最初に届いた手紙
本作品はフィクションです。
作中の願いを叶えることによる影響に関して当方は一切関知せず、かつ責任を負うことはありません。
君へ。
この手紙がどのような形で君の目に触れているのか、私にはわからない。
私が書いた直筆の手紙だろうか。
それともダイレクトメールに転写されたものだろうか。
どのような形であれ君の目に届いたのならば喜ばしいことだ。
私には君がどのような人物なのか、わからない。
若い者か、老いた者か、性別も国籍さえもわからない。
だがそれでも、この手紙は君へと宛てたものだ。
私の名前が記載されていないこの手紙。
宛名さえもない手紙を目にした君が、中身を確認してくれるのか、私にはわからない。
それでも私は、君へ私の財産を譲りたい。
まるで詐欺のような話に思えるだろう。
疑わしく思うのは当然だ。
だが、私は君から金銭を求めたりはしない。
申し訳ないが、君がどれほどの財を成していたとしても、私とは比ぶべくもない。
その事実を私は確認するまでもなく知っている。
私とは、そうした人物であったと思って貰いたい。
そう、過去形で語ることになるが、間違えてはいない。
この手紙が君の目に触れているのならば、私は既に君と同じ世界にはおらず、死出の旅に出ている。
私の財産を譲り受けて貰う相手を、私自身で見つけ出すことは出来なかった。
金があったとしても、出来ないこともあるのだ。
そして、老いた。床に臥せり、衰え、朽ちるのを待つのみになり、託すことにした。
託された者がその責を担い、この手紙は君の目に届いたわけだ。
君よ。
どうかこの私の、最後の願いを叶えて欲しい。
私が生きた証が消えて無くなってしまう前に、私が築いた財産を受け取って欲しい。
そのために、君にはいくつか頼み事をすることになるだろう。
無理な事を頼みはしない。
重ねて言うが、金銭を要求することはない。
手紙は何度かに分けて、君の下へと届くだろう。
その手紙を待って欲しい。
そして、手紙に書いてあることを、出来うるならば行って欲しい。
そうなれば、私の財産を君に譲る手続きが終わる。君が私の財産をどう扱うのかは、君の自由だ。
まずは、最初のお願いだ。
私から受け取った手紙について、財産を譲り受けることについて、誰にも教えないで欲しい。
まずはそれだけでいい。
君が私を信じてくれる事を願っている。
しばらくすれば次の手紙が届くだろう。
待っていて欲しい。
君へ。
捧げよう。
本作品はフィクションです。
作中の願いを叶えることによる影響に関して当方は一切関知せず、かつ責任を負うことはありません。




