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村人が世界最強だと嫌われるらしい  作者: 夏夜弘
第二章 妖狐の国
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最善策 12

 制限時間残り九分―


 一刻も早く蹴りをつけたい烈毅は、こちらから先制攻撃を仕掛けたいが、ファンウの殺気がそうはさせなかった。


 目の前にいるのは、悪くいえばチビな妖狐だ。それなのに、それなのにも関わらず目の前には絶対に超えられそうもない壁と言えるような存在がいる。正直、今の烈毅は冷静さを欠いていた。


 次はどうするか……距離を間近まで詰めて殴るか? リーチを活かして蹴るか? 石でも拾って投げるか? 無闇矢鱈に攻撃するか? どれが―


「考えすぎだ人間」


「んなっ!?」


 考えすぎていた間に、ファンウはもう目の前まで来ており、烈毅は顔面にファンウの全力攻撃をモロに受けてしまう。その衝撃で、元々いた倉庫の中の最奥の壁をぶち破り、さらにその後ろの倉庫をもぶち破りながら、かなりの距離飛ばされてしまう。


 烈毅は、なんとか体勢を立て直そうと、両足を地面に埋め、無理矢理ブレーキをかける。だが、その勢いは収まらず、進むことを止めない。


「止まれぇぇぇぇ!」


 さらに奥まで足を埋め込み、漸く勢いが止まった烈毅は、すぐに顔を上げて地面を蹴って戻ろうとしたが、顔をあげた瞬間、映ったのは倉庫ではなくファンウの足だった。


「ほれ、もう一丁」


 烈毅は、自分が発揮できる最大の反射神経で、その攻撃を体を沿って躱そうとする。だが、ファンウのつま先が烈毅の鼻をかすり、骨がグチャグチャに粉砕する。


 ファンウの足が通り過ぎた後、とてつもない豪風が訪れ、辺りの倉庫は、今にも屋根が飛んできそうな程にめくれ上がっていた。


「今ので鼻は逝ったかな」


 ファンウの余裕をこいた一言が聞こえ、烈毅も何とかやり返そうと、少し余裕を見せたファンウの"大事なもの"を鷲掴みにする。


「おいおい、これ潰されたら子孫繁栄は出来なくなるなぁ?」


「お願いやめて」


「…………嫌だ」


 バキバキとも、ネチョネチョとも、グチャグチャとも言えないような何とも例えにくい音が鳴り響き、烈毅の耳と手から嫌な感覚が離れなくなる。


 ファンウは、股間を抑えながら、その場に蹲る。烈毅は、そこがチャンスだと思い、大きく足を振り上げ、持てる限りの力でファンウの頭蹴り飛ばした。


 すると、次はファンウが倉庫を次々とぶち破りながら飛んでいき、烈毅はその後を全力で追う。


 蹲った状態のまま飛んでいたファンウは、右手を地面に突き刺し、握力と腕力でその勢いを殺し、塔に当たる寸前で止まり、そしてまた蹲った。


 今しかない。今、蹲ったあの状態だからこそここで仕留めなければならない。烈毅の頭はそれを考えるだけの余裕はあり、烈毅は瞬く間に距離を詰め、ファンウの頭元まで来る。


 だが―


「クソガキガァ……」


 ぼそっと聞こえた呟きは、烈毅の全身を震わせ、思わず攻撃する手を止め後ろへ下がってしまう。


 言葉に乗せられた殺気は、それを聞いただけで死を錯覚させるようなとてつもなく強烈なものだった。


 烈毅が、そうであってもやらなければならないと思い、足を踏み出そうとしたその瞬間、ファンウの全身から禍々しい黒色のオーラが突如出現し、それがコートの様な形になり、ファンウの身に纏わりつく。


「おいおい……嘘だろ?」


 初めてかもしれない。こんなにも、絶対的な恐怖を見たのを。こんなにも、勝つビジョンが全くの見えないのを。


 ゆっくりと立ち上がるファンウ。下を向いたまま、まだこちらを向こうとはしない。


 静かな怒りほど怖いものは無い。きっと誰もがそうだ。普段怒らなそうな人が、ギャーギャー吠えるのではなく、ただ静かにこちらを見てキレていたらどうだろう? 恐ろしくてたまらない。


「貴様は許さん。初めてだよ、こんな屈辱的な傷は。まだ尻尾を切られた時の方がよっぽど良かった」


「は……はは。金玉潰されたくらいでキレるなってじぃさん」


「舐めた態度も今のうちだ……すぐに泣きを見ることになるぞ人間」


「それはどうかな」


「ファンウ、連れてきたぞ」


「ほら、噂をすればだ」


 そう言って現れたのは、シェルドと似たような体付きをしており、ファンウと同じく白毛の混じった毛並みを持つべーテルだ。そして、べーテルは両脇に、見慣れた人物を抱えて持っていた。


「おいてめぇ……そいつから手を離せ」


「できん」


 そう。ミーシュとキュウだ。キュウの方はぐったりとして眠っているが、ミーシュの方は何故か全身がボロボロになっており、破れた服の隙間から肌が露出していて、だらんと両手を下げて気を失っている。


「まさかミーシュに手を出したのか?」


「抵抗する者には暴力で分からせる。俺のモットーだ」


 その言葉を言い終えた直後のべーテルに、烈毅は足に力を込め、地面を蹴る。そのスピードは、時を止められたかのように早く、一瞬だった。


 そのスピードに反応出来なかったべーテルは、驚く声をあげる間もなく烈毅に殴られ吹き飛ぶ。


 そして、驚いているのはべーテルだけではなかった。


 怒りの感情でフルパワーを出せる状態のファンウでさえ、今のスピードには反応がほんの少しだけだが遅れてしまう。


 ミーシュとキュウを取り返した烈毅は、また奪われないよう、倉庫へと瞬間移動のような動きをして、そっと寝かせる。


「待ってろよ。俺が守ってやるからな」


 烈毅は、それだけ言うと、スタスタと歩いてファンウの元へ行く。そこに、殴り飛ばされたべーテルもやって来る。


 烈毅は、その二人をギロリと睨み、こう言い放つ。


「仲間を傷つけた罪は重いぞ、糞野郎」


 "負け知らずの最弱"制限時間まで後七分。

金玉を握り潰されるってどれぐらい痛いんでしょうね...想像するだけで痛いです。

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