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一難去ってまた一難 2

 二人は無言のまま、元いた場所へと帰りの道を歩いた。下を向きながら、ただキュウ達のことを思いながら。海から運ばれてくる風が、今は鬱陶しいくらいに感じた。


「……また会えるかな」


 小さな声でそう呟くミーシュ。先程よりも涙は引いたものの、まだ少し泣いているのか、肩がヒクヒクと動いている。


「会えるよ。絶対にな」


「……うん。いつまでも泣いてちゃダメよね」


「いいんじゃないか? 今はな。ただ、あいつらの前では泣くなよ?」


「わかった……」


 それから、ひたすら歩いた。肩を並べて、ゆっくりと、ミーシュの歩幅に合わせて。


 そして、皆がいるすぐ側まで来て、烈毅は歩みを止める。ミーシュの肩を掴み「もう、泣くな。みんながいらない心配をしちゃうからな」と言う。ミーシュも、コクリと頷き、一度深呼吸をする。


「…………よし。もう大丈夫。ありがとう、烈毅」


「いいよ。これぐらいしか出来ないからな。俺は」


「優しいのね」


「ああ。……じゃあ、行く……か?」


 そこで、烈毅は異変に気づく。


「なぁ、ミーシュはファイアに幻惑魔法を代わりに掛けてもらってるんだよな?」


「そうだけど?」


「その時さ、魔力を感じられないようにしてた?」


「当たり前じゃない。それでバレちゃ意味が……ない……」


 そして、ミーシュも気づく。


「気づいたか?」


「ファイアも流石にこんなミスはしないと思うわ」


「……って事は、だが……」


 そこまで言って、二人は最悪の場合の事を考える。もしも、もしもこれがうっかりミスで魔力を感知させてしまってたとならまだ良しとしよう。だが、これが意図的にされていたとしたら――


「ミーシュ、もしかしたらのことを考えて、お前は俺の"異次元アイテムボックス"の中にいろ。魔法領域内に入った瞬間に瞬間移動させられる魔法だったら助けられないからな」


「そ、そんな魔法聞いたことないわ」


「そりゃそうだ。だって、それは『賢者』にしか使えないからな」


「嘘……もし、そうだとしたら……!」


「ああ、だから早く入れ」


 烈毅は、そう言ってミーシュを"異次元アイテムボックス"の中へ入れさせる。ここなら、外部からの影響を完全にシャットアウトする。緊急避難場所には持ってこいだ。


 念のため、ミーシュにいつでも状況報告できるよう、"念話"は繋いでおく。声を出さなくても言い分、気づかれにくい。それに、何も知らないよりは、少しでも知っておいた方が、考え方は変わるからだ。


「じゃあ、行くぞ」


『うん』


 烈毅は、何事も感じてないかのような顔で、スタスタと歩みを始める。段々と、その魔力が強まっていることを感じることから、もうすぐだと予測できる。


「魔力が強まって来てる。多分、もうすぐ接触する」


『わかった。気をつけてね』


「あいよ」


 魔力の目に見えない薄い壁を通過した事を、烈毅は感じ取る。その瞬間、何も無い空間から、烈毅を囲むように、数人の冒険者が現れる。


「まさか、最初に見る顔がてめぇらとはなっ!」


 烈毅は見えない速度で空気を殴る。その拳圧が、冒険者の溝落ちに直撃し、呼吸が困難になり、その場に崩れ落ちる。


 その時、烈毅は自分の『変化』に気づく。


 あれ、何か前よりも体が軽くなってる?


 今は、特にユニークスキルを使っていると言う訳でもない。だが、何故が体が軽いのだ。


 そして、その場に腹を抑えて倒れている冒険者を一人だけ立たせ、尋問する。


「おい、何故ここがわかった?」


「誰が貴様なぞに……」


「おいおい、俺は穏便に済ませたいんだよ。死にたくないだろ?」


「穏便? 魔王の子供にそんな事ができる訳ない」


「あれ、俺いつから魔王の子供に昇格したの? まだ魔王の使いの方が良かったんだけど」


 烈毅が掴んでる手を、必死に振り解こうと、その冒険者はひたすら暴れ続ける。


「離せっ!」


「はぁ……まぁいっか。聞いても意味なさそうだし、ご苦労さん」


 烈毅は、その場の全員を気絶させてから、皆の元へ走って駆けつける。だが、ここにメルクリアの密偵がいるとなると、皆が無事なのかは分からないが……。


 そして、その場所へと到着するや否や、烈毅はあまり考えたくはなかった状況が、目の前に広がっていた。


 十字架になった木の棒に、ルノ、レーナ、ナーシェがそれぞれ括り付けられており、横にはボロボロになったファイアの姿。そして、その周りには大勢の冒険者。


「烈毅! 来ちゃダメ!」


 烈毅を見つけるや否や、そう叫ぶルノ。烈毅には、全く言ってる意味がわからなかった。


「なんで……」


「烈毅後ろ!!」


「やばっ!」


「もーらった!」


 グサリ。


 突然の腹部への痛み。口の中に広がる血の味。そして、その血を吐き出し、痛みを感じる腹部を触る。


「……血?」


「あひゃひゃひゃひゃひゃぁあ!? 殺しちゃったァぁあ!?」


 剣は貫通している。そして、その剣は抜かれ、烈毅はその場に力なく倒れる。


「烈毅ぃぃぃいいい!」


 ここに来て早々、見たくない状況を見て、見せたくない所を見られ、烈毅は少し悲しくなる。


「すま……な……い」


 そして、烈毅は動かなくなる。


「あひゃひゃひゃひゃひゃぁあ!? これでいいですか王!?」


「ああ。良くやったキャンザル」


「あひゃひゃひゃひゃひゃぁあ!? ありがとうございます!?」


「烈毅が……烈毅がぁ!」


 泣きわめくルノ。隣で、何も言わず涙を流すレーナ。気絶しているナーシェ。それを見て、王や冒険者、キャンザルと呼ばれる人物は笑い声を上げる。



「いやぁ、本当に残念だ! で、誰が死んだって?」


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