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いちごいちえ  作者: 夏みかん
第6章
27/52

想いの裏側 1

先月に2人の女子生徒が校内で突然姿を消し、そして昨日、一気に3人の女子生徒が同じく謎の失踪を遂げた。警察の捜査は続いたが、依然として手掛かりどころか犯行の痕跡すら見つからない。今日も、今行われている全校集会後には休校となり、午後からは保護者会が開かれる運びとなっていた。さすがにマスコミもこの異常な事態に食いついてきたのか、校門前にはワイドショーのリポーターなどが生放送で中継を行っている。そんな様子を駐車場の塀にもたれながら見ている刑事の笹山は昼から行われる保護者会でどう説明をしたらいいか頭を悩ませていた。今も校内では捜索や捜査が行われているが、先月同様手掛かりなしに終わるだろう。まさに現代の神隠しなのか、目撃情報すらも乏しい状況に困り果てていた。懐からたばこを出すが、ここが学校だということを思い出してため息をつき、それをしまう。裏山の坑道も調べているが鉄の扉の鍵もなく、開けた形跡すらなかった。坑道に関して深く調べているが、それでもこれといった情報もなく、あの扉が昔は木の扉で腐りかけていたために坑道の落盤防止も兼ねて鉄の扉にし、鍵は市役所に管理されていたもののあの扉に該当する鍵はなかった。他に数本の鍵もなくなっているが、今もまだ見つかってはいない。役所自体も建て替え等もあって混乱しているようだ。ただ、あの鉄扉を開けた痕跡がない。何度調べてみてもそれは同じだった。ただ、扉の前に立て掛けられた大きな木の板がごく最近動かされた形跡があったが、小学生から大学生までの人間が肝試しや度胸試しで出入りしていることもあって、犯行に結びつける要素が欠けているのが現実だ。犯人の目的もさっぱりわからず、行き詰った捜査に嫌気が差してくる。やがて全校集会を終えた生徒がぞろぞろと校門を出て行くのが見えた。ワイドショーのリポーターがこぞって生徒から何かを聞きだそうとするが、教師の目があるためにあえて無視をして素通りしているものの何人かの生徒がそれに応じたりもしていた。


「笹山刑事さん」


不意にそう言われて振り返れば、知った顔に表情を緩める。最初の事件で事情聴取をした際にインパクトを残していたせいか、その人物の名前も覚えている笹山はゆっくり近づくその生徒の前に立った。


「戸口明人君、だったね?」

「はい」

「捜査なら進展なしだよ」


明人の言いたいことが分かっていたのか、笹山がそう言うと明人は小さく微笑んだ。


「知っています。全校集会でそう聞きました」


相変わらずの無表情に抑揚のない声。それもあって笹山は明人をよく覚えているのだ。


「警察の威信も、まぁ、はなっからないようなもんだが、それでもガタ落ちだよ」


そう言って自虐的に笑う。おおよそ警部には思えないその言い方が部下の武藤に批判されたこともあった。警察内部の裏も知る笹山だからこその台詞だが、明人にしてみれば好感を得るには十分だった。だからこそ、笹山に声をかけたのだが。


