この世界は、何もかもがおかしすぎる 3
「早く帰れよ」
「わ、私は帰らないぞ!」
「あのなぁ……」
何か外で話すのも迷惑になると思い、家の中へ上げてしまった……。
よくよく見てみると可愛い。赤色のショートヘアで顔は小さく、赤い色の目は細い。体型も程よく筋肉のついた体をしており、身長も高めなため、モデル向きと言ってもいいだろう。
「それで、なんで俺の戦いを見たいわけ?」
「お、お前がどれだけ強いのか知りたいからだ! ジョブもわからないから、見て確かめようと……」
「やだよ」
「私もやだ!」
「我儘な女はきらわれるぞ?」
「生まれて此方、告白などされたことも無いわ!」
「帰れよ……」
「いーやーだー!」
埒が明かない。よし、こうなったら仕方がない。
「なら、俺が出す条件をクリアしたら行ってあげてもいい」
「条件?」
「ああ。お前、今何歳だ?」
「に、二十だ……」
「なら、彼氏を作れ」
「なっ!?」
フッフッフ……この条件は絶対クリアできまい。何故なら、この女は告白した事がないと来た。なら、この条件クリアも無理って話だ!
「わわわ、わかった……なら……」
「そうかそうか! わかったならそれでいい! 無理だとわかったなら、かえって……」
「私はお前に一目惚れした! お前が私の彼氏になれ!」
「ええええええええええええええええ!?」
ちょっと待った。俺こいつと出会ってまだ二日目だよ? なのに何で俺告白されてんの?
「いや、待て。よく考えろ。俺は出会って二日目だぞ? お前はまだ二十だ。俺みたいなクソ野郎なんかよりもっとマシな男が……」
「無理だ。私は昨日の突進を避けられた時、ビビッと来たのだ。私の理想の男性かもしれないと!」
「いや、だからあれはマグレだって……」
「私は強者を求めて色々な町を冒険した。ただ、寄ってくる男は強くても中身がアレだったのだ」
「アレって何だ」
「だがお前は違う! 何か他の奴らとは違う感じがするし、現に今だって下卑た目で私を見てはいないではないか!」
「下卑た目ってなんだ」
「……ダメなのか?」
「いやなぁ……そんな直ぐに決めるもんじゃないぞぉ? そ、それに、出会ったまだ二日目の人の事なんて、一ミリも知らない。そんな奴が、もしゴミ屑野郎だったらどうする?」
「もし、ゴミ屑野郎だったら、そんな事を言うのか?」
「うぅ……」
こいつ、あんなにブツブツ言ってきやがったのに今になって乙女みたいな目でこっちを見てやがる! 女怖ぇ!
「あぁ、もうわかったよ! 連れてきゃいいんだろ!? 連れてきゃあ!?」
「最初からそうすればいいのに」
「お前が言ってこなきゃこんな事にはならねぇんだよ!」
そんなこんながあり、結局クエストに連れて行くハメになった。正直、今のこの強さを知られたくは無いし、知られたとしたらなんて言われるかわからない。どうしたものか……。
そして、クエストを探すため、掲示板を眺めていると、一つだけ怪しい依頼があり、それを手に取る。
「ん? 何だこれ?」
すると、横からギルドの受付嬢が話しかけてくる。
「あぁ、それはですね、昨日烈毅様が帰った後、黒いフードを被った怪しい男性が、この紙を持って依頼してきたんですよ……」
「へぇー。長年やってきてるけど、このケースは初めてだ」
「私もです。正直、出そうか迷ったんですが……」
「モンスター名は無し。危険レベルも書いてない。明らかに怪しい」
受付嬢と話していると、横から女冒険者がツンツンと肩をつついてくる。
「なんだ?」
「どうして名前で呼ばれてるの?」
「ここでは一番長くお世話になってるからな。それがどうした?」
「私、まだ名前知らない」
「ああ、そうだな。俺は人村烈毅。お前は?」
「変わった名前だな……私はテラス=レーナだ。レーナでいい」
「よろしくな」
「烈毅様、これをお受けになるんですか?」
「まぁやるしかないっしょ。それに、何か面白そうだし」
「はぁ……貴方、前もそう言って危険レベルBのモンスターと戦って死にかけたじゃないですか。本当に行くんですか?」
「何年前の話だよ! いいの。行くって言ったら行くの」
「わかりました。じゃ、クエストへ行ってください」
「そう来なくっちゃ!」
それから、なんの準備もせず目的地へと向かう。場所の指定も曖昧なため、依頼書に書いてあった辺りをグルグルするつもりだ。
「あのさ」
「どしたー?」
「なんで受付嬢さんとあんなに仲いいの?」
「ん? まぁ、色々世話になってるしな。それに、一番頼りになるから」
「あっそ」
そう。烈毅にとっては一番関わりが深い人物が、今の町にいるあの受付嬢だ。そして、烈毅の全てを知るただ一人の人物。