崩壊 3
次の日。
「ねぇナーシェ、烈毅知らない?」
「いいや、知らないけど……部屋にいないの?」
「それがいなかったの。私が朝ご飯を届けようと思って部屋に行ったんだけど、ノックしても返事が無くて。それで勝手に開けて中を見たら烈毅はいなかったの」
「さぁ、私は見てないわ。ミーシュとかファイアとかなら知ってるかもしれないわ」
「そう、ありがと!」
ルノは、駆け足にミーシュやレーナ、ファイアへと尋ねてみたものの、一人として烈毅の事を見たものはいなかった。
「どこいったの……烈毅」
冷めきった朝食を机へ起き、各自特訓へと行くのであった。
同時刻、烈毅は―
「お前らの体は入れられなかったけど、せめてもの償いだ。これで許してくれとは言わない。ただ、安らかに眠って欲しい」
そこには、岩を削って作られた墓石に、烈毅の友人のそれぞれの名前を掘った物が置いてあった。烈毅は、それぞれの墓の前で手を合わせ、心の中で感謝と謝罪をする。
墓参りが終わり、烈毅はゆっくりと立ち上がると、足早にその場から立ち去り、ある目的地へ向けて行くのだった。
時間はお昼時、ナーシェ達は―
「ルノ、結局烈毅は見つけられたの?」
「それがいなかったのよね〜。もうそこら中走り回ったのに気配すら感じなかったわ」
「きっと気分転換に行ってるんだわ。色々あったし、今はそっとしといてあげましょ」
「そうね。あっ、でも外に変な物があったのよ」
「変な物?」
「そう! 岩で作られたってのはわかるんだけどね、見た事もない形で見たことも無い字が書かれていたの!」
「何それ、変なの」
「多分烈毅が作ったんだと思うんだけど、あれはどういう意味なんだろ?」
「そんなの、烈毅が戻ってきたら聞けばわかるわよ〜。さ、特訓に戻りましょうか!」
「そうね!」
皆が特訓へ戻る中、ファイア一人はじっと座っていた。
「ファイア〜、ぼーっとしてないで、とっとと始めるわよ〜?」
『ああ。先に行っててくれ』
「は〜い」
ナーシェは、頭の後ろに手を組んで歩いて行く。そんな中、ファイアが考えるのは烈毅の事だった。
『烈毅、お前のその行動はさらに事態を悪化させることになるんだぞ……』
同時刻、烈毅は―
「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいかい?」
「なんだい? 見た感じ冒険者だが、なにか質問でもあるのかい?」
「ここ最近で死刑された人がいたろ? 彼らは今も見れるのかい?」
男達は、顔を見合わせ大声で笑い出す。
「ああ見れるとも! 最も、魔族側にくっつこうなんざ考えた者の死体なんて笑い者にしかならねぇがなぁ!」
「そうかい……ありがとう」
「いいって事よ!」
フードを被り、如何にも下級の冒険者を装った格好をし、情報収集をしつつ彼らの死体をこの目に焼き付けようと動いた烈毅は、人混みの中を掻き分けて行く。
メルクリアでは、色々な情報が入り交じっていた。先程の様に、魔族に絡んだことでの死刑や、反逆者に加担したせいでの死刑、過去に重罪を犯した罪での死刑など、理由は様々だった。
他にも、いい情報は多く手に入った。いつかは未定だが、ここ数週間以内に、人村烈毅一行の一斉捜索が行われること。全国に検問が置かれる事。冒険者育成協会の設立など、様々だ。
それならこちらも対策を立てればいいだけの話だが、まずは特訓第一に考え、その他はまた後だ。烈毅は、ある程度の情報が手に入れた後、目的の場所へと向かった。
目的地手前になり、足取りが重くなる。顔をあげられない。このまま何も見ず、引き返したくなる。だが、それを彼らは許さないだろう。烈毅は、一度深呼吸をし、顔を上げ、歩き出す。
目的地に近くなるにつれ、人が多くなる。それと共に、嗅ぎなれた匂いが鼻に微かに入ってくる。
「すいません、通してください……すいません」
そして、柵が貼られた一番前まで来た烈毅は、その目の前の彼らを見て、息が詰まる。
首から下は地面に転がり、そして首は木製の机の上に置かれている。上にはハエが飛び交い、鴉が首から下の胴体を突いている。
もう喋る事のないその首。目が開くことはない首。それなのに、烈毅は目が合っている気がし、何かを訴えられているような気がすると同時に、何か託されているような気がした。
「お前らに会えた事を、俺は今でも昨日の事のように鮮明に覚えている。お前らの仇は絶対に取る。だけど、お前らはきっとこう言う。『それは、お前のするべき行動じゃない』って。だけど……だけど俺は、お前らをこうした奴らを許さない。だから、今だけは許してくれ」
目の前にいるハエや鴉に、烈毅は強烈な殺気を放つ。その殺気に当てられたハエは落ち、鴉は泡を吹いて気絶する。
烈毅は、フードを深く被り直し、身を翻して第二の目的地へと向かう。
この行動を、ナーシェ達が許さないのは分かっている。だから言わなかった。なら何故やるのか、やらなければ良いだけではないか。そんな事は百も承知。だが、今の烈毅には、抑えられるような事では無いのだ。
烈毅は、身に付けていた装備を捨て、着々と準備を進めていくのであった。