「捜査を進展させたい、それは自分も同じです。だから、知る限りの情報を提供します」


明人の言葉に笹山の眉が動く。今の言葉がどういう意味かは明人がずっと無表情からして読み取ることはできない。言葉に力もなく、ずっと同じ口調でもある。だが、事情聴取での受け答えからして信用はできる、そう判断した笹山は明人を誘って覆面パトカーの中に招き入れた。幸い、堅物の武藤は捜査で裏山に向かっている。全校集会が終わったこともあって部下は体育館周辺の捜査に当たっており、しばらくは誰も来ないだろう。2人で後部座席に座るとまずは笹山が現状を簡単に報告した。本来は一般市民、それも未成年に伝えることなどありえない。だが、捜査が行き詰っている以上、何かしらの手掛かりは欲しいと思う。元々キャリアでありながら政府と警察の裏を知り、それに異を唱えたこともあってここに飛ばされている身だ。何より、10年前の事件の後処理をしたこともあって、警察上層部も恐れる存在であるが故の異端児でもある。非常識だと罵られようが、非常識どころか人間としても壊れているそいつらに何を言われても痛くも痒くもない。笹山はそういう思考をもって明人に全てを話した。校内のすべてを探したが、何もないこと。怪しいと思われる科目棟の床収納も調べてみたが、全てが完全にロックされていたこと。目撃情報は乏しく、メールや通話履歴を調べても特に怪しい人物はいなかったこと。気になるのが何かの香りを嗅いだというメールだったぐらいだと話をした。そして裏山についても話をする。扉のことや、その前に立て掛けてあった数枚の巨大な板のこと。その鉄の扉の役目、腐りかけた木の扉を廃して強度を保つために鉄扉に変えたことや、なくなった鍵のことなど。明人は質問を挟まずに黙ってそれを聞いている。ただ、扉を開いた形跡がないといった言葉を聞いた明人の表情が少し曇ったぐらいだ。そして生徒と教師、両方の線で容疑者を追っているが、それらしい人物はまだ特定できていないことも伝え、笹山からの話は終わった。明人は笹山から聞いた情報を頭の中で整理しつつ、今度は自分の番であると笹山の方に体を向けるようにしてみせた。


「まず、最初に謝っておきます。自分たちは犯人らしき人物と、一度接触しています」

「なんだって!?」


冷静な明人の言葉に思わず声を上げてしまった笹山はICレコーダーを取り出すとそれを2人の間に置いた。動作していることを確認し、それから明人が話を始めた。まず、裏山が怪しいと最初の事件の翌日に坑道に行ったこと。その時には広い空間に大きな木の台があり、鉄の扉はむき出しの状態であった。だが後日行った時には笹山が言ったように大きな数枚の板で扉は隠されていたことを話す。そして一度目の探査の際、全身黒ずくめに暗視ゴーグルをつけた男に襲撃されたが、自分と争ってすぐに立ち去ったことを告げると笹山はそのときの様子を事細かく聞きながらメモを取る。さらに明人は幽霊騒ぎや笹山が言ったメールのことなどを話して聞かせた。話を聞いては質問をする笹山に丁寧に答えつつ、明人は新城と共に調べた数学準備室のことも話して聞かせた。すると、笹山からそれに関する話をされる。


「調べた結果、床収納ね、あれ、なんであんなに大きいかっていうと、本当ならば災害などの際に坑道に逃げられるよう、地下への階段を設置する予定だったんだそうだ」


その言葉に明人の表情も変化した。畳一畳ほどもある巨大なスペース。不自然なほど大きなあのスペースの秘密を知り、いろいろなことが頭に浮かぶが笹山の説明に口を挟まなかった。


「けど、地震で避難したはいいが、落盤にあっては元も子もない。坑道の強度調査の結果は全く問題なかったそうだ。だが、やはり100%でない以上、それは封印されることになった。だが問題が出来た」


その問題とは、避難通路ありきで科目棟や追加の建屋の設計が行われていたということだ。とりあえず階段も坑道側から設置していたこともあって、校舎側でそれを封印すべく床収納を置いた。収納自体を完全にロックし、動かないようにして。つまり、床収納をなんとかすれば、すぐ下にある階段を通じて坑道に出ることは可能だ。ただし、完全にロックされた収納を動かすことは出来ない。明人は新城の言っていた地震以来、風の音が消えたというのは階段の向こうにある坑道側で異変があったためだと直感した。何せ収納の下はすぐに階段なのだから。


「けどね、調べるうちに少しわかったことがあって、あの収納、何かしらの仕掛けがあって自動的に開くことができるような設計になっていたらしい」

「らしい?」


その言い回しに明人が反応し、その反応を見た笹山の口元に笑みが浮かんだ。


「そう。収納を作った業者によれば、床収納がわずかな力で自動的に動くように設計されていたんだ。元々、階段をそのまま剥き出しにしておくことは出来ないからね。つまり、収納は最初の設計に入っていたわけだ」


階段の上に収納を置き、有事の際にそれを自動で動かして坑道へ避難する。そういう設計で階段も収納も作られた。だが封印するにあたって収納にロック機能を設けて動かないようにしたというのが真相だ。


