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そこな令嬢、ご満悦!  作者: シラスイ
1/55

1  死んだ!そして転生だ!

初投稿になります。何卒...






 私は、転生をした。




 転生。記憶を持って、転生。その事実を、ついさっき繰り広げられていた、神(笑)との会話を思い出しながら、噛み締める。


 目の前で親らしき人物が何かを言っているけど、何を言っているのかさっぱりだし、そもそも生後数十分足らずで声帯が完全に整っているはずがない。

 うん、さっきまでの浮かれていた気持ちが嘘のように、心が冷静だ。やっちまったという気持ちが半分、やってやったぜという気持ちが半分ってところかな。


「****#=∥∥****」


 異世界語が、わからない。どうやら私は、早くも重大な悩みを見つけてしまったみたいだ。赤ちゃんなのに胃が重い。




 ……よし。今はやることも出来ることもないわけだし、ここまでの流れでも思い出していよう。確かあれは………





   ・・・・・・






 突然ですが、こんにちは!



 私、星城(せいじょう)龍美(るみ)17歳。突然、変な男の人に拉致られて困っています。



『いや、拉致じゃないから。誤解だから。』


 この胡散臭い男は、受験勉強の最中、突然目の前に現れた。


 それはもう、本当に、唐突に。唐突過ぎて、泥棒か何かかと最初は思った。今も思ってるけど。



「いやー、誤解て………こんな密室空間に閉じ込めて。何が目的なんですか?この露出大好きコスプレ変態男!」


『神に対してコスプレとは………いい根性だね君。』


「うわぁ………神を自称するなんて何てイタイ…」


『はぁ………露出は、神の衣の設計上仕方ないんだけど……もういいよ。話を合わせてたら時間がいくら経っても足りないし。早速本題に入らせて貰ってもいいかな?』


 呆れたように男が言う。……ん?本題?って…



「……本題の前に、この状況の説明を。」


『静かにしてくれたら、ね。僕は誘拐犯なんでしょ?逆らったら危ないんじゃないかな。』


 手を広げ、余裕の微笑?苦笑いを見せる自称神(笑)。


「はい、静かにします。」


 そう答えると、自称神(笑)はコホンと咳払いを一つ。『誘拐犯じゃないけどね。』と朗らかに付け足し、私へと向き直った。




『よろしい。あ、ちなみに、静かにっていうのは心の声も、ね。考えてることは読み取っちゃうから。』

「わかりました。」


……心の声、読まれてたのか。






 そうして、自称神(笑)が説明したことは、なんとも嘘臭く、そしてそれはもう驚かざるを得ない内容だった。



 私は受験生なので、部屋で勉強をしていたのだけど、なんと私はぽっくり逝ってしまったらしい!


 部屋にはエアコンなんて無し、扇風機すら無い狭い密室部屋。おまけに真夏の暑さの3コンボ。疲れて寝てしまった隙に、部屋の温度はグングン上昇、体温がオーバーヒートして終わりだと。なんと呆気ない死に様……車内に残された赤ん坊と同じじゃあないか。



 次に、自称神(笑)は、本当に神様だということ。誘拐犯では無かった。

 実際に目の前で色々見せられたので、疑いようも無い。超常現象というものを私は見た。感動した!自分の死体を見た時は複雑な気持ちになったけど。

 そして何より………



『そう、異世界に行けるチャンスだよ。』



 どうやら私は、あの夢の異世界転生の実験台…もとい、テスターとなれるらしい!なんということでしょう!夢じゃなかろうな………

 あとこの人から"自称"はとってあげてもいいかな。神(笑)だ。



 神(笑)曰く、『いや、ね。最近、色々な世界で問題が多発しててね。僕達も何かしたいとは思っていたんだけどさ…………。

そこで最近、"異世界転生"なんて概念が君の世界で広まっていたから、そのアイディアは良いと思ってさ。現地の動物に干渉は出来ないから。

でも、理解が浅いまま強制的に力を与えて、転生や転移なんてさせたら魂が壊れちゃう。そこで、君みたいな人を対象にデータを集めることにしたんだ。もちろん、嫌だったら別にいいよ。君は天国行きになるけどね。』とのこと。


 これは、千載一遇のチャンス!逃してやるものか。



『君を送るとしたら、そうだなぁ……あそこがいいか。剣と魔法……いや、魔術の世界だけどいいかい?』



 イエスイエス!



