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村人が世界最強だと嫌われるらしい  作者: 夏夜弘
第二章 妖狐の国
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最善策 10

 時は戻り、烈毅は。


「はぁ〜〜! 疲れたぁ〜!」


 あの後何時間も戦い続け、ようやく敵も無理だと察したのか、一時撤退して行き、目の前に転がっていた無数の過激派達を担ぎ、どこかへ去っていってしまった。それと同時に、塔の天辺で異彩を放つ存在を感知出来なくなり、行く宛が無くなった。


 烈毅は、今は疲れ果ててその場に寝っ転がっている。体力の回復は徐々にしていっているが、ここまで消耗したのも久しぶりだ。


「さてさて。俺も一時撤退といこうかな。あいつらがどうなったのか気になるし。その前に、今の内にここら辺を散策しとくか」


 塔の天辺で待っていた存在が突如いなくなった今、ここはもぬけの殻と言ってもいい。そう簡単に割り切って捨てられる場所でもないとも思えるが、烈毅は少し気がかりなまま進んでいく。


 幾つもの巨大な倉庫を調べたが、それらはどれも生活施設だということが分かった。これと言って何かを実験していたという訳ではなく、ただ生活感のみられる場所なだけだった。


「この倉庫に何人入れるんだ? 見た感じざっと二万人くらい入れるぞ」


 ほぇ〜、という声を出し感心していると、上ばかりを見ていたせいで、足元に注意が言っておらず、その場に転がっていた握り拳よりも少し小さめの石を蹴っ飛ばし、その先にあった鉄製のトランクに大きめの穴を開けてしまう。


「やべ……べ、別に、力を入れて蹴ったわけではなく、偶然足に当たってしまって、それがたまたまあのトランクに当たってしまっただけだ……俺は悪く……ん?」


 そのトランクを見ていると、穴の空いた所から、何か見覚えのあるようなないような曖昧な物を見つける。烈毅は、それに近寄り、中身を確認する。


「これは……うっ、臭っ!」


 鼻を刺激するような酷い臭いについ鼻を抑えてしまい、目を瞑りながらその場から退いてしまう。


「なんだあれ!? なんだか人が死ん後のような臭いが……」


 その事を口にしてから烈毅は気づく。それは、紛れもなく『死体』なのだと。そして、それは全て幼い子供のものばかりだった。


「何だよこれ……なんで子供の死体があるんだよ……」


 理由なんてものは烈毅には到底わからない。過激派に逆らった者の子供を殺したのか。はたまた、そこら辺から拾ってきて過激派に無理矢理入れさせようとした子供なのか。


 他にも、そのような物は幾つもあり、全てが子供の死体が敷き詰められており、中には脳みそを抉り取られた者や、目玉をくり抜かれた死体があり、正直耐えられるようなものではなかった。


「子供にまでこんなことしてんのかよ……許せねぇな」


 烈毅は、静かに怒り始める。いつもなら、後先考えず相手を追うのだが、今回は冷静さを保っており、その行動にはでなかった。


「残るは、あの塔だな……」


「その塔には行かせられないねぇ、人間」


 背後から聞こえたその声に、烈毅は驚きと焦りを同時に味わい、冷や汗が止まらなくなる。


 気づかなかった。いや、"気づけなかった"。


 両手を後ろで組み、その場に背筋を伸ばして立つ存在は、今まで見て戦ってきたどの妖狐達よりも違うものを感じ取った。


 少し老いたような顔つきで目は赤く、身長もかなり小さめ。誰もが見ればかわいいと言えるサイズだ。それでいて目つきは鋭い。両耳のうち、右の耳はなく、また顔には幾つもの傷がある。フサフサとした毛は、老いのせいか少し白毛が混じっている。そして、何よりも変わっているのは、尻尾が一本も生えていない事だった。


「お前がファンウか?」


「おぉ、私をご存知でしたか。最近の人間は情報が早いのかね……いや、それとも、引き込むのが上手いと言った方がいいかね?」


「バレてたのか」


「あんなに大っぴらに戦っていたら誰でも気になるでしょう? まぁ最初からこちらにつく気が無かったようですが」


「だから家族を人質にして引き込んだのか?」


「その通りです。お見事です」


 笑ってるのか普通の顔なのかわからない表情で拍手をするファンウ。正直、相手の情報が『シェルドより強い』ということ以外何も無いため、迂闊には手を出せなかった。


「お前も、引き込むのが上手いんだな」


「おっほっほ。これは一本取られましたね。人間、名前は?」


「人村烈毅」


()()()()……」


「ん?」


 何かボソボソと呟いたように見えたが、烈毅はそれを聞き取れなかった。


「名前を教えてくれたお礼に、私の尻尾が何で無いかを教えてさしあげましょう。どうやら気になるようなのでね」


「…………」


 烈毅は、焦りを感じた。背後にいると言っても、烈毅は倉庫最奥、ファンウは倉庫の入口にいる。距離的には何百メートルとある。その立ち位置の中、烈毅の視線を正確に見抜かれていたのだ。


「これは、何年かな……もう何百年と前の話になるね。私の全盛期と言ってもいい時代、私はべーテルと共にありとあらゆる場所に行っては領土を拡大させていた」


 べーテル……もう一人の強敵だ。


「そんなある時、一人の魔族が私達の前に現れた」


「……は?」

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