「ロックの鍵は棒のようなものだったそうだが、今ではもう紛失してしまったらしい。当時それを作った人は去年心臓発作で亡くなっている。それに、こういう機能が収納にあることを知る人はもうわずかしか残っていないんだ」

「つまり、犯人が何らかの方法でそのロックを解除し、坑道に行けたならば犯行は可能ということですか?」

「坑道側の鉄扉も開けられたなら、ね。ただ、あの収納の下には扉がない空間だけなんだけど」


明人はしばらく何かを考えるようにしてみせる。そこまで分かっていながらも手掛かりがないということは、床収納を動かした形跡もないということなのか。


「床収納を動かした形跡はあったよ。ただ、調べた限り、坑道には出れてもそこは閉鎖空間でしかない」


坑道を細かく調べた結果、階段の下は広い空間になっているものの、扉ではなく壁で完全に塞いであるそうだ。これは万一何者かがそれを動かしたとしても、どこにも行けないようにしたためだと判明している。そうなれば、一旦女子をそこに置いたあとで校内側から移動させない限り運び出すことは不可能だ。殺害する目的だけでそこへ運ぶとも考えられず、笹山としては女子生徒をさらった目的が強制売春か人身売買の類だと睨んでいた。それに、空間と収納までは完全に繋がっているため、目を覚ました女子生徒が声を出せばそれが地上に届く上に、もし死体になっていれば異臭がするはずである。現に新城は収納から風の音を聞いているのだから。


「収納を動かしたのがロック前の確認だったのか、最近だったのかもわからない。怪しいとは思うが、行き詰まりだよ」


笹山が肩をすくめてそう言った。だが、坑道入り口で自分たちを襲撃した人物がいる限り、校内と坑道は繋がっている線が濃くなった。笹山としてはそこを重点的に調べる価値が出来たことは大きな進展だ。


「ただ、今回は一気に3人だろ?大胆というよりかは、慣れたからだと思っている」

「女子生徒を呼び出し、さらい、運び出す。そのルートが確立されたから?」

「だろうね。つまり、早く手を打たないと失踪者は増える一方だ」

「キューティ3選抜の10位外の生徒もさらっている・・・ただ、容姿は美人を選んでいる、か」

「キューティ3?」


聞きなれないその言葉に反応した笹山に明人が説明をした。この学校伝統の行事で、4月に全校の女子生徒を対象にしたコンテストのような選挙で上位3人を決める、それがキューティ3だと。


「へぇ、そんなのあるのか・・・上位って、やっぱ相当な美人か?」

「そうですね。もっとも、ボサボサ頭にめがねの友人がそのうちの2人に好かれ、残る1人とも友達ですが」

「ボサボサにめがね・・・木戸君、か?」

「そうです」


見た目にインパクトがあったのか、笹山がすぐにその名前を口にしたことに明人は苦笑を漏らした。だが、実際は違う。木戸という名前、おそらくはかつて政府すら震撼させた2つの流派のどちらかの血筋なのだろうということから覚えていたのだ。


「でも、その上位の子が最初に狙われなかったのには理由があるのかな?」

「目立つ存在、だからかもしれません・・・なにせ彼女たちは男子の憧れですし」

「憧れ、ねぇ・・・君は興味なさそうだね、木戸君も」

「自分たちの仲間は変わり者ばかりです、自分を含めて」


苦笑する明人になんとも言えない笑みを返す笹山だが、明人の頭の良さには感心していた。ここまでの説明はわかりやすく、綺麗にまとめられている。それに受け答えもしっかりしていて好感が持てた。


「とにかく、貴重な情報をありがとう。坑道と校舎の関連を重点的に調べるよ。あと、1つ頼みがある」


笹山の言葉に何かを考え込んでいた明人が顔を向ける。


「生徒の中に急に羽振りがよくなった人物がいないかを調べて欲しい。いろいろ聞いたが、結構いるんだね。最近はネットオークションで儲ける者もいて特定が難しい。生徒である君からなら、警戒されずに聞き出せるかもしれない」


