異世界生活の始まり 2
第2話となります。基本的には「同じサブタイトル+数字」という書き方です。それではどうぞ。
桜のような香りが鼻腔をくすぐります。まばらに土の色が見える草の絨毯が視界いっぱいに広がり、辺りには青々とした木々が乱立しています。日差しはあまり入ってこないせいか薄暗い。より正確にいうなら、日差しの直接入ってこない部屋のような明るさです。本を読むには暗いですが、生活する分には十分な明るさかな?
なぜこんなにも明るさの説明をしているのかというと、それ以外には何も述べることがないからです。実は日本ですと言われても頷いてしまうくらい特徴的なものがない。本当に異世界なのでしょうか?
「取り合えず、女神さまはこっちの話に乗ってくれたようでよかった。」
最初に転生と口走ったおかげで危うく転生させられるところだった。「転移」場所を指定したのは効果があったようで何より。また1から人生やり直しなんて堪ったもんじゃない。いや、完全に生まれ変わるのなら0からなのかな?そもそもやり直すほど生きてないけど。
「お約束でも試してみますか。ステータスオープン」
その後もいくつか鍵となりそうな言葉を言ってみるも何も現れず。
「本当の意味で地球と同じルールが適応されているって感じかな?」
そうすると私の魔術や魔法が何なのか確認する手段がないような気がするんですが。女神様?
「あぁ、胸ポケットに手紙か。口で言ってくれてもいいのに」
可愛らしいピンクの封筒を開くとこれまたピンク色の便箋が姿を現した。本当にピンクが好きですね、女神様。
『聲くんがこの手紙を読んでいるころ、私は寝ているでしょう。あ、今破こうとしましたね!短期は損気ですよ、聲くん!』
貴方は何が目的なんですか。人をイラつかせることが生き甲斐とかではないですよね?
『冗談はこの辺にしておいて。あなたの知りたい情報と大まかな地理を記しておきます。初回ボーナスだと思ってありがたく読んでください。』
『まず、魔術と魔法です。聲くんには浄化魔術と水魔法を授けました。能力などは自分で模索するように。可能性は無限大です!
そして現在地ですが、大陸の北西部、人国家と森国家の中間あたりです。北東に向けて1日歩けば人国家に属する小さな街に辿り着きますよ~。着替えや食べ物は近くの木に、袋に入れて吊るしておきましたのでご自由にどうぞ。
あ、そうだ。言語翻訳魔術を事前に掛けておきましたので第一町人を発見しても躊躇わず話しかけて大丈夫ですよ♪あなたの女神エシャクより』
ありがとうございます。もっと初回ボーナスがあってもいいと思うのですが、私だけでしょうか。きっと違うはずです。違いますよね……落ち着きました。
まずは着替えをしましょうか。雄大な自然の中、服を脱いでいく私。変態ではないです。
入っていたのは中世ヨーロッパを思わせる一般庶民の服。肌色よりも幾分か濃い色合いのシャツに黒っぽいズボン。太めの革ベルトにブーツのような靴。肌触りは思っていたほど悪くないですね、さすがに現代日本ほどの良品ではないですが。
食糧はお決まりの固いパンにチーズ、スモークされた何かの肉が3つずつ。ナイフと木製コップのおまけ付き。コップは必須でしたか?
「どうしよう。魔法が使えるか試してみるか?さっさと町に行ったほうが良い気もするけど」
あの女神は肝心なことを言わなかったが十中八九、魔物かそれに類するものがいるのでしょう。いないなら最初に魔法を授ける必要もないわけですし。
「水魔法ねぇ。たぶん、ウォーターカッターとかはできないんだろうなぁ。地球ルールなら距離が少し離れるだけで、勢いの強い水鉄砲が関の山だろうし。飲み水に困らない程度に考えたほうが良いかな」
だからコップですか。ちゃんと考えてたんですね、女神様。
となると魔法が発動できるかどうがに掛かっているわけですが、鍵言葉はいらないって方向性でいいのでしょうか。何気にひとりで横文字を喋りまくるのも来るものがあります。中二病ではないのです。
「水を出でよ~。本当に出たよ、人間蛇口の出来上がり~」
虚しい。
30分程度魔法で遊びました。どうやら頭の中で想像すればその通り発現するようです。海をイメージしたときには不発だったので、私の熟練度では大規模過ぎるのか、魔力みたいなものがあって私の所持量では賄いきれないのか。どちらにしても魔法を使用したことで頭が痛くなってきましたから、何かを代償に発現しているのでしょう。頭が、痛い。
「ある程度は動かせるみたいだし敵の顔にぶつけて怯ませるくらいには使えるかな?よしっ、実験終了。北東に進んで見ますか」
因みに浄化魔術は使えませんでした。浄化のイメージってなんですか……。「洗浄」じゃないあたりがネックなのか自分の体をきれいにするイメージでは駄目でした。もっとイージーモードを希望します、女神さま。
皆さん読了、お疲れ様でした。4月28日の投稿は5話分を予定しています。どうぞお楽しみください。