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一難去ってまた一難 1

第3章突入です!


「キュウ!!」


 烈毅とミーシュは二人でキュウの元へ行き、烈毅は倒れたキュウを優しくお姫様抱っこする。その後ろから、元の姿へ戻ったネキツも心配そうな顔でキュウをのぞき込む。


 そして―


「うぅぅ〜……何か、気分が悪いのじゃ……」


「キュウゥゥゥゥ!!!!」


「う、うわ何じゃ!?」


「良かった〜! 無事でほんと良かったよ!」


 烈毅とミーシュは大袈裟に喜ぶ。ネキツも、顔には出さないが、こっそり胸を撫で下ろす。


「わ、童女は今までどうなってたのじゃ?」


「死んでた!」


「なんじゃと!?」


 烈毅が思わずボロっと吐いてしまった言葉に、ミーシュが後ろから殴ってフォローを入れる。


「違うのよ、キュウちゃん。死んだように眠ってただけなのよ!」


「ああ、そういう事なんじゃな」


「えぇ、そうです。さぁ、キュウ、少しばかり話があるさかい、帰りましょかぁ?」


「はいなのじゃ……なのじゃ!?」


 何故ここに母上が、といった表情でネキツを見たキュウは、見たことないくらいにガクガクブルブルと震えていた。


 おっとりと話すネキツの目は、笑ってはいなかった。烈毅とミーシュは、声を揃えて「可哀想」と呟く。


「や、やめてくれなのじゃ〜!」と何度も叫び、烈毅から離れようとしなかったキュウは、ネキツに引き剥がされた。


「じゃ、俺達も帰るとするか。元の世界に」


「そうね。皆も待ってるだろうし、何よりちょっと休みたいわ〜!」


「俺もだ」

 

「ほんなら、自分らも送ってやる」


 そう言って、ネキツは何やら見覚えのある"ゲート"を開く。そして、その"ゲート"に手を突っ込み、綺麗な水色をした水晶玉を取り出す。


「それ、もしかしてアイテムボックスですか? キュウから前に聞いたんですけど」


「あら、キュウがそんな事を? そうやぁ、これはアイテムボックスやぁ。ただ、数に限りはあるんやけどなぁ」


「僕も使えるんですよ、それ」


 それを言った途端、ネキツは驚きの表情を見せる。烈毅は、何故ネキツが驚いたのか分からず、その後も、ネキツは一言も喋ることはなかった。


「ほな、飛ぶから気ぃつけやぁ」


「飛ぶ?」


 その次の瞬間、視界がぐにゃりと歪み始め、その感覚に烈毅とミーシュは思わず目を瞑ってしまう。体には何の変化もないが、視覚だけが歪んだのだ。


 そして、数秒後「もう目をあけても大丈夫じゃぞ?」とキュウが言い、烈毅とミーシュはゆっくりと目を開く。すると、目の前には、キュウ達が住んでいる城があった。


「すげぇ……これが瞬間移動か……」


「正しくは転移じゃな。ここを転移地点に設定してあるのじゃ。あの水晶は、設定した場所なら何処へでも行ける優れものじゃ!」


 ネキツに抱えられながら、自慢げに話すキュウに、思わず二人はほっこりした。そして、キュウを助けられて良かったと、ここから思った。


 それから一週間後―


 シェルド達が無事帰還し、全員の無事を確認した後、過激派が降参したことを知る。どうやら、リーダーのファンウが殺されて、一気に戦意喪失したそうだ。


 もちろん、その記憶は烈毅には無い。"憤怒"の後遺症とも言うべきか、反動と言うべきか。その時の記憶は綺麗に抜け落ちている。


 烈毅とミーシュは、避難した人達の無事を目で見て確認した後帰ると言うと、快くネキツは了承した。部屋まで貸してもらい、贅沢な一週間だった。


 戦争は無事終了し、過激派ももう戦わないと誓いを立て、これから仲良くして行くそうだ。もし、他の国が領土拡大の為に攻めてきた時、反省の意を込めて戦うとも言っていた。それなら安心できそうだ。


 そしてその翌日。『門』の前で。


「もう帰っちまうのか」


「ああ、俺らにも待ってる奴らがいるからな」


「そうか……本当に、キュウを救ってくれてありがとう」


「良いって。当たり前のことをしただけだよ」


「ウチからも、ほんまおおきに」


「ありがとうなのじゃ!」


 シェルド、ネキツが深々と頭を下げ、キュウはニッコリ笑顔で烈毅とミーシュにお礼を言う。その笑顔を見て、烈毅は少しうるっときた。ミーシュは顔面を崩壊させながら泣いていた。


「キュウ、最後頼めるか?」


「任せろなのじゃ! しっかり送るのじゃ!」


「さんきゅー。じゃあ帰ります。お二人共お元気で」


 シェルドとネキツはこくりと頷き、軽く手を振ってくれた。烈毅とミーシュも、それに応えて手を振る。


「じゃ、行くのじゃ!」


 そして、キュウの力を借りながら『門』を潜り、元の世界へ戻った。


 地上に着き、懐かしいこの世界の空気を大量に吸い込み、烈毅は「ただいま」と呟く。


「じゃ、童女はここまでなのじゃ」


 キュウは、下をうつむきながら言う。


「おう。ほんとありがとな。キュウに会えて良かったよ」


「わだじもよぉ〜! げんぎでねギュウヂャン〜!」


 ミーシュは、キュウをギュッと抱きしめながらそう言う。キュウは、それでも、下を向いている。


「いつまで泣いてんだよ……ほら、離してやれよ」


 ミーシュの肩に手を置き、烈毅はキュウとミーシュを離れさせる。少し心苦しいが、いつまでもこうしている訳にはいかない。


「じゃあ、本当にお別れだな」


「うんなのじゃ……」


「じゃあな、キュウ。ネキツさんとシェルドを守ってやれよ」


「うん……」


 キュウのその声は震えており、拳にはギュッと力を込めていた。ポタポタとこぼれ落ちる雫は、地面に当たってすぐに乾く。


 そして、キュウは何も言わず振り返り、リバースワールドへ帰って行った。


「また、会えるといいな」


 そう呟き、烈毅とミーシュはその場を後にした。

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