さらった少女たちに人身売買や売春を強要させているのなら、当然金回りが激しくなる者がいるはずだと笹山は睨んでいた。だが、生徒の中にはネットオークションなどで儲けている者もいて、特定しようにも生徒同士の繋がりがあるのか実像が掴めない状態にあった。本来なら生徒である明人に頼むことなどありえないのだが、笹山としては明人は信頼できる上に頭も回るので頼るしかなかった。


「わかりました」

「なにかあればここに連絡をくれ。俺のプライベートの携帯番号だ」


明人はそれを自分の携帯に登録し、笹山に促されて車を降りた。降り際に言われたとおり、振り返ることなく去っていく明人をミラー越しに見ていた笹山はICレコーダーを止めると自分も車を降りた。とにかく、少しだけでも前進したことは大きい。やはり失踪事件の鍵は床収納と坑道だ。そう思いながら車にもたれていた笹山はすぐ後ろで砂利を踏みしめる音を聞いて凄まじい速さで振り返る。そこに立っていたのはボサボサ頭に、めがねをかけた制服姿の男子、木戸京也の姿であった。



いつからそこにいたのか、いや、雰囲気的に今来たところなのか、驚く顔をする笹山に対して冷静な顔をした京也はまるで対照的に見えた。笹山は車を挟んで向こう側にいる京也に気づかれぬようICレコーダーのスイッチを入れて録音モードにしてから上着のポケットにそれを忍ばせた。京也は頭を下げたあと、車を回り込んで笹山の前に立った。


「2年の木戸です、木戸京也」

「前に一度事情聴取で会ったね、覚えてるよ」


笹山は微笑みながらそう言うが、京也は表情を変えなかった。そんな京也を見つつ、笹山は探りを入れるようにして言葉を発した。


「ついさっきは戸口君が来てたよ。事件に関すること、いろいろと情報を交換した。ま、本来はありえないことなんだがね」

「戸口君が車から出てきたのは見てました」

「そうか」


そこから見ていたのかと思った笹山がにんまり笑うが、京也は無表情のまま一歩前に詰め寄った。めがねの下にある目が鋭く感じる。


「なら、僕からの情報も提供します。戸口君がどうだったかわかりませんが、条件がありますが」


条件という言葉にピクリと反応しつつ、笹山はいいでしょうと返事をした。そうしてさっき同様京也を覆面パトカーの中に誘うが、京也はそれを拒否して駐車場の奥、そことグラウンドとを隔てるブロック塀へと笹山を誘導して歩いた。笹山はそこにもたれかかるようにし、その前に京也が立つ。


「じゃぁ、まずは情報を聞かせてもらおうかな」


その言葉に頷きつつ、京也は一瞬だ目を伏せるようにしてみせた。


「先に言っておきます。おそらく知っているとは思いますが、僕は木戸無双流の血筋を持つ木戸百零の従兄弟です。といっても、技は数えるほどしか使えませんし、実際に戦った経験もありません」

「何故、それを?」

「あなたがかつて、10年前のビル爆発事件の情報管理をしていたことを知りました。そして先日、伯父の木戸雷王きどらいおから聞きました、笹山管理官、あなたのことを」


その言葉に驚きつつもどこか納得したような顔をした笹山は、今はただの警部だよと言うと曇り空を見上げるようにしてみせた。


「前置きはこれまでです。情報を提供します。犯人に関するものです」


京也はそう言うと鋭い目をしてみせる。木戸周人、木戸百零という木戸という名を持つ大物2人を知っている笹山にしてみれば、京也のその目はもはや壊れていた百零よりも周人に近い印象を受けた。


「裏山で犯人に遭遇したらしいね。さっき戸口君からいろいろ聞いたよ」


同じ話ではないのだろうと思いつつもそう告げた。京也は少し目線を逸らすと、ぎゅっと拳を握り締めた。


「僕は自分の中の木戸の血を煩わしく思っています。出来るなら縁を切りたいほどに。けど、その血のおかげで犯人に関することを知れました」


そう前置きし、京也は犯人と少しやりあったことを話して聞かせた。突き出された相手の指、そして棒を指先で斬った技。そしてその突きを受け止めた挟刃きょうじんを見て驚いたこと。