『あ、あと特典としてチートな能力やら道具やらが欲しかったら一つだけいいよ。』



 なんと!貴方が神か。



『さっきから言ってるんだけどね。それにしても興奮してるね。そんなに嬉しいの?』


 それはもちろん!私の古の後悔期(中学二年生)は過ぎ去ったとはいえ、こんなラノベみたいな展開は憧れですから。


『そうかい。憧れ、と言えば、今までここに来た女の子達は僕を見たらキャアキャア言っていたけど……君は?』


「まあ、イケメンだなとは思いますけど……タイプじゃないです。」


 あと、ナルシスト臭すごいし。


『ふうん、君こそ美人なのに……ちょっと残念な人だね。』


 読み取られた………はいはい。そりゃどうも。


『つれないなあ………そうだ、未練とかない?親御さんとか、お友達とか。チートはないけど、何かの縁として、この世界に送り返すことも出来るよ。』


「あー……友達は気になるけど……親は別にいいです。」


『おや、なんでだい?それが理由で、異世界転生を諦めた子達も多いんだ。』



「………あまり恵まれたものではないので。これでいいですか?」


『……それはごめんね。軽率な発言をした僕が悪かった。機嫌を治してくれないかな。』


 うっ………そんな悲しげな顔をされたら……


「……許します。」


 神(笑)は、心底良かったというような表情をした。イケメンが映える。そこらのモデルより断然かっちょいい。私はなんとも思わないけどね。ただ、嫌な気持ちにはならない。



『それで?どんなチートがいい?僕としては、それを使ってそこの世界の魔王……できれば魔神も殺して欲しいから、戦闘系が一番いいかな。』


 うーん、どうしようかな………魔神を殺せと言われてもな……会ったこともないし、そもそも戦いなんて現実味がない。アニメの戦闘描写と同等に考えていいのかな……。


 戦いは、あまりしたくないのだけど………あ、足技ならいけるかも。これで何人もの男子を泣かせてきたのだ……"転倒魔龍"なんてあだ名まで付けられて………あ、目から水が。



『ん?それはなんだい?』


「え?」


 思わず手元を見ると、日本でNO.1の名字製薬のエミネ○ンの瓶ががっちりと握られていた。



『……貧血なのかい?』

「……はい」


 ちょっと恥ずかしい。だって、現実世界ではエミ○トンを握りしめて突然死してる私がいるということだ。なんてこった、乙女にあるまじき醜態を……


 そう私が顔を赤らめて恥ずかしがっていたら、神(笑)が思わぬ提案をしてきた。



『せっかくだし、それをチートアイテムにしよっか。』

「は?」


 えっ?これを?この真っ赤な錠剤が入った、これを?


 どういうこっちゃ。



 神(笑)を微妙な目で見ていたら、ちゃんと説明をしてくれた。


『いや、ここで材料無しに、無から生成したものだと、材料ありよりも格段に能力が落ちるんだ。それでも十分強いんだけどね……ちょっとそれに手を加えるだけだよ。大丈夫。』


 なんだか新手の薬物勧誘みたい……



「ちなみに、どんなチートアイテムに?」

『ちょっとそれ貸して』


 言われるがままにエ○ネトンを渡す。



 それを手で包み込んだ途端、淡い光を放って………


「って、勝手に作ったの!?」

『ごめんごめん、謝るよ。でも凄いのが出来たよ、はい。』


 こいつ………やけにイケメンなのが腹立つわぁ……柔和な笑みの下に、何が隠されているのやら……ちょっと転ばせてやりたい。



「で?どんな薬になったの?」


 見るからには、あまり変わっていない。強いて言えば、ロゴが変な紋章になっていたり、名前が"トリスタン"になっているくらい。あと、成分表示やらが無くなって、注意事項と効果が表記されている。錠剤は真っ赤のままね。



『それは大体裏に書いておいたよ。我ながらかなりのすごいものが出来たと思う。』



 ふうん………どうだか。



『勝手に作ったから、不満かい?』

「まあね。」



 もうちょっとじっくり考えたかったんだけどな……例えば、オシャレな魔法杖とか、どこぞのユニークなスキルとか。あ、それならあの「お前で」でも良かったかも!こいつ神だから役立ちそうだし。


『残念ながら僕はパーティーに入れられませーん。もしかして僕に惚れちゃった?』

「そういうことは他の女の子に言って差し上げて下さい。」


 なに言ってんだか……



『では、早速転生の儀を始めましょうか。とはいっても、そこの扉を通るだけですよ。さあさあ』

「え、急に……力強っ…」


 にっこりと笑いながら扉にグイグイ押してくる。登場から今まで、本当に突発的なやつ………



「自分で行きます。………その、色々とありがとうございました。」

『いえいえ、これくらい。あ、ステータスに補正をかけておいたから、これから頑張ってね。』


 異世界転生なんてする日が来るとは、夢にも思わなかった。

 神(笑)に深くお辞儀をして扉を開ける。先は眩しくて見えない。


 この先に、第二の人生が……!


 "トリスタン"を手に、深呼吸。そして私は、異世界への第一歩を踏み出した─────






 そうして、冒頭のベビーシーンへと繋がるのだ。



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