてました。その後、『どうせさぼるための嘘でしょう。ジル様の手をわずらわせるなんて不届きな女ね。』って大声で言って、先生に怒られてました。」
「そう………なんだか、ごめんなさいね。」
二人曰く、イラシャズは今日だけで他にも何度か問題行動を起こしたみたいで、色々と大変だったらしい。
私がいなかったからかどうかは関係ない……だろうけど、かなり内容が酷かった。
王子に近づいた他の子を蹴ったり、叫んで追い払ったり、『私、ジル様のいいなづけですから。』と嘘を居丈高に宣言したり……王子も可哀想だなぁ。
「でも、明日はルミリエ様もいるし、安心ですね。」
「そうだねー。抑止力になるよね。」
「もう、二人とも……私なんかじゃ、大して変化なんてないわよ。ほら、仮にもイラシャさんて伯爵家のご令嬢でしょう?いくら私が公爵家の者だとしても、そこまでの力は……」
そこまで言うと、驚いたことにロローナちゃんが勢い良く反論してきた。
「いいえ!ルミリエ様はわかっていません!この国において、五天貴族の方々がどれほどの力をもつか………」
「そそ。私なんて侯爵家だしー。イラシャのやつにも家柄では劣っちゃうけどさ、その差なんて、ルミちゃんとの差と比べたらナメクジみたいなモンだよー。」
ナメクジ……小さいって意味でいいのかな?
この国での、五天貴族の立ち位置はちゃんと知っている。
大きな五つの区画、それぞれの領主が公爵家であり、その五の大きな公爵家が"五天貴族"。
それぞれの領の中に、さらに他の貴族たちの領が入る形となっていて、五天貴族はいわばトップだ。社長、村長、市長、県長。
ジエム王国は世界的に見て、総合的な規模の序列では、三十ほどある国の中で第四位。人口では、第三位を誇る大国。総人口は、6000万くらいらしい。
ここで、本で知ったジエム王国の実態について説明しよう!
・ジエム王国は、東を海、西は森林に囲まれた王権国家の大国である。
北、東、西、南、中央と五つの区画があり、基本出入りはイドルナクス区かフェーグン区……つまり、東か北から入ることが勧められている。
北のフェーグン区は冒険者や露天商が多く、常に熱が滾る場所。数多くの迷宮や、区内の森や山岳、湖もあるため、人の出入りと金の移動は激しいものの、人口は600万人と少ない。
東のイドルナクス区は、商業が盛んな地域であり、個人で経営する店なども多く、住宅街が広がっている。また、工場もいくつかあるため、古きを重んじる傾向の強いこの国にしては、先進的な雰囲気が感じられる。海に面しているため、貿易や運搬業も盛んである。人口は最大の2500万人。
西のエデラー区は、農業地域であり、広大な平地が広がる自然豊かな土地である。特産品は羊毛や果物、トウモロコシなど。これは、西に山脈が連なることも関係している。この山を越え、国へ足を踏み入れる猛者も少なくない。人口は1200万人ほど。
南のチェーク区に関しては、国も全て把握はできていない。チェーク家の周りだけ治安はいいものの、他を見ると貧しい人々が多く住んでいる。生活に困った人々がここへ来るものの、イドルナクス区とは急流の川、エデラー区とは山、そして中央とは境目の貴族が立てた大きな壁で閉じ込められ、出られなくなりそれが代々続くことでこうなってしまった。人口は推定1000万人。
中央のセルグランス区は、この国の中枢とも言える区である。多くの特権階級の者が住まい、それを守る兵士も多い。王城に最も近い区であり、我儘な貴族を統括する現領主:グロウル·セルグランス=ダイヤモンドは、苦労が絶えないという。人口は、最小の300万人。
軍事力は、帝国や魔技大国に劣るが、魔王軍に対抗できる戦力を保持している。エデラー区とイドルナクス区がこの国の防衛ラインであり、時たま魔王軍がちょっかいを出してくることがあるが、エデラー区には強力な亜人族、イドルナクス区には腕利きの冒険者がいるため落とされることはない。
………とまあ、こんな感じだった。
つまりは、世界で三、四番目に大きな国の、さらに五等分した区域の長の娘ってことだ。
でも、実際日の目を浴びるのはお兄様だろうし、私にはそこまで力はない。と割り切っていたけれど……。
「そう……ですね。確かに、あの人の行いは目に触ります。明日、少し注意しておきましょうか。」
………もっと、私は私に自信を持った方がいいかもしれない。前世の自分と重ね合わせて、そう思った。