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SHINE

作者: 山田えみる


「もうあいつのことなんか知らない! 死ね!」


 わたしはもう何本目かわからない『ほろ酔い』をテーブルに叩きつけてそう叫んだ。わたしなりにずっとずっと我慢をしてきた。でも、もう限界だった。


 『SHINE』


「ちょっと。お姉、うるさいよ。勉強のじゃま」


 妹はそう言って口を尖らせる。わたしがこういった愚痴を吐くのはいつものことなので、妹は自分の分のカルピスを作ってテーブルに腰掛けた。わたしは経緯を話す。酔っ払っているから話の要領を得なかったが、妹はうんうんと聞いてくれた。


「いいひとじゃん。しっかりしてるし、ちょっと厳しいところもあるけど面倒も見てくれて。まとまったお金だってくれるんでしょ?」

「あんたにはわからないよ。まだ相手もいないでしょう」

「まだ高校生だもん。じゃ、おやすみ。明日は起こしてあげないからね!」


 妹はそう言って、二階の自室へと上がっていった。わたしはふらふらする頭を押さえながら、新しい『ほろ酔い』に指をかける。たしかに彼は優しいのかもしれない。妹の言っていることは正論だった。わたしは彼なしでは生活ができない。


「だからってさぁ!」


 彼はそれをわかっているのだ。たまに優しいところもあるけれど、無茶振りばかりで、わたしのキャパシティを超えたことばかり要求してくる。いつも夜遅くにならないと帰してくれないし、いくら彼のことをたいせつに思っていたとしても、毎日こんなんじゃ疲れてしまう。とても高校生の妹には聞かせられないようなことだって、たくさん要求された。


 彼とは将来を真剣に考えている。十年後も、二十年後も。だから、いつまでもこのままではいられない。そう思って、鞄の中に放置をしていたスマホを取り出した。


 ひとことがつんと言ってやろうと思ったけど、途端にその気持ちは失せてしまった。彼については不満もたくさんあるが、助けてもらったことだって数え切れないほどある。彼がいなければ、わたしは生活ができない、それは紛れもない事実。


 あの日、わたしは彼との輝ける未来を夢見たのだ。


「あ、あの。弊社……、ごめんなさい」 

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