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村人が世界最強だと嫌われるらしい  作者: 夏夜弘
第二章 妖狐の国
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最善策 6

 何の作戦もなかった烈毅は、とりあえず相手の情報を手に入れておくために、カゲロウから聞き出すことにした。相手の情報があるのなら、それだけで有利に事を進められる。


「はじめに聞いときたいけど、過激派の戦力を知りたい」


「わかった。まず、絶対に注意しとかなければいけない人物は二人いる。まず一人はべーテルって奴だ。アイツはシェルドと互角の戦いをする化け物だ」


「シェルドの強さがわからん」


「わかりやすくいうと、一人で五千の軍隊と戦えるって事だ」


「おー怖い怖い」


「そして二人目は、過激派のリーダー、ファンウだ。こいつは周りのヤツらとは格が違う」


「と言うと?」


「シェルドなんて相手にならんくらいだ。だが、幸いな事に前線には絶対に出てこない。リーダーだからな、死んだらそこでグループは崩壊だ」


「ほぅ……」


「馬鹿なことは考えるな? いくら烈毅でも、あんなのとは互角以上に戦えるはずがない。そこまで辿り着くのにも大変だってのに、そこでファンウも相手にするとなると絶対負ける」


「わかってるわかってる。だけどな、俺のいた世界にはこんな言葉がある。『私の辞書に不可能なんて文字は無い』ってな」


「それがどうした?」


「つまりな、俺に不可能なんて無いんだよ」


 ドヤ顔でそれを言い放つ烈毅に、カゲロウは呆れてため息を吐く。額に手を当て、首を横に振りながら烈毅に言う。


「お前に言ってもわからないか。もういいや、とにかくそいつらには気をつけろって話だ。他にも強いやつはいるが、俺とお前なら安心だろ。これで話は終わりだ」


「いや、まだ大事な話が残ってる」


「なんだそれは?」


「お前の家族の事だ」


 それを言うと、カゲロウの目付きが穏やかなものから、一瞬で鋭いものに変わる。


「それは……無事を祈るしかない」


「いや違う。この戦争を止めることよりも、お前の家族を救う事を最優先にする。だから、祈るしかないなんて言わせない」


「無理だ! もし救うのに失敗したら、俺の家族どころか、他に囚われてる奴らまで皆殺しにされてしまう!」


 声を荒らげて言うカゲロウの意見は最もだ。カゲロウは、過激派を裏切ったって事だけでも不味いのに、そこで烈毅とグルになって過激派を潰そうってなると、更に状況は悪化する。


「先にリーダーを潰す方が得策だ! 大事な友人やその妻や子供が居るんだぞ!?」


「いや、絶対に先に救出をする。だって考えてみろよ。人質を取られた状態で動くのと、人質を解放して、何も恐れないで戦うのとどっちがやりやすい?」


「それは…………」


 烈毅の言い返しに、カゲロウは押し黙る。どちらの意見も正しい事を言っている。ただ、この作戦にはリスクを負う必要がある。じゃなければ救えやしない。


「わかる。わかるよその気持ちも。でもさ、リスクを負ってでも助けなきゃいけないんだよ」


「…………絶対やれるのか?」


「絶対にやる」


 烈毅の目には、闘志が宿っている。絶対に消えることの無い、赤い魂の火が。


「よし。俺はお前に従う」


「頼もしいよ」


 二人は和解の意も込めて、握手を交わす。そして、いざ行こうと足を一歩踏み出した時、急速にこちらに接近する者を、烈毅とカゲロウは感じ取る。


「構えろ!」


 そして、その存在は空から降ってきて、二人の目の前に派手に現れる。着地の勢いでクレーターが出来、辺りには突風が巻き起こる。砂煙が宙を舞い、視界が悪い中、二人はその存在をじっと見つめる。


「お前らか、キュウを助けたって二人は?」


「あんたは……!」


「カゲロウ、知ってるのか?」


「お、お前キュウを助けたのにあの人を知らないのか!? あの人がシェルドだよ! キュウの父だよ!」


「へぇ、あれが」


 カゲロウの様子から見ると、多分相当強い奴なのだろうと、烈毅は感じ取る。そして、ギロりと向けられた視線に目が会い、烈毅は全身鳥肌立つ。


「カゲロウか。久しいな」


「あ、ああ。何でここに?」


「中々待ってても、誰も攻めに来なかったから、俺から攻めに行ってやろうと思ったんだ」


「そ、そんな理由でここまで来たのかよ……」


「それで、ここに来る途中に少女にあった。キュウを抱えたな。連れて逃げた奴だと思って聞いてみたら、助けたって言ってた。名前は……ミーシュとか言ったか?」


「ミーシュにあったのか。なら、キュウが安心だってことは分かってもらえたかな」


「ああ。その子が言っていた。『もし行くのなら、人村烈毅を手伝ってあげて』とな。それがお前か?」


「ああ、よろしくな〜」


 手を振って挨拶すると、突然シェルドが超高速で烈毅の目の前まで移動し、その勢いのまま烈毅の顔面に殴り掛かる。


 烈毅は、それに咄嗟に判断し、それを片手で受け止める。その時、無意識に"負け知らずの最弱"を発動させていた事に、烈毅は一瞬冷や汗をかく。


「今のは全力だったんだけどな。俺より強いなら安心だな」


 握り拳がそっと解け、握り拳から握手を要求する手へと変わる。


「シェルドだ。よろしくな烈毅」


「ああ、よろしく」


 烈毅は、熱く握手を交わす。ほんのり痛みが残る右手で。

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