「おそらく、過去に百零さんか宗家と戦った経験がある人物。そして使った技は千年前に大陸で生まれた暗殺術で、七暗道チーアンドーとも暗術と言われる武術です」

「暗殺術?」

「肉体のあらゆる箇所を極限にまで鍛えた結果、7つの技を持って人を殺す術。その使い手は日本でもそうはいません。百零さんか宗家、つまり木戸の継承者と接点があり、暗術の使い手、参考にはなりませんか?」


そう言われた笹山はあごに手を置いて何かを考え込む。確かに10年前、警察や政府が動いた形跡を消し、木戸百零による裏社会を統制する『プロジェクト・ゼロ』や、さらにその上を行く恐るべき計画『リジェネレイト計画』を抹消したのは自分だ。木戸周人に関する情報も管理し、実際に会って事情聴取もした。周人の仲間のことや、彼らが戦った遺伝子的に持った特殊な能力を持つ者たちを探し出し、保護し、データに残したのも自分だ。そういう仕事に嫌気が差しての今の立場だったが、それでも以前の仕事よりかは充実している。


「データのアクセス権がまだ残っているとは思えないが、当たってみよう。で、条件とは?」


笑みもなく、真顔でそう言う笹山に対して京也の表情が険しくなった。


「百零さんの居場所を知っていたら教えて欲しい」


苦しそうにそう搾り出した京也の言葉に、笹山は予想していたことと同じだっただけに表情を固くした。


「正直に言うと、わからない。俺が彼に会った時には全身を拘束され、薬物によって意識障害を起こしていたからね。犯行の動機なんかも自白剤か何かで話していた感じもしている。それに事件後わずか2週間でその施設から別の施設に移されていた。調べてもそんな動きもなかったし、足取りも追えなかった。おそらく、政府の手でいまだにどこかの施設に隔離されているか、あるいは、もう・・・・」


その言葉に京也は苦い顔をしていた。予想はしていたとはいえ、あまりに残酷なその現実に打ちのめされたのだ。伯父から笹山という人物が百零のことを調べていたと聞いたときには光が見えたような気もしていた。もちろん、期待はしても会えるわけもないと理解もしていた。だが、もうこの世にいないとなれば、自分の将来はますます暗いものになる。


「会いたい理由があったのかい?」


優しい物言いに優しい表情。京也は深いため息を吐くとそのまま自分のことを話して聞かせた。繋ぎの継承者であることや、次の世代の種馬でしかないこと。そんな父親や伯父の考えについていけず、悩んでいることを。すると笹山は少し何かを考えた後である提案を持ちかけてきた。


「今回の事件に協力してくれるのなら、及ばずながら力になろう。どうかな?」

「協力はします・・・僕のことを好いてくれている子が狙われる可能性もあるから。でも、力になるって、どうやって?」

「それはこの事件が解決したらね。戸口君と君から得た情報で少しは前に進める。それに関しては感謝するよ」


にっこりと微笑み、笹山は京也の肩にぽんと手を乗せた。そんな笹山を見つつ、京也は複雑な表情を崩さない。


「君はどちらかというと、木戸周人に似ているね」

「え?」


人を活かすために人殺しの技を使う宗家の継承者。会った事もないだけにその人がどういう人物かはわからない。ただ、伯父さんは憎むべき相手だと吐き捨てていた、それだけが印象に残っているだけだ。


「持っている雰囲気なんかがね。2つに分かれていても、いわば遠い親戚なんだろう?」

「そうですね」

「彼がゼロと、木戸百零と戦った理由は誰かを守るため、いや、守れなかったため、だったかな」


その言葉に顔を上げた京也は苦い顔をしたままだが、張りつめた空気は消えつつあった。


「君も誰かを守るためにこうしてここへ来た。似ているだろ?」

「そうは思えません」

「そっか。でも、似てるよ」


笹山はそう言って微笑んだ。戸惑うしかない京也はどうしていいかわからずに視線を落とす。そんな京也を見つつ、笹山はこの事件について見えてきた小さな光を逃さぬよう、調査の方法を思案するのだった